部門紹介
99期 部門長挨拶
第99期部門長 |
この度、高木周前部門長(東京大学)の後を引き継ぎ、第99期計算力学部門長を務めさせていただきます。飯田明由副部門長(豊橋技術科学大学)、伊井仁志幹事(東京都立大学)、部門運営委員会委員、各種委員会や研究会の皆様をはじめ、関係する全ての皆様のお力添えのもとに、計算力学部門の円滑な運営とさらなる発展に努めてまいりたいと思います。
新型コロナウィルスの第一波が訪れ、緊急事態宣言の発出で始まった2020年度は、第33回計算力学講演会が中止となり、大学での研究・教育環境は大きく様変わりしました。今でこそZoomやWebexを多用していますが、年度の始めは講義のためのビデオ撮影に追われ、Zoom/Webexの使い方もよくわからず、年度間の引き継ぎを行う新旧合同総務委員会の開催も遅れ、メール審議で代用いたしました。その後は落ち着いてきて、ネット会議、メール、電話を適宜使い分けています。外出・出張が不要となるネット会議の使用頻度は驚くほど増えました。一方、私がこの1年間で最も使わなくなったのは名刺だったように思います。
未知の体験となった2020年度の部門活動に関しては、高木周前部門長の素晴らしい舵取りのおかげで、講習会「機械学習×熱・流体工学の最先端」(2020年9月25日(No.20-68)および2021年3月10日(No.21-16)の2回)の開催、CMD2020計力スクウェア研究報告集の編纂と発行(2020年12月7日付け、部門HP上で現在も無料公開中)を行うことができました。計力スクウェアの企画にご協力いただいた方々(計算力学部門ニュースレターNo.64参照)に改めて感謝申し上げます。
上記の講習会「機械学習×熱・流体工学の最先端」は、熱工学部門、流体工学部門と計算力学部門による合同オンライン講習会です。日本機械学会全体として、部門間交流の促進を進めており、各部門が年度末に活動報告を行うポリシーステートメントでも、その冒頭に必須項目として部門間交流の実績と計画を記述するよう求められています。2020年9月25日に開催された第1回目の合同講習会は、参加者数188名と大盛況で、新しいウィズコロナの時代のオンライン講習会の幕開けとなりました。
2021年度には、部門間交流担当委員会を新たに設置し、熱工学・流体工学部門との合同講習会の継続的な開催に加え、別の部門とも合同オンライン講習会を開催すべく、検討を始めています。元来、計算力学部門が扱う分野は、熱、流体、材料力学、機械材料・材料加工、バイオエンジニアリング、設計工学・システム、マイクロ・ナノ工学など他分野との連携が図られており、毎年の計算力学講演会でそうしたセッションがあります。講演会での最新の研究情報の発信だけでなく、今後は、講習会を通じて、産業界に向けた情報発信にも力を注ぎたいと考えています。
計算力学部門は、CAEソフトの開発・サポートを担うベンダとユーザである製造業との関係が深い部門です。計算力学講演会の参加者に占める企業の方の割合は、2014年度には18.8%でしたが、産業界からの参加を促す企画を立て、翌年には33%に上昇し、その後も高水準を維持してきました。この流れを滞らせてはならないと、2020年度に実施した計力スクウェアでは、研究報告集の原稿71編中、28%にあたる20編が企業からの投稿でした。
また、和文・英文論文の計算力学カテゴリーのレビューを担う学術誌編修委員会も産学官の委員で構成しており、計算力学講演会では「企業におけるCAEおよび産学官連携の事例」というOSを運営いただいています。
2021年度の第34回計算力学講演会は、実行委員長の大島伸行先生(北海道大学)のもと、オンライン参加が可能なスタイルで準備が進められていますが、これまで通り多くの企業の方に参加いただけるよう、持続性がある新たな産学官連携の枠組みを構築する必要があると思います。講演会では展示ブースも設けられていましたが、出展企業にとっては、そこでの出会いは重要なものだとお聞きしています。私は名刺を使わなくなったと前記しましたが、講演会の質疑応答などでも、新たな人脈、交流という点では、まだまだ改善と工夫の余地があります。
部門間交流企画ともども、講演会での交流や産学官連携の枠組み、あるいは、講演会開催地へのバーチャル出張が楽しめる仕掛けなど、部門の皆様からのアイディア、ご提案を歓迎いたします。ウィズコロナの時代には、若手研究者の方のための新しい企画も必要ではないかと思っていますが、自分自身ではなかなか妙案を思いつきません。是非、皆様と一緒に考えていきたいと思っていますので、ご協力ご助力をよろしくお願い申し上げます。
私は30代前半のころ、日本機械学会の講演会での発表に対して、企業の方からご質問をいただき、後になって、それは大変有難い質問だったと気づいたのですが、当時は真意を理解できず、間違いではないけれども的外れな答えをしてしまいました。しかし、おそらくその質疑応答がきっかけで、私は国プロのメンバーに加えていただいたという経験があります。学会は若手研究者を鍛え、育ててくれる、と信じていますので、逆に、私が若手研究者の皆様に、そういう場をご提供したいと願っています。それは、キャリアアップにもつながる大事な機会だと思います。若手研究者向けの企画についても、知恵を拝借できれば幸甚です。
昨年度中止となった恒例事業に計算力学技術者2級(固体力学分野の有限要素法解析技術者)認定試験対策講習会があります。2021年は、オンラインで9月1日~2日の2日間のプログラムとして再開する準備をしています。認定試験受験者のみならず、数学の基礎から有限要素法の理論、数理モデリング、V&Vを含んだ内容ですので、人材教育の場としても是非ご活用ください。
この1年間を使って、第100期を迎える2022年度のための下地作りを進めていきたいと思っています。高木周前部門長が敷いてくださったCOVID-19の中での新しい部門活動を持続、発展させ、皆様にとりまして、計算力学部門での活動が新たな技術的課題や研究テーマ、あるいは学問領域の創出と、出会い、ビジネスなどにもつながっていきますよう、努力してまいる所存です。是非とも部門活動にご支援、ご参加賜りますよう、お願い申し上げます。