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SPCES' 97報告
矢川元基
東京大学大学院工学系研究科システム量子工学専攻
去る1月27日から28日の2日間にかけて、計算科学国際シンポジウム(International Symposium on Parallel Computing in Engineering and Science ; ISPCES'97 )が科学技術庁の後援のもと、金属材料技術研究所、日本原子力研究所、理化学研究所、動力炉・核燃料開発事業団および高度情報科学技術研究機構の共催並びに実行委員会(委員長:矢川元基 東京大学大学院教授)によって、東京虎の門パストラルで開催された。
本シンポジウムでは、有馬朗人理化学研究所理事長から特別講演、米、英、仏、独から著名な計算科学や情報処理の研究専門家等10名、また国内においても大学、各研究機関の代表的な研究者等、14名による招待講演が行われ、欧米各国の最先端の計算科学の研究成果が一同にまた詳細に紹介された。約10ケ国の関係各国および国内から、延べ約400名以上の熱心な聴講者が詰めかけ、真剣な質疑応答が繰り返された。
1.日本及び欧米各国の計算科学の紹介
日本からは、筑波大の岩崎教授よりCP-PACSプロジェクトおよび量子色力学等の計算物理、東工大の高橋教授より並列セルラオ-トマトン法による複雑流れ、京都工繊大の里深教授よりオイラ-方程式とナビエスト-クス方程式のワ-クステ-ション等による並列計算、航技研の山本主任研究官より数値風洞を用いた一様等方性乱流の直接数値シミュレ-ション、理化学研究所の戎崎主任研究員よりGRAPEを用いた並列分子動力学計算、東大の矢川より並列有限要素法による大規模問題解析が紹介され、日本における並列処理による計算科学の優れた成果が紹介された。一方、原子力用計算科学のクロスオ-バ-研究成果も披露され、先ず流体系において動燃の山口主任研究員より燃料集合体内部等の複雑形状における流動の並列計算、原研の蕪木主任研究員から乱流、渦構造の直接数値シミュレ-ション、電総研の関口主任研究官から大規模計算を目指したメタコンピュ-ティングのネットワ-ク情報ライブラリ構築研究などが紹介された。構造系としては、動燃の笠原副主任研究員よりネットワ-ク、分散オブジェクトモデルによる並列有限要素法、理研の牧野内主任研究員より非線形弾塑性モデルによる並列有限要素法、金材研の白石主任研究官よりヘリウム脆化解析における並列有限要素法、さらに原研の荒井室長より脆性材料の粒子、気孔等のメゾスコピックモデルの並列処理研究が紹介され、各研究所における幅広い計算科学研究の成果が示された。
欧州では、ドイツ国立情報処理研究所(GMD)から、欧州共同事業としての並列計算プログラムの産業界への反映を目指して実績を上げているユーロポートプロジェクト等の経験が紹介された。また仏国立情報処理制御研究所(INRIA)からは、メタコンピュ-ティングでの並列処理システム研究の紹介、さらに英国ではロンドン並列処理研究センタ-に参加しているグリニッジ大学から汎用物理コ-ド、メッシュ領域分割や並列言語研究例等が紹介された。米国からは、最近1.4テラフロップスを記録した超並列計算機を有する国立サンディア研究所大規模並列計算センタ-における原子炉安全解析コ-ドへの並列応用、さらには石油探査および地盤調査等に用いられる地震探査解析における大規模並列計算例、国立大気研究センタ-(NCAR)における大気循環解析コ-ドの並列計算への取組、さらにカ-ネギメロン大学における並列有限要素法によるカルフォルニア大規模盆地の地震動解析やコロンビア大学における量子色力学の並列計算、またロスアラモス国立研究所における二相流計算や核廃棄物の消滅処理等における並列計算研究などが紹介された。これらより、欧州では、産業応用に重点を置いた、ワ-クステ-ションクラスタ-による構造、流体や電磁気等の汎用解析コ-ド並列計算ソフトウエア整備が成果を上げてきていること、米国ではHPCCプロジェクト等で整備が進んだ大規模並列計算資源を用いて、流体、化学、構造などの大規模複雑現象計算が相当進展していることが窺われる。一方日本では、欧州や米国で優秀な性能と認識されてきた大規模並列計算機のプレゼンスに比して、応用ソフトウエア環境整備の立ち遅れを指摘するむきもあるが、流体力学、構造、量子力学等の大規模、複雑系の並列計算研究では、米国と同様に進展していることがシンポジウムを通じて示された。
2.招聘講演者との意見交換
シンポジウムを通じて招聘講演者との意見交換も積極的に行われた。共通的な意見として、21世紀に渡り大規模複雑計算は益々重要となり、大規模な並列計算環境は発展していく。しかし、まだ課題も多々存在する。例えば、大規模自由度計算に耐えられる革新的なアルゴリズム、新型ソルバ-等の開発、大容量ネットワ-キング、人材育成や工学、理学専門家と情報、計算工学専門家との共同作業のあり方、さらに国際協力による計算科学プロジェクト、応用ソフトウエア開発、さらにソフトウエア成果の公開利用の整備等が重要であること等が認識された。とりわけ国際協力は重要であり、今後の盛んな交流が望まれるとの声は大きかった。
3.その他
計算科学国際シンポジウムは今後も約2年ごとに行われる方向で大方の意見が纏まっている。次回は1998年開催の予定である。今後、日本発信の国際会議として盛んになることを期待したい。