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数値流体力学関連の二つの講習会の報告
荒川忠一
東京大学工学部
平成7年度の講習会として、数値流体力学に関連した「プロイグラム実習による数値流体力学の体験」と「専用並列計算機GRAPEとその応用-流体力学への応用と実習-」の二つを流体工学部門と共催したので、その報告と感想を述べたい。
前者は初学者講習という立場から、この分野の教科書として出版されたテキストの著者である藤井孝蔵氏(宇宙研)と筆者の荒川が、各々のテキストを用いて解説をした。1日目の午前を流体方程式の基礎的な解法と圧縮性流れへの適用、午後をSIMPLE法を用いた非圧縮性流れ、乱流の取り扱いに充てた。2日目にプログラム実習を行ない、参加者が各々1台のパソコンを占有して、午前は松尾亜紀子氏(慶応)の指導でスカラー輸送および圧縮性オイラー方程式の解法、午後は筆者が担当で非圧縮流れおよび乱流の数値計算の実際を体験した。
従来のオムニバス方式の講習会と違って、圧縮性流れを藤井氏、非圧縮性流れを荒川が担当して集中的に講義し、プログラム実習を組合せたため、効率的なCFDの実際を伝えることができたと自負している。初学者講習を目的とした場合、大学の講義と同じように、一人あるいは少数の講師による系統だった講義が望ましいと感じた。また、CFDという分野の特徴から計算による実習が望ましいが、今回は工学院大学水野明哲氏の紹介により、同一機種60台のパソコンを利用することができて、講習の実を上げることができた。不景気などの諸般の事情から他の講習会では参加者を集めるのに苦労している環境の中で、この講習会は1ケ月前に定員60名に達して満員になるという、大きな反響をいただいた。次年度も是非開催して欲しいという強い要望も寄せられ計画が進められている。
一方、後者の講習会は最先端の研究を会員に紹介・普及することを目的として企画された。並列計算機の普及は目覚ましいものがあり、その一般的なプログラム技法などが学会では話題になっている。しかし、この講習会で紹介されたのは、宇宙に存在する銀河など、重力的に相互作用する多体系の問題を解く専用並列計算機GRAPEである。この専用計算機を知ることにより、数値流体力学の分野に類似の概念の専用計算機を導入の可能性を探るという目的が仕掛けられていた。
講師は、杉本大一郎氏、蜂巣泉氏(東大教養)らであり、嶋田氏(日産)がオーガナイザーを勤めた。およそ30名の参加者にGRAPEの解説の後、流体力学としては直接的な応用が可能になりそうな渦糸系を取り上げて、GRAPE実習も行なった。渦糸法は必ずしも現在のCFDの進展の中心にあるとは言えないが、この専用計算機の利用により要素数を飛躍的に増大させて、その信頼性を増すことも可能であろう。さらには、超並列計算機に適合するNavier-Stokes方程式の新しいアルゴリズムが開発されるなら、CFDの新しい発展を期待することができるのではないかとの夢を筆者は描いている。つまり、パソコン並の大きさの専用並列計算機で現在のスーパーコンの性能を引き出したり、あるいはマイクロロボットに装着した小さなチップで流れ場を計算し、飛翔したり、小さな抗力で泳ぐなどの制御も可能にするといった具合である。
以上のように、初学者向けのものと、新しい研究分野の開拓のための2種類の講習会を開催した。両者とも計算機を利用した実習を取り込んだため、定員を大きくすることができず、部門への経済的なフィードバックをあまり大きくかけることはできなかったことが悔やまれるが、情報の発信という意味では大きな成果を上げることができたと自画自賛している次第である。
末筆ではあるが、これらの講習会にご協力いただいた関係各位にお礼を申し上げる。