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新刊書紹介 岩波講座「現代工学の基礎」 計算力学<<空間系I >>
矢川元基、関東康祐、奥田洋司著、岩波書店、2000年(ISBN4-00-010981-2)3,800円(設計の方法論<<設計系III>>と二冊組)
岩波講座「現代工学の基礎」の第一巻の一冊として、矢川元基・関東康祐・奥田洋司による「計算力学」が発刊された。このシリーズは、現代工学を、設計系、情報系、材料系、空間系、技術連関系の5つに分ける新しい視点から編集されており、今後発刊が進むにつれ現代工学がどのように体系づけられていくのかを大観するのも楽しみである。
本書「計算力学」は大別すると、計算力学への導入(第1章)、基礎技術(第2~4章)、高度化技術(第5、6章)の三つの部分より構成されている。基礎技術としては、差分法、有限要素法と粒子的手法が取り上げられている。粒子的手法は、最近注目を集めている格子やメッシュを用いない汎用性に優れた計算力学手法であるが、そうした手法が計算力学の基礎技術として紹介されている点が時代の流れを感じさせる。一方、高度化技術では、計算力学の高効率化や高速化のための、ソフトコンピューティング(知識工学)と大規模計算力学が取り上げられている。近年の計算機の高速化・大容量化は大規模計算を可能としたが、それは必然的に膨大な入力・出力データなどを伴い、ユーザの労力や時間を消費させかねない。そうした問題を解決するためには、本書で取り上げられているような高度化技術は必須であり、今後ますます重要性を増すものと思われる。最近、よくミドルウェアあるいは問題解決環境という言葉を耳にするのもその現れであろう。
以上のように本書は、基礎から応用にいたるまで非常に広範囲で重要な内容を網羅しつつ、コンパクト(150ページ)にまとめられている。したがって、計算力学の基礎をしっかり勉強しつつ、最近の技術も鳥瞰したいという学生や技術者には、入門用の一冊として最適だと思われる。ただ、そのためか各章の密度にやや偏りが感じられ、例えば、有限要素法の章では、基礎式から全体行列の構成方法まで具体的な例を挙げ詳細に記載されているのに対し、粒子的手法では、概要といくつかの解析例を紹介するにとどまっている。粒子的手法の分野はまだ新しく、充実したテキストが少ないこともあり、私としてはその辺りをより詳細にまとめていただきたかった。しかし、本書は大学工学部の学生のための入門用テキストシリーズでもあり、新しい技術に深く踏み込むことは主旨にそぐわないのかもしれない。こうした新しい分野も、機会を改めて、是非まとめていただきたいと思う。
評者 田中伸厚 茨城大学