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WWWと計算力学教育
松本敏郎
信州大学工学部生産システム工学科
最近はほとんどの人が、一日の中の幾許かの時間をパソコンの前で電子メールを確認したり、どこかのWWWのページをのぞいたり、ネットニュースを読んだりして過ごしていらっしゃることでしょう。特に、WWWブラウザを見ながら終わりのない情報の糸をたぐっていると、最新の情報がみるみる集まり、ハードディスクはたちまち満杯になるけれども、仕事はあまりはかどっていないという経験は、私だけのものではありますまい。
WWWを使うと誰もが気の利いた情報を手軽に発信できます。ホームページの中にはカラフルな静止・動画像や効果音などを埋め込むことができますし、他のWebサイトへのリンクを張っておけば、他の情報の内容も実際に参照できるわけです。また、計算力学を勉強する上で重要な数式もなんとか表示できます。そういうわけで,WWWは他の分野だけでなく計算力学の教育環境においても役に立ちそうであると、みなさんも認識されていることと思います。私共の研究室でも境界要素法の基礎的な内容についてWWWを用いて教育することを試みているところです。実際のところWWWで行っていることは、各種ファイルをリンク先から次々に転送しているだけです.そのファイル形式は、各種テキストファイル(プレーンテキスト、HTML、VRML、エンコードされたバイナリファイルなど)やバイナリファイル(静止・動画像、音声、各種圧縮されたファイル、実行可能なプログラムなど)であり、それらをWWWブラウザに表示したり、サーバからダウンロードすることができます。WWWブラウザは、いわばOSとして機能しており、通信速度の問題を除けば、インターネットに接続された異機種からなるサーバー上の資源を、自分のパソコンのハードディスクから取り出すようにアクセスすることができるわけです。また、OSとしてのもう一つの機能であるプログラムの起動もWWWブラウザから可能です。たとえば、WWWサーバ側にあるCGIと呼ばれる実行可能なプログラムをリンクしておけばそのプログラムが起動され、結果はサーバプログラムを介してWWWブラウザ側に返ってきます。よく見かけるアクセスカウンタやフォームはこの仕組みを利用したものです。そのほか、java言語のアプレットを用いれば、小規模のプログラムがサーバー側からブラウザ側に転送され,ブラウザ側で実行されます。このように、WWWの仕組みを利用すれば、1台の計算機で行ってきたことをインターネット上の仮想的な計算機上で実行できるわけです。しかも、まだ不十分であるにしろ、仮想現実まで含むマルチメディア情報をやり取りすることができるようになりました。もちろんこの技術はLANの中だけで利用することも可能なわけで、企業内での情報管理システムにもWWWの技術を活用する動きが出ています。
このようなWWWの能力と将来の技術的発展を想像すれば、自ずと計算力学教育(そして研究)へのこの技術の活用方法が明らかになると思います。まず今すぐにでもできることは、計算力学の各分野の基礎理論を解説するコンテンツを作って公開することでしょう。計算機のディスプレイを通して理論を眺めれば、難しい理論も計算機シミュレーションに自然につながっていくような錯覚を与え、学生にとって親しみが増すことでしょう。また、CGIの機能を活用すれば、FORTRANやC言語の簡単なコンピュータプログラミング演習もできます。また、様々な数値計算アルゴリズムを実際に試すことができるコンテンツも作成可能でしょう。結果は、CGIプログラムからテキストファイルの形式で数値データとして受け取ってもよいし、GIF形式などの画像データに加工したグラフとして受け取ることもできます。また、ブラウザ側で結果を加工して表示させるjavaアプレットを送り返してもいいでしょう。さらにもっと努力すれば、javaアプレットを使ったプリプロセッサプログラムを使って計算の入力データを作り、サーバがそのデータを基にいくつかのワークステーションなどで負荷分散させてFDM、FEM、BEMなどの計算を実行し、結果をポストプロセッサjavaアプレットとともにブラウザ側に返して表示するシステムも作れるはずです。私共は現在教育用にこのようなBEMシステムを開発中ですが、こういうシステムがあれば、学生は理論の有効性を実際に計算して試すことが容易にできるわけです。また、プログラムリストも一緒に公開すれば、理論とプログラムの間の関係を理解することができます。
WWWのもう一つの有効な活用法として、数値計算用の材料物性値や境界条件などに関するデータベースの作成が挙げられましょう。計算するプログラムはそろっていても、計算する上では様々なデータが必要となるものです。このようなとき、簡単にアクセスすることができるデータベースがWWW上にあれば便利だと思います。これは多くの人の協力がないと実現が難しいことでしょうが。