No.71
No.70
No.69
No.68
No.67
No.66
No.65
No.64
No.63
No.62
No.61
No.60
No.59
No.58
No.57
No.56
No.55
No.54
No.53
No.52
No.51
No.50
No.49
No.48
No.47
No.46
No.45
No.44
No.43
No.42
No.41
No.40
No.39
No.38
No.37
No.36
No.35
No.34
No.33
No.32
No.31
No.30
No.29
No.28
No.27
No.26
No.25
No.24
No.21
No.20
No.19
No.18
No.17
No.16
No.15
No.14
No.13
No.12
No.11
No.10
No.09
No.08
No.07
No.06
No.05
No.04
No.03
No.02
No.01
ニュースレター
- Home
- ニュースレター:No.19
- 功績賞の受賞に際して
功績賞の受賞に際して
白鳥正樹
横浜国立大学工学部生産工学科
本年は日本機械学会100周年にあたり、また計算力学部門が発足して10年目ということで、100周年記念事業の一環として開かれた第10回計算力学講演会においてはからずも計算力学部門の功績賞を受賞いたしました。同時に受賞された他の高名な先生方の一端に加えていただきましたことを光栄に思いますと同時に、私がこれまでやってきましたような比較的地味な仕事にも光をあてていただき、御配慮下さったことに感謝する次第です。
想い起こせば今から約30年前、山本善之先生らによって日本にはじめて有限要素法(FEM)のコンセプトが導入された頃、まだ学生であった私に指導教官の宮本博先生から与えられたテーマが、FEMを用いて破壊力学(FM)の問題を解いてみないか、ということで、同僚の三好俊郎先生と共にこの問題に没頭致しました。はじめのうちはき裂先端を3角形のメッシュに切って、破壊の問題の何がわかるのかとの批判的な意見が多かったのですが、そのうちFEMおよびFMの双方ともその手法が発展し、体系化していくに従って私共のやってきた分野も数値破壊力学(Computational Fracture Mechanics)として体系化され、現在では破壊の問題は数値解析なしには論じられない程重要な柱となっております。このようにひとつの方法が草の根から生長し花が咲くまでをその中に身をおいてつぶさに観ることができたのは大変に幸せなことであったと考えております。
上記の破壊力学は主として原子力圧力容器等の大型構造物の破壊を論ずるための工学的手法として発展してきましたが、私は現在、エレクトロニクス実装におけるはんだ接合部の強度評価という新たな問題に興味を持って没頭しております。連続体近似からミクロスコピック領域に至る境目の領域における破壊の問題をどのように記述していくか、再び混沌の世界に首をつっ込み、その中からどのような体系を組立てることができるか楽しみにしております。このような課題に取り組むに際して、現象を知るための実験と、複雑な現象の中から本質を抽出するための理論と、そして複雑な現象に対して定量的評価を可能にする計算の3つのアプローチがそれぞれ重要であるとの思いを新たにしております。