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私と計算力学とのかかわり
齋藤武雄
東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻
この度は、本部門より功績賞を戴き光栄に存じます。
本部門は創立以来、既に9年を経過し、部門登録者数も5000名を越える大所帯になりましたことは喜ばしい限りです。
さて、この機会に私と計算力学とのかかわりについて簡単に触れさせて戴きたいと思います。
私は1965年に大学院修士課程に進学しましたが、指導教官 故大塚芳郎教授から与えられました修論のテーマは、「部分予混合拡散炎の研究」というものでした。簡単にいうと、ガスライターのような火炎で燃料側に酸素を混入した場合の火炎の形状や構造を数値解析で明らかにするということです。
最初は、容易に解けるものと高をくくっていた私は、この問題が非線形で移動境界を伴う難しい問題であることをあとで知りました。
当時は東北大学には大きな計算機はなく、結局、三週間程本郷の近くに泊まり込み東京大学の大型計算機HITAC5020を使わせて戴きました。しかし、仲々計算結果が出ず、大塚教授から論文の〆切間際に「君、計算の方はどうなっているかネ」と催促の電話を受けてしまいました。このとき苦労したお蔭で、この移動境界問題は、小生のライフワークの一つになり、その後、1972年に、現在、世界の100ケ所以上で採用されている境界固定法(Boundary Fixing Method: BFM)の開発の端緒となりました。
大学院博士課程を修了後、4年間藤沢市にある相模工業大学(現、湘南工科大学)にお世話になり、そこで伝熱学やエネルギーの研究を行いました。それが契機となり、1975年に母校に戻ってからは、現在の専門である“エネルギー・環境学”に関わる研究を行うようになりました。とくに、都市の温暖化のシミュレーションの研究に力を注いできました。このようなスケールの大きな問題(メソスケールという)は、簡単に実験ができないこと、寸法効果があり、小さなスケールで使われる理論やモデルは、必ずしも適用できないこと、本質的に3次元の非定常問題であることなど、根本的に定式化をやりなおしたりする必要があり、ここまで来る道程は平坦ではありませんでした。
しかし、収穫もあり、この過程で、時間を空間の一つに組み入れて次元を一つ増やして空間場の問題として非定常問題を解く、タイムスペース法(Time-Space Method: TSM)を考案することができました。この方法は、従来の方法に比べて1,000~10,000倍計算スピードが速く、今後、地球温暖化や都市温暖化など長時間(長年月)の大規模計算に極めて有効な方法です。
これまで30年間も計算力学に携わってきましたが、“独創的”といえる研究は、この2つ位です。
自然の現象が人知を遥かに超越した存在であることを改めて認識させられました。
末筆乍ら、会員皆様のご健康と計算力学部門の益々の発展を心からお祈り申し上げペンを擱きます。