部門紹介
84期 部門長挨拶
第84期部門長 同志社大学 三木光範 |
このたび、冨田佳宏(神戸大学)前部門長の後を継ぎ、第84期計算力学部門長を仰せつかりました。姫野龍太郎(理化学研究所)副部門長、高木 周(東京大学)幹事をはじめ、運営委員や総務、広報、事業企画など、多くの委員の皆様方のご協力を得ながら、部門のさらなる発展と、会員の皆様方へのサービス向上に精一杯努力して参りますので、なにとぞ宜しくお願い申し上げます。
私事で恐縮ですが、私は大学院修士課程の学生であった1972年から日本機械学会の会員であり、会員歴は34年にもなります。この間、計算力学部門はもちろんですが、材料力学部門や設計工学・システム部門などの部門で研究発表などの活動を行い、本学会は私にとって一番重要な学会でありました。
しかしながら、1994 年に大阪府立大学工学部航空宇宙工学科から同志社大学工学部に新設された知識工学科(2006年度にインテリジェント情報工学科と名称変更)に移った際に、研究の分野を複合材料・構造から新しい分野である並列コンピュータ・並列処理に変えました。そして現在まで、研究活動の中心はIEEE、情報処理学会、あるいは人工知能学会などでした。このため、本部門の部門長を仰せつかることになるなど、夢にも思っていませんでした。
計算力学部門では、主として固体力学や流体力学の数値シミュレーションや、その可視化などの研究が行われており、私はそれらのいずれの専門家でもなく、さらには浅学非才の私がこの歴史あり、かつ活発な活動を続けている計算力学部門の長を務めることはありえないことと思っていたからです。
これまでの部門長は次の通りです。2005年度は冨田佳宏(神戸大学)、2004年度は中橋和博(東北大学)、2003年度は宮崎則幸(九州大学)、2002年度は矢部 孝(東京工業大学)、2001年度は田中正隆(信州大学)、2000年度は宮内敏雄(東京工業大学)、1999年度は北川 浩(大阪大学)、1998年度は藤井孝藏(宇宙科学研究所)、1997年度は尾田十八(金沢大学)、1996年度は松本洋一郎(東京大学)、1994-1995年度は白鳥正樹(横浜国立大学)、1992-1993年度は齋藤武雄(東北大学)、1990-1991年度は三好俊郎(東京大学)、1988-1989年度は矢川元基(東京大学)(いずれも所属は当時、敬称略)です。
これら歴代の部門長に比べると、私は3つの点で異例です。一つは固体力学や流体力学の専門家ではない、一つは私立大学所属である、そして最後の一つは日本機械学会をしばらく離れていた、ということです。この異例さにより、私が本部門長の責務を果たせるのかどうか、大変心許ない状況です。
私は研究分野を並列コンピュータ・並列処理に変えるにあたり、それまでの材料・構造の分野とは離れる決心をしました。なぜなら、情報系の分野で大学院後期課程の教授として文部科学省の承認を得なければ同志社大学大学院工学研究科に新設する知識工学専攻の後期課程教授になれなかったからです。おかげで、過去10余年、計算力学部門の活動にはほとんど関わらなかったため、本部門での研究分野や研究者の知識が乏しく、人間的なネットワークも決定的に不足しています。このため、早急にそれらの勉強を開始し、このニュースレターをお読みいただいている皆様方とも、親しく交流させていただき、ホットな情報をいただければと存じています。
私が部門長としてできることは何か。それは余りにも少ないかも知れませんが、次のことを考えています。
1)計算力学のことについては皆様の方がエキスパートであるので、大いにお知恵を拝借し、皆様が中心になって活動していただける運営を最優先とする。
2)HPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)分野については多少詳しいので、その立場から計算力学部門に僅かでも新しい風を吹かせたい。
3)コンピュータに興味がある本会会員が集い、科学技術の発展にコンピュータが不可欠のツールであり、コンピュータは工学における独創性の源であるというコンセプトで本部門の登録者を増やしたい。
つきましては、固体力学や流体力学をご専門として研究されている方々には、是非とも、本部門の中心となって、研究のさらなる発展をリードしていただきたく、宜しくお願い申し上げます。また、HPC分野の皆様には、是非とも本部門にご参加いただき、HPCが開く未来技術の創造にお知恵を拝借できればと存じます。また、コンピュータやネットワーク、あるいはグリッドが大好きな若い方々には、是非とも、本部門と協力しながら、計算力学の枠を越えて、計算科学の楽しさ、有効性を世界に訴えてゆきたいと考えています。
同志社大学では、文部科学省学術フロンティアの補助金を得て、2000年度から2004年度までに3台のPCクラスタを構築し、2003年11月には日本最高速のPCクラスタSupernovaを作ることができました。また、2006年3月にはマイクロソフト社と共同でWindowsHPCコンソーシアムを立ち上げることができました。これを通じて、私は今こそ、スーパーコンピュータの力を社会の隅々に還元する時期だと思っています。
私の願いは、本部門に関わるすべての人の英知を結集して、これまで主要国立大学、国立研究所、あるいは巨大企業でしか使えなかったスーパーコンピュータを、私立大学や中小企業、あるいは中学・高校に至るまで、誰でもがいつでも使えるようにして、最先端科学技術の恩恵に与れるようにすることです。この実現のために皆様のご協力とご支援を賜りますよう、心からお願いを申し上げます。