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動画作製のすすめ
姫野龍太郎
特殊法人 理化学研究所
情報基盤研究部 情報環境室
e-mail:himeno@postman.riken.go.jp
もし、あなたが時間的に変化する現象を計算しているのなら、それを動画に作りたいと思ったことがあるでしょう。えっ、もうやってるって?そうでしょうね。今やワークステーションもパソコンもメモリー容量はGbyteに届く時代。これらのディスプレイ上で動く動画が簡単に作ることができるようになってきました。インターネットでも動画が公開されており、見る機会も増えています。これまでに比べると、動画作製の環境が随分整ってきて、低価格で簡単に楽しむことができるようになってきました。この大きな進歩をもたらしたのは、パソコンの高性能化とともに、メモリーとハードディスクの高密度化・低価格化が大きな役割を果たしてきました。
ところで、デジタルビデオ編集はお試しですか? 計算で求めた動的な結果を元に、パソコン(DOS/V、Mac)を使って簡単に動画に編集することができます。今回はこの話です。
まず、動画の基本的なことについて簡単に触れておきましょう。なんと言っても動画はデータ量が膨大です。640x480というテレビ解像度のフルカラー画像は約1MB、これが動画だと1秒間に30枚なので、データ量は約30MB/s、たった1分の動画を作るのに2GB近い量になってしまいます。それにハードディスクからプロセッサに30MB/sのデータを連続で供給できる単一のハードディスクはありません。複数のディスクを組み合わせたRAIDが必要で、これをハードで行うものは今でも非常に高価です。これらのことから、一般に動画のデータを圧縮し、量も転送レートも小さくして扱います。
動画像の圧縮に使われる方法でよく使われるはJPEG、Motion JPEG、MPEGがあります。以下で簡単に説明しましょう。
1) JPEG
JPEGは静止画の圧縮に使われるものと同じで、画像を小さい正方形のタイルに分けて、デジタルコサイン変換を使って画像の空間周波数のうち低い成分だけを取り出す方式です。圧縮率は可変ですが、圧縮率を上げると正方形のタイルが見えるようになってきます。JPEGはもともと画素の色情報が滑らかに変化する自然画像を前提に作った圧縮方式なので、シミュレーション結果を表示するときに使う線や点、説明用の字などの空間周波数の高い画像はこの圧縮方式に適していません。特に白地に黒などの濃い色を使って書いた文、逆に暗い背景に明るい字を使った文は最悪で、JEPGを使って圧縮した画像には文字の周囲に汚れたようなノイズが出ます。線画も同じです。このため、同じような目的で使われる等高線と、値に応じた色で塗り分けたもの(以降色塗りと呼ぶ)とを比べると、色塗りの方がこの圧縮方式に向いています。GIF方式の圧縮は色数を減らす方式をとっているため、JPEGが適していないこのような画像の圧縮が得意です。
従来デジタルビデオ編集というと、このJPEGによる圧縮を専用のハードウェアボードで行い、高速化したものが使われました。パソコン用の代表的なものにMEDIA100やTARGA2000があります。これらのボードにはいろんな種類があり、高級なものは高画質な低い圧縮率(1/2や1/3など)をサポートし、コンポーネント信号(RGB信号や色差信号)を入出力できるなど、今でも画質を追求するなら最高峰にあります。これらのボードは編集ソフト込みで50万円から300万円、高画質を目指すなら組み合わせるのはハードウェアによるRAIDディスクで50万円から150万円くらい(容量に依存)、ビデオはソニーのBeta CAMSP、松下電器のM1などの業務用のもの(200万円くらい)を集める必要があります。
2) Motion JPEG(DV)
JPEGを動画に使い、動画全体を一つのファイルにまとめた場合Motion JPEGと呼びます。このため、1)で説明したものもJPEGというより、Motion JPEGという方が正しいでしょう。しかし、1)で示したMEDIA100などのシステムはこれらのボードに特有の形式で記述されたファイルになっていて、同じボードを備えたコンピュータしか読み書きができません。これとは別に、ハードウェアに依存しないMotion JPEGがアップルによって定義されていて、こちらはボードメーカによらず共通です。また、ソフトによる圧縮伸張ができ、圧縮に使ったボードがなくても再生できます。
圧縮フォーマットが標準化されたMotion JPEGとしてDigital Video方式があります。私のお薦めはこのDVで、この原稿を書くに至ったのはこのDVの出現です。DV方式は圧縮比が1/5固定のMotion JPEGです。なんと言ってもその最大の価値は値段が安いこと。例えばPro Max社のFire MAX IIというボードではウルトラSCSIのインターフェースを同じボードの中に含んで10万円以下で手に入ります。この場合、他にはウルトラSCSIのハードディスク(4GBで5万円くらい、内蔵だともう少し安い)と編集ソフト(後述)を買ってきて、手元にあるパソコンに接続するだけでデジタルビデオ編集が可能です。インターウェアからはDV Cinema Gearという名前で編集ソフトもセットされて定価298000円で出ています。また松下電器からはハードが全てセットされたDVデッキ内蔵のDOS/V機が出ています。(SonyのVAIOシリーズにはDVキャプチャーボードが内蔵されたPC-S600TV7がある。松下の場合は受注生産)
ビデオへの出力にはIEEE1394俗にFire Wireと呼ばれるケーブル端子を使い、デジタルで行います。このため、この端子をもつDV方式のビデオカメラかデッキが必要となります。編集機能も付いたDV方式の据え置き型デッキには、例えばSony DHR-1000: 市価約35万円があります。しかし、私のお薦めはDV方式のビデオカメラを使うこと(例えばSony DCR-PC10:市価20万円弱)。そのままビデオカメラとしても使えるし、プレゼンテーション会場にDVのカセットとともに持ち運んでも軽いので苦にならないのです。大きなVHSカセットを持ち運ぶより、ずっとスマートです。
ここで注意が必要なことが3つ。一つはDVの場合、画像の解像度は720x480とふつうのビデオよりも横長であること。2つ目は磁気ディスクとしてハードウェアのRAIDこそ必要ないものの、連続で3.6MB/sの性能が確保する必要があること。3つ目はアナログのビデオから画像を取り込む可能性がある場合、DVカメラにアナログ入力端子があるかどうか確認すること。Sony DCR-PC10などの小型DVカメラにはアナログ入力端子がないものがあり、このような用途には使えない(あるものもある)。
3) MPEG
MPEGはMPEG1と2が今ありますが、使われているもののほとんどは低解像度320x240のMPEG1です。これはビデオCDでも使われている圧縮形式で、単に動画の各こまで画像圧縮するだけでなく、過去の画像との差を使って時間方向にも圧縮するために、非常に圧縮率が高いのが特徴です。具体的には空間方向の圧縮だけを行った画像と、その画像との差だけを持った画像数枚とが組合わさって一区切りとなり、これを繰り返すことで全体が構成されています。これから分かるように、適当なところで切って挿入してと言う編集作業には向かないことが分かります。ただ、MPEGはUNIXやWindows、MACとプラットフォームを問わずサポートされていることとの、圧縮比が非常に高いので、インターネットや他の機種へ動画データを持って行くときに好都合です。
最後に編集ソフトですが、これはAdobe社のPremiereで決まりでしょう。Windows用もMac用もあり、値段は市価で10万円くらいです。圧縮ボードとセットで販売されている場合もあり、機能縮小したLiteがセットされていても、登録すると比較的安価でフル機能のものにアップできます。
さて、実際の手順はこうです。
1) シミュレーション結果は表示ソフト(例えばAVSやポスト君など)で各瞬間ごとの画像を必要枚数作り、ディスクに番号付けして保存。
2) 保存したファイルをPC(またはMac)に転送します。このときWindowsの場合は拡張子に、マックの場合はクリエータやタイプに注意し、転送後、画像ファイルとして認識さえるように転送ソフトで設定(表示ソフトを動かすコンピュータとビデオを編集するコンピュータが同じ場合はもちろん必要ない)。転送先のフォルダ(ディレクトリー)には他のファイルを入れない。
3) ペイントソフトや画像編集ソフトでタイトルや説明用の図、画面切り替え(暗転)用の真っ黒の画像などを別のフォルダに用意。
4) Premiereを起動し、各瞬間の画像ファイルが入ったフォルダを指定し、一括で読み込む。
5) 3)で用意した静止画を読み込む。
6) これらの静止画と動画を画面上で編集。
一つの画像から次の画像に移るとき、片方を2トラックある、もう一つのトラックに置き、クロスディゾルブなどの特殊効果を使って画面を切り替えます。私は一つの場面から他の場面に移るとき、真っ黒の画像を間に挟み、クロスディゾルブを使って徐々に暗転、更に次の場面に徐々に切り替わるというようにしています。
7) プレビューで確認
8) ムービーとして作製
9) ビデオテープに録画(Unixのワークステーションに持って行くときはMPEGに変換するソフトをかける)
という手順になります。このようにすると編集は簡単に行えるし、何度もやり直しができるので、自分が映画監督になったような気分です。ビデオテープで行っていた編集作業から比べると時間的にも相当短くてできますし、ビデオ関係の知識も必要ありません。特に動画の部分だけを一旦ムービーとして作っておき、それを使って編集作業すると試行錯誤が早くできます。
以上を整理すると、
1) 動画を作るためのハード・ソフトは安くなり、パソコンやデジタルビデオカメラが既にあれば、25万円程度でできるようになった。(込みでも70万円でできる)
2) デジタルビデオ編集は簡単で、素早く行え、映画監督になったみたいで楽しい。
さて、今回は初級編・入門編として原稿をまとめました。ご意見ご質問などがあれば筆者までEmailでお寄せください。