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書評
Real Computing Made Real: Preventing Errors in Scientific and Engineering Calculations
F.S. Acton (Professor Emeritus, Computer Science, Prinston University)
Prinston University Press, 1996年, 259頁. ISBN 0-691-03663-2
本書は、コンピューター科学を専門とする経験豊かな著者が、実数計算における桁落ちなど数値計算で陥りやすい問題点について豊富な例を示しながら解説したものである。ただし、本書は数値解析の新しい手法を提示するものではない。本書は6章からなり、本文に先立つ"EXHORTATON"中でその目的を数値解析のアルゴリズムの解説ではなく、いかにして桁落ちを防ぎ、数値計算の効率と精度を向上させるかにあると述べている。各章の構成は
0. TOOLS OF THE TRADE, GLOOMY MUSINGS
1. NONLINEAR EQUATIONS
2. PRESERVING SIGNIFICANT DIGITS
3. QUADRATURES
4. RECURRENCE RELATIONS
5. CHOOSING AND TUNING AN ALGORITHM
である。
非線形方程式の解析においては、繰り返し計算によって収束解を求めることが多いが、その収束状況は初期値の設定に大きく依存している。著者は、まず方程式の幾何学的特徴を知っておくことの重要性を述べ、ほかにも数値計算において 桁落ちを防ぐためのヒントや、数値計算アルゴリズムを改良するための幾つかの有用な手法を紹介している。また、数値解析パッケージソフトはそれ自体に(バグなどの)問題を内包するばかりでなく、定式化における問題をも隠してしまう 恐れがあると指摘している。ややもすると問題のモデル化や定式化を十分吟味することなく、数式処理ソフトなどに頼りがちな昨今の傾向に対する警鐘となるであろう。
数学的にはさほど難解な部分はなく、数値解析を行う際の基本的手順の大事さ を再確認させられる。また、著者独特の文体は読者を飽きさせないであろう。余談ではあるが、著者は東洋文化に関心があるらしく、本書の所々に浮世絵や東洋 的彫刻の写真が挿入され、その文体とともに独特の雰囲気を醸し出している。
北海道大学工学研究科機械科学専攻
小林幸徳