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固体・液体・気体の統一解法
執筆者:矢部孝
東京工業大学・大学院総合理工学研究科
フランスのボルドーの西海岸アーカションで第16回ICNMFD(Int.Conf.Num.Meth.Fluid Dynamics)が開かれた。隔年で開催されている歴史ある会議で,2000年には京都で開催される。今回は,約200名の出席で,ワールドカップの最中の7月6日から5日間の日程で行われた。毎朝1名の招待レクチャーを皮切りにプレナリー、パラレルのセッションが続いた。この5名の招待レクチャーの中に筆者を推薦していただいたのは、身に余る光栄であった。コミッテイー・メンバーの大島耕一先生にこの場を借りてお礼を申し上げる。
期待に答えんものと、日本からパソコン、携帯プロジェクター(アプテイ LP420,3kg, 500ルーメン)を持参したのだが、運の悪いことに筆者の講演の前日がバンケットに当たっており、なんとこのバンケットから全員帰宅したのが午前2時で、本場ボルドーのワインに相当酔った人も多く,8:30よりの講演は最悪の状況にあった。それでも,まあまあの人数が出てきてくれたので、ほっとしたのが正直なところである。
ともかく、筆者のレクチャーの冒頭で映したアニメーションの静止図をここに示す。我々の目指しているのは、固体・液体・気体の統一解法である。この図のように、固体が気体中を落下し、液体に着水し浮遊するようなシミュレーションでは、全ての物質を同時に解く必要がある。三つの物質は,固定された格子上を拡散なく運動しなければならない。図のように、水しぶきがあがるときには複雑な境界で密度が千倍も異なる気体と水が接している。我々の開発したCIP法はこれを簡単に実現できる方法で,ミルク・クラウンの三次元シミュレーションを初めて成功させ、外部の気体が非常に大きな影響を与えることを見いだした。
これは比較的簡単な例である。この三つの相が今度は互いに相転移を起こすことがある。現代の最先端技術は異なった相にある物質の間の相互作用に関係することが多くなってきている。例えば、半導体、液晶、磁気デイスクなどではレーザーを用いて超微細加工を行う。固体にレーザーを照射し、溶かし、蒸発させてゆく過程であるが、この中には実に複雑な過程が含まれている。まず、加熱により固体が溶け、応力に支配された固体から粘性に支配される液体へと相転移する。さらに加熱されると今度は蒸発が始まる。こうして、殆んど圧縮されない液体から圧縮されやすい蒸気へと相転移する。このときの密度変化は実に2桁から3桁にもなる。このような変化が、数ミクロンオーダーの薄い層で起こるのである。このときには、明確に定義された境界がない。今まで、固体であったものが液体になり、気体になって飛散してゆく。CIP法により、レーザー加工のデブリの形成や溶接でのキーホール生成のダイナミックスが明らかにされた。
応用は、地球惑星、天文から伝熱、燃焼反応、固体力学,流体力学,プラズマの幅広い範囲に亘っている。このようなCIP法に興味のある方は、http://ciprus2. es.titech.ac.jp/cipus.htmlをご覧下さい。現在会員数400名のCIPUS(User's Society)のホームページです。一人でも多くの方が,興味を持って下さることを願っています。
図の説明
丸太が重力を受けて落下し、水と相互作用する様子。時間は左上から下、次に右上から下へと進む。理研・肖鋒氏によるCIP法を用いたシミュレーション。固定の矩形格子150x150x150を用いた。