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新刊書紹介
有限要素法流れの解析
矢川元基(東京大学)、奥田洋司(横浜国立大学)、中林靖(東京大学)共著
朝倉書店, 1998年(ISBN4-254-23661-1)
本体3700円
朝倉書店の計算科学シリーズ(矢川元基 編集)のトップとして、矢川元基・奥田洋司・中林靖の3名による有限要素法流れの解析が発刊された。
118頁の比較的コンパクトな体裁であるが、非圧縮性粘性流の有限要素法による解析方法に関して最近の話題まで含めた広範な内容に言及している。2章で基礎(支配)方程式を導出したあと、4、5章の有限要素法による空間近似を説明する前に、3章で差分法や有限体積法も意識しながら、非圧縮性粘性流の解析アルゴリズムを要領よく整理している。この3章は一読の価値がある。6章以降は比較的最近の話題を取り上げており、乱流、大規模問題、自動要素分割法、アダプティブ有限要素法、超並列解析に1章ずつを割り当て、最後の11章で非圧縮性流体解析コードの実例を取り上げ、フロッピーディスクに納められた3次元非定常非圧縮性粘性流の層流解析プログラムの説明を与えている。
一読してみての感想を思いつくままに述べる。全体のページ数に制限があるためと思われるが、ページ数の割に広範な話題を扱っているため、3,6,9、11章のような読み応えのある章とあっさり流している章が混在しているように思われる。4、5章の有限要素法による空間近似の説明に対し、4章の1次元近似のやさしい説明と5章のインプリメンテーションの簡潔すぎる説明にいささかギャップを感じるのは私だけであろうか?4章の内容は他の入門書を参考することとし、5章の内容をもう少し詳しくする選択もあったのではないかと思われる。
超多忙な著者がわずかな時間を見つけながらまとめた著書と思われる。専門家は十分カバーできるが、初学者には苦しいと思われるいくつかの細かい不親切も見受けられる。8頁の(2.9)式で総和規約がいきなり出てくることとその説明が47頁の(6.3)式の前で与えられていること等が一例である。しかしながら、上記のような些細なことを教官や先輩が適当に補ってあげれば、授業 のテキストや輪講テキストとしては十分活用できるわけで(本の厚さに比べ値段が少し高いのはフロッピーディスク付のため?)、最近の話題まで含めてコンパクトにまとめあげた著者の力量を感じないわけにはいかない。
参考文献を見ても分かるように、標題の内容に関する和書は80年代前半に少し出てから最近までほとんど書かれなかったが、最近またいくつか出版されるようになってきた。多分、この分野の研究の動向と関係があるのだろう。最近の話題の中には本書で触れられていない安定化法や非対称行列の反復解法等もある。本書が一つのきっかけになり、更に新たな良書が出版されることを祈願して拙文の結びとする。
(九州大学 工学部 金山 寛)