部門紹介
86期 部門長挨拶
第86期部門長 名古屋大学大学院 工学研究科計算理工学専攻 大野信忠 |
このたび、姫野龍太郎((独)理化学研究所)前部門長の後を継いで、第86期計算力学部門長を仰せつかりました。これまで主に材料力学部門を中心に活動してきましたが、一昨年11月に名古屋大学で開催されました計算力学講演会の際に当部門第85期副部門長の指名を突然いただいた後、計算力学部門の組織・運営等について勉強してきました。この4月より1年間、大林茂(東北大学)副部門長、田村善昭(東洋大学)幹事をはじめとする皆様方のご協力を得ながら、部門の運営に当る所存でございます。
計算力学部門は1988年に設立されましたので、昨年度で創設20周年を迎えました。この節目の年に当部門の英文ジャーナルJCST(Journal of Computational Science and Technology)が発刊されました。ご存知のように、日本機械学会の英文ジャーナルJSME International Journalは、2002年に設置されました論文集発行形態検討委員会で廃止が決定され、部門英文ジャーナルに移行してきました。現在、11種類の部門英文ジャーナルが刊行されており、部門英文ジャーナルの発刊は部門活動の最重要項目の一つとなりつつあります。JCSTは、萩原一郎(東京工業大学)編修委員長、岡田裕(鹿児島大学)副編修委員長をはじめとする編修委員のご尽力により昨年11月に創刊号がめでたく発刊されました。しかし、先行する他部門の英文ジャーナルに比べて論文投稿数がかなり少ない状況にありますので、JCSTには部門として最大限の支援をすべきであると考えております。新しいジャーナルであるJCSTには残念ながらまだインパクトファクターは付いておりません。JCSTにインパクトファクターが付くのは早くてもVol.3(2009)からになると思われます。このようなJCSTを盛り上げることができるのは、事情をよくご理解いただいております部門登録会員の皆様でありますから、この場をお借りしてJCSTへの積極的な論文投稿をお願いする次第です。
部門活動の評価結果が、日本機械学会誌の2007年9月号に掲載されています。この評価は、支部・部門活性化委員会によって行われたものであり、2001年の第1回(試行的実施)に続く2回目のものです。今回の評価は2002年から2006年までの部門の種々の活動結果と2006年9月に提出された各部門の自己評価書に基づいて実施されました。今回の評価結果を見ますと、計算力学部門は、学術普及・発展活動、対外活動、活性化活動、部門固有項目、総合評価のすべてについてA評価です。すべての項目についてA評価が得られた部門は、20部門中5部門だけでした。計算力学部門がこのように高い評価を得られたのは、歴代部門長ならびに多くの方々のご尽力および部門登録会員の積極的なご協力によることは言うまでもありません。次回の部門評価は2011年に実施される予定であり、次回も高い活動評価が得られるように努力していく必要があります。ちなみに、今回の部門活動評価で総合評価Aは20部門中9部門、総合評価Bは9部門であり、総合評価Cの部門も2部門ありました。なお、5年前の第1回部門活動評価では、部門毎の評価結果は明示されませんでしたが、今回は日本機械学会誌上で評価点A~Cが部門毎に詳細に報告されており、部門活動評価が大変厳しくなっています。
上に述べました評価結果には、各部門への支部・部門活性化委員会からのコメントが付記されています。計算力学部門へのコメントを見ますと、「部門名称の変更」が目に付きます。この名称変更は、自己評価書において当部門の将来戦略・新領域開拓活動として「部門の分野のカバーする領域が広がっていることを考慮し、力学分野以外の研究者を取り込むため、名称変更も含めて検討していく時期に来ていると思われる」と記述された箇所が支部・部門活性化委員会でポジティブに理解された結果です。本挨拶の最初に述べました部門英文ジャーナルの名称は、すでにこのことを取り込み、Journal of Computational Mechanicsではなく、Journal of ComputationalScience and Technologyとなっています。計算力学部門において扱うテーマを単なる力学の分野だけでなく、より広い意味での計算科学、計算工学の領域に広げるため、部門名称の変更は考え得る選択肢であり、総務委員会および拡大運営委員会で会員増強・新領域開拓の方策として議論する必要があると考えます。部門名称の変更にまで至らなくても、部門の講演会である計算力学講演会の名称を変更することも考えられます。なお、計算力学部門の登録会員数は、第1位~第3位登録の合計で現在約5300名であり、この10年間ほとんど横這いの状態ですが、他部門(バイオエンジニアリング部門を除く)では所属会員数が減少していることを考えれば、計算力学部門は登録会員数に関して健闘していると言ってよいと存じます。
すでに述べましたように、計算力学部門は1988年に設立され、昨年度で創設20周年となりました。設立された頃の材料力学の分野をかえりみますと、有限要素法のプログラムは、少なくとも大学では自作することがまだ当然であったと思います。しかし最近では、企業はもちろんのこと大学においても、市販の有限要素法プログラムの使用が当然となり、特別の目的でもない限り自作することはほとんどなくなったと思います。私自身、20年前は、提案した材料モデル(構成式)を有限要素法に組み込むため有限要素法のプログラムを自作していましたが、最近では市販の有限要素法プログラムのユーザサブルーチンの使用を前提として材料モデルの定式化と組込みに関する研究を行っています。このように著しい有限要素法プログラムの発達は、CAEによるものづくりを推進するという観点からすれば大変喜ばしいことですが、その一方で有限要素法とはマニュアルを読みこなすことであり、ブラックボックスとして使用できればよいという状況に陥っているように感じます。2001年に発足しました「計算力学技術者認定事業」(委員長:吉村忍東大教授)はその対策として有効であり、当部門としてもこの事業に連携する形で、まず固体力学の分野で2005年度に「計算力学技術者認定試験対策講習会」を立ち上げました。また、2006年度より熱流体分野の同様な講習会を熱工学部門、流体工学部門と協力して実施しています。このような活動は計算力学部門として大変意義のある活動ですから、これまでの反省を踏まえつつ、積極的に推進していく所存です。
計算力学部門は部門横断型の部門です。このため、種々の分野の方々に当部門の委員会委員にご就任いただいております。委員各位のご意見はもちろんのこと、部門登録会員のご要望を広くお聞きし、今期の活動を具体的に立案し進めて行きたいと思いますので、皆様方の暖かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。