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新刊書紹介
数値流体力学
越塚誠一著
培風館
1997年4月,B5-223頁,定価3,900円
本書「数値流体力学」はインテリジェント・エンジニアリング・シリーズの1冊として出版されたものである。数値流体力学の重要性は地球環境問題・流体機器の設計製作・乱流の制御・予測等において,日ごとに増している。我々は絶えず流体と連成する複雑系の解析に遭遇する。そして,大規模・複雑系の並列計算機による数値流体力学の研究が世界中で展開されている。しかし,それには基礎からしっかりした土台を作ることが必要である。本書はこの基礎固めに最適の本である。具体的な章構成は次のとおりである。
1. はじめに
2. 差分スキーム
3. 計算格子
4. 行列方程式の解法
5. 非圧縮流れの数値解析法
6. 粒子法
第2章の差分スキームでは時間差分スキームと空間差分スキームに分類して,多くの代表的なスキームの考え方が要領よく平易に解説されている。スキームの物理的内容が詳しいので自分で新しいスキームを考案するときの参考になるであろう。第3章の計算格子では格子のトポロジーが位相数学の立場で議論されている。これは著者独自のユニークなもので今後の発展が期待される。第4章は行列式の解法である。代表的な解法はすべて記述されているが,実際に使用するときにはどれが最適であるかは問題依存性もあり,選択は難しい。大規模スパース行列の解法は現在も研究が発展中である。欲を言えばBiCGSTABやGMRESにも触れていただきたかった。第5章は非圧縮性流れの代表的な解法であるMAC法とSIMPLE法についての詳しい解説である。おそらく,この2つの解法はこれからもNavier-Stokes方程式の解法として生き続けるであろう。
第6章の粒子性は著者の独自の研究に基づくところが多く,今後のグリッドレス法の発展と共に期待される分野である。
全体的な印象としては,著者の深い物理学的数学的なバックグラウンドを背景に不変性のある統一的な考え方に重点が置かれ,必要に応じて詳細な説明があるので,数値流体力学の初心者にも,専門家が知識を再整理するにも良いテキストであると考えられるので是非一読をお薦めしたい。
(慶應義塾大学理工学部機械工学科 棚橋隆彦)