部門紹介
92期 部門長挨拶
第92期部門長 小石 正隆 横浜ゴム株式会社 |
この度、山本誠前部門長(東京理科大学)の後を引き継ぎ、第92期計算力学部門長を仰せつかりました。大島伸行副部門長(北海道大学)、岩本薫幹事(東京農工大学)、松田哲也副幹事(筑波大学)をはじめ、多くの皆様にご協力を頂きながら計算力学部門の円滑な運営と発展に貢献したいと考えていますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
計算力学部門は2012年に設立25周年を迎え、今年は27年目となります。その間、新たな方法論も登場し計算力学は機械工学の様々な分野へその適用範囲を拡大してきました。産業界においても、CAE(Computer Aided Engineering)ソフトウェアとコンピュータの目覚しい発展を背景にCAEをベースにした商品開発が現実のものとなってきました。さらに、京コンピュータを中心としたスーパーコンピュータの利用環境(HPCI: High Performance Computing Infrastructure)の整備・普及はものづくりを変革する原動力として期待されています。このように、計算力学はものづくりを支える大きな柱と見なされるようになりました。
さて、27年にわたる計算力学部門の歴史の中で、産業界出身の部門長は第88期の辰岡さん(アルゴグラフィックス)に続き2人目となります。私は計算力学と関連した業務に長年携わってきましたが、計算力学を利用する目的は「ものづくりの変革、すなわちイノベーションの創出」であるとの考えに至ってきました。その目的を達成するための役割の一つが「新たなメカニズムの解明」です。急速に発展してきたマルチスケール・マルチフィジクスシミュレーションや、HPCIで実現可能となってきた大規模・非定常シミュレーションによる現象の可視化がその役割を強力にサポートできると期待しています。さらに、もう一つの役割として「新たな知識の発見」を挙げることができます。シミュレーション、進化計算とデータマイニングを組み合わせた方法論(多目的設計探査)がすでに航空・宇宙、家電品、タイヤなどの設計開発において活用されています。多目的設計探査では、最適解そのものを見出すことが目的ではなく、対象とする設計空間から設計に役立つ知識を発見し、概念設計や詳細設計での意思決定にその知識を反映させることを目的としているため、イノベーションの創出に役立つと期待しています。
ただし、そのためには単に十分な精度の計算結果を計算力学シミュレーションで得るだけではなく、得られた結果(可視化情報)からの「気付き」が重要な課題となります。さらに、多目的設計探査では、データマイニングの工夫もさることながら、初めの問題設定、すなわち、どのように「対象とする設計空間」を定めるかが最も重要な課題となります。理想的には現状の制約や想定範囲を超えた設計空間を対象とすべきであり、適切に問題を設定し、適切にシミュレーションを実施し、その結果から新たな知識を見出すというサイクルを持続的に回す必要があります。そのためには、計算力学部門が従来から主催する講習会に加え、新たな企画による人材育成が望まれます。産業界のニーズに合致し多くの参加者が見込め、ひいては部門財政基盤の安定化にもつながるような企画が実現できたらと考えています。そのような企画に対するご意見やご提案がありましたら気軽にお寄せ下さい。
また、「計算力学によるイノベーションの創出」を目指すには様々な交流活動が欠かせません。産学間の交流もその一つです。産業界における成功・失敗事例だけではなく産業界からみた計算力学の目的や方向性を大学の研究者の方々に向け持続的に発信することで、産業界が望む研究課題を共有できるようになります。これまでの関係者の皆様の尽力により、計算力学講演会では企業からの発表が少なくありません。その場が「計算力学によるイノベーションの創出」に向けた産学間の発展的な意見交換に繋がる事を期待しています。岩手大学工学部(盛岡)で開催される第27回計算力学講演会(2014年11月22日~24日)でも企業参加型のオーガナイズドセッションやフォーラムが企画されています。多くの企業会員の方々の情報発信とご来場をお待ちしています。あわせて、大学の研究者の方々も企業参加型のセッションやフォーラムでの議論に是非ご参加頂けますようお願いいたします。さらに、歴代の部門長が掲げてこられた国際交流についても引続き積極的に対応したいと考えています。本年5月開催の日韓の機械学会によるジョイントシンポジウムを、次回より計算力学部門の行事として継続的に開催したいと考えています。
最後に、計算力学部門が登録メンバーにとってより有益な情報交換の場となり、より多くの方々、特に産業界の方々が部門活動に気軽に参加できるように、計算力学部門を少しでも発展できればと考えていますので、皆様から一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。