2017年の四輪車生産[1]は969万台(前年比5.3%増)で,内訳は乗用車835万台,トラック122万台,バス12万台で,二輪車生産は65万台(同8.6%増)である.
2017年の新車輸出[1]は乗用車422万台(同2.4%増)で生産に占める割合は50.5%で2016年より3.4%減少した.二輪車は46万台(同7.9%増)で生産に占める割合は71%で2016年より6.4%減少した.
2017年の日本メーカー車を含めた輸入車新規登録台[2]数は35.1万台で,前年比2.0%増となった.
2017年12月末で,乗用車6 180万台,トラック1 449万台,バス23万台,原付を除く二輪車368万台になっている[3].
各国の走行中排出ガスゼロ化のニーズに伴い,EV(Electric Vehicle)への期待が高まり,技術発表や市場導入が増加した.これまでのEVの弱点であった航続距離についても,大容量のバッテリ搭載で400 kmを越える車両が多く見られた.また,量産初となる小型EVトラックが日米欧に導入された.HV(Hybrid Vehicle)については,ストロングHVシステムの出力軸に有段変速機構を追加したシステムや,自動ギヤシフトのトランスミッションと駆動用モータを組み合わせたシステム,PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)にソーラ充電機能を加えたシステムが登場した.また,48 VのマイルドHVシステムが欧州車に搭載され,広がりを見せはじめた.エンジン技術では,ストロングHVと組み合わせるエンジンで熱効率40%を超える技術が採用された.また,技術発表の段階ではあるがHCCI(予混合圧縮着火=Homogeneous Charge Compression Ignition)を採用したエンジンの実用化がアナウンスされた.他にも,FR車・FF車それぞれに10速AT(Automatic Transmission)が市場導入されるなど,コンベンショナルなパワートレーン技術にも進化が見られる.
ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)については,経済産業省・国土交通省等が推進する高齢運転者を含む交通事故対策の一環として,安全運転サポート車(愛称:サポカー)[1]の普及が進んだ.特に「サポカーSワイド」とランク付けされたものは,自動ブレーキ(対歩行者)・ペダル踏み間違い時加速抑制装置・車線逸脱警報(車線維持支援装置)・先進ライト(自動切替型前照灯等)が装備されており,普及による交通事故低減が期待される.また,2017年からNASVA(自動車事故対策機構)の予防安全性能アセスメントに車線逸脱抑制装置の性能試験[2]が加わった.新技術では,自動ブレーキでも衝突が避けられないときのアクティブ操舵支援や,後側方車両接近時の車線逸脱防止,前側方レーダーにより交差する接近車両を検知し大型ヘッドアップディスプレイで注意喚起するシステムなどが市場導入された.
ADASの普及に伴い,デバイス(カメラ・レーダー等)を共有するレベル2相当の自動運転機能(部分自動運転=ドライバー主体で操舵・加減速を自動化)を備えた車両も普及が進んだ.自動運転については渋滞中の高速道路上という条件付ながら,レベル3(システム正常時にはドライバーが運転操作に関わらないことを許容)の機能を持つ車両が発売された.但し,ハンドルから手を離した状態での運転は,現時点では法律で禁じられており,法規が整備されるまでその機能は無効とされている.国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)では,10 km/h以下での自動運転(自動駐車等)およびハンドルを握った状態での自動車線維持を可能とする国際基準改正が2017年に成立したが,手離しでの基準については審議を継続中である.自動駐車については,スマートフォンで車外から車庫入れ/車庫出しができる機能が市場導入された.
走行系技術では,電動車両の普及に伴い,回生制動によりアクセルペダルだけで常用域の制動操作を可能とする技術の普及が進んだ.走行性能面では前後輪アクティブステアリングとアクティブスタビライザの協調により操縦安定性を高めたシステムや,プレビュー制御付の電動アクティブサスペンションが登場した.また,この電動アクティブサスペンションと周辺監視センサ情報を用いて,側面からの衝突の際にボディを持ち上げて衝撃の負荷を下げるシステムを機能が提供された.
安全技術の新たな提案として,ショーモデルではあるが静止時から極低速時の二輪車が不安定な場面において自動制御によって自立するシステムの展示が各社から相次いだ.ライダーの技量が必要な低速走行時の運転支援技術として期待されている.
環境面ではEV化の波が加速している.台湾をはじめインドやインドネシアなど新興国の地場メーカーから電動車両が相次いで発売され,国内では電動二輪車を活用した社会実験がはじめられている.
また,電動二輪車や自転車と情報通信を活用したシェアリングサービスが各国で普及し,バスやタクシーよりも便利なラストワンマイルの移動手段としての地位を確立しはじめている.
環境と安全ニーズなどの高まりから,自動車への要求として,CO2排出量低減,衝突安全性向上などを目的とした,EV,xEVなど電動化,軽量化,自動運転対応など新技術適用が加速されている.
車体材料としては,鉄系のハイテン材,ホットスタンプ材など高強度鋼板や非鉄系の高強度アルミ材,チタン材の適用,非金属系のC-FRPなど樹脂材料が環境対応車から適用拡大してきている.
パワープラント系材料としては,エンジンやモータ,PCUケースなどアルミ鋳造材・鍛造材が多用され,低摺動化の表面処理技術やCAEを用いた薄肉化技術なども着実に進化している.
生産ラインでは電動系車両に対応するため,LIB電池パックの自動搬送,IoT系検査機器などが順次導入されはじめている.またレアアース(Nd,Co,Ptなど)希少金属材料などをはじめとし資源を確保するため,リサイクル・材料再資源化技術への取組みも高まって来ている.
近年,毎日のように自動運転やコネクティビティといった分野での研究・開発が話題になっている.
この分野は自動車単体ではなく,データ解析や通信,相互補完などを使って性能を追求することになるため,既存の業界を超えた協業になることとなる.このような協業に必要な領域,特にドライバーや同乗者の認知・判断への親和性や状態判定などの領域で研究が加速しデータ取得等が進んでいる.
また,ドライバーのコントロールを前提とせず機能性能を追求することで,全体の性能を持ち上げることが可能になることから,既存分野でも性能追求や分解能を上げるための研究が多くなされている.
国土交通省ホームページの鉄道車両等生産動態統計調査 月報によると,2017年1月から12月の1年間の車両生産数は,総生産数2 020両(内新幹線車両は232両)であった.また,国内向け車両が1 788両,輸出向け車両は185両であった.2016年1年間の生産数は,1 673両(内新幹線車両203両,国内向け:1 561両,輸出向け:112両)であり,前年と比べ国内向け,輸出向けともに増加した.
12月4日~12月6日に第26回交通・物流部門大会(TRANSLOG 2017)が大阪府立大学・学術交流会館で,12月12日~12月14日には第24回鉄道技術連合シンポジウム(J-RAIL2017)が新潟市・朱鷺メッセで開催され,鉄道分野の研究開発成果が数多く報告された.
在来線では,クルーズトレインのデビューが相次いだ.クルーズトレインは,2013年にななつ星in九州がデビューし,2017年には,TRAIN SUITE四季島,TWILIGHT EXPRESS瑞風,THE ROYAL EXPRESS,四国まんなか千年ものがたりなど,多くのクルーズトレインがデビューしている.クルーズトレインは,提供する旅自体にコンセプトを有しており,我が国の美しき土地の良さを車両によって引き出している.このような車両の走行区間は,比電化区が多いため,EDC方式(Electric-Diesel Combined system)や,ハイブリッド気動車方式を採用することで対応している.また,優れた乗り心地を実現するために,フルアクティブ動揺防止制御装置やフルアクティブ動揺防止装置を採用し,快適性を向上させている.
(一社)日本航空宇宙工業会によると,2017年の航空機分野の生産額は1.76兆円となった,2016年の1.68兆円より5%弱増額した.2013年から2015年までに増額基調が続いた後,2016年は一旦減額となったが,再び増額となった[1].
国土交通省航空局によると,2017年12月末の登録航空機数は2 796機となった.毎年末の登録航空機数がピークだったのは1991年末の2 882機であり,その後,減少基調となったが,2011年末の2 633機で底を打ち,以降は増加基調となり現在に至っている[2].
日本政府観光局(JNTO)によると,2017年の訪日外客数は前年比19.3%増の2 869万1千人で,JNTOが統計を取り始めた1964年以降,最多の訪日者数となった[3].成田空港の更なる機能強化のため,2018年3月13日,国土交通省・千葉県・周辺9市町・成田国際空港株式会社で構成される「成田空港に関する四者協議会」において,第3滑走路の整備,B滑走路の延伸,夜間飛行制限緩和といった機能強化に関する最終的な結論が得られ,年間発着枠を現在の30万回から50万回に拡大するための事業を実施することについて関係者間で合意された[4].
国内における航空機分野に関して,三菱重工業は2018年2月7日,ボーイング社の次世代大型旅客機「777X」向け後部胴体パネルの初号機を広島製作所江波工場から出荷し,これを記念した出荷式が行われた[5].また,川崎重工は名古屋第一工場に大型旅客機「777X」用胴体を製造するための新工場を建設し,2017年2月13日,竣工式が行われた.自動で穿孔位置を認識して作業を行うロボットや,打鋲の対象範囲が拡大したオートリベッター(自動打鋲機)など,画像センシング技術や制御技術を駆使した設備を導入して自動化を推進している[6].
アメリカ,ボーイング社は,737 MAXファミリー最初の機種である737 MAX 8の商用運航の認証を米連邦航空局(FAA)から取得したことを,2017年3月9日に発表した.現行の単通路機で最も燃費の良い機種に比べて,燃料消費量とCO2排出量はさらに14%向上する[7].一方,エアバス社は2017年11月21日,ワイドボディファミリーであるA350-900の胴体を延長することで,40人以上多くの乗客を運ぶことができるA350-1000が,欧州航空安全庁(EASA)および米連邦航空局(FAA)より型式証明を取得したことを発表した[8].
世界最大の総2階建てジェット旅客機であるエアバスA380型機に関して,ANAグループは,2019年春より東京=ホノルル線へ導入するA380型機の特別塗装デザインと,愛称「FLYING HONU」の決定を2017年3月6日に発表した[9].
宇宙技術に関しては,宇宙飛行士の金井宣茂氏の国際宇宙ステーション(ISS)第54次/第55次長期滞在が関心を集めた.金井氏らが搭乗するソユーズ宇宙船は,日本時間12月17日午後4時21分,カザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ,12月19日午後5時39分にISSへドッキング,午後7時54分にソユーズ宇宙船とのハッチが開かれ,長期滞在が始まった.約6ヶ月間滞在し,2018年6月3日にISSから分離する予定である[10].
現在運用しているH-IIAロケットの後継機として,柔軟性・高信頼性・低価格の3つの要素を実現することを目指し開発が進められているH3ロケットは,2020年度に試験機の打ち上げが予定されている[11].H3ロケット1段エンジン(LE-9)実機型#1-1燃焼試験の実施結果が,9月5日に開催された,文部科学省科学技術・学術審議会宇宙開発利用部会において報告された[12].
2017年の世界の新造船建造量(竣工量)は2016年より1.6%程度減少し,約6 537万総トン(2 385隻)であった.日本は約1 304万総トン(489隻)とシェア19.9%で,中国の36.4%,韓国の33.9%に次ぐ世界第3位であった.一方,2017年の世界の新造船受注量は,2016年の約1 880万総トン(1 044隻)から約4 266万総トン(1 288隻)に2.2倍以上も増加している.そのうち,日本は約229万総トン(192隻)とシェア5.4%で,韓国(43.6%),中国(35.4%)に次いで,こちらも第3位であった(IHS “World Shipbuilding Statistics”の集計による).
2016年の受注量がNOx排出量削減の三次規制対応に関連して大幅に減少していたこともあり,2017年の受注量はやや復帰している.ただし,2015年の受注量が約7 720万総トン(2 340隻)であり,2017年はその55%程度に留まっている.また,日本の受注量のシェアは,2015年に28.8%,2016年に13.4%であり徐々に低下しており,環境対応技術や生産技術の更なる向上が必要とされている.
液化天然ガス(LNG)を燃料とする船舶の安全基準を定めた国際ガス燃料船コード(IGFコード)が2017年1月に発効した.LNGは従来の燃料油と比べて引火点が極めて低く,火災のリスクが高まることから,ガス機関やその関連機器の設置区画や燃料タンクの設置場所などの要件が詳細に定められた.また,船舶バラスト水規制管理条約が9月に発効し,船体の安定性を維持するためのバラスト水を介して生物の本来の生息地以外の海域への移入・繁殖による生態系や海洋環境への悪影響を防止するため,対象船舶は国際海事機関(IMO)において定められた設置期限までにバラスト水処理設備を設置することが義務化された.
さらに,2016年に決められた船舶燃料油中の硫黄分濃度を現行3.5%以下から0.5%以下とする規制(2020年発効)を着実に実行するための詳細な検討が行われるとともに,この規制に適合する代替燃料油やLNG等の代替燃料の利用技術や排気ガス洗浄装置の技術開発などが活発に行われた.
その他,国際海事機関(IMO)において議論された内容としては,自動運航船の安全に関する検討や燃料電池船の国際規則の策定,国際海運からの温室効果ガス(GHG)削減戦略の検討を開始したことなどが挙げられる.
日本エレベーター協会の2017年調査[1]によると2016年度の国内の昇降機全体の新設台数は27 348台(前年度28 587台)であり,2015年度以降減少傾向にある.新設台数の内訳は,エレベーターが23 618台(前年度24 343台),エスカレーターが1 459台(前年度1 735台),小荷物専用昇降機が2 169台(前年度2 375台),段差解消機が102台(前年度134台)であった.建物の用途別に見ると,住宅,商業施設,工場などの昇降機が増加しているのに対し,病院・福祉,事務所などは減少した.
国内の講演会では,シーブや振れ止めなどを考慮した各種ロープの挙動解析やエスカレーターの駆動力や耐震解析に関する研究,センシングに関する研究など,昇降機の安全な運転を支えるための構造に関する研究が発表された.また,かご内の騒音や円滑な輸送など,人間がストレスを感じることなく安心して利用できるための研究も発表された.(2018年1月:技術講演会“昇降機・遊戯施設の最近の技術と進歩”).また,画像解析を活用したドアセンサ[2]や電子安全システム[3]など,情報,電子分野の技術を昇降機の安全性向上に適用する開発が進められている.
経済産業省の生産動態統計(確報)による,2017年1月~12月の荷役運搬機械(運搬機械からエレベータ,エスカレータを除いた)生産額は,3 795億円(2016年度比3.9%,153億円減)であった.このうち,クレーンは2016年度比7.2%増,巻上機は5.6%減,コンベヤは6.6%減,機械式駐車装置は2.7%増,自動立体倉庫装置は11.9%減である.
(一社)日本産業車両協会の調査による,2017年1月~12月のフォークリフト生産台数は11.4万台で,2016年度比4.0%増,輸出を含めた販売台数は6.3%増,国内販売台数は4.2%増の状況である.
2018年は,内外政治面に懸念材料はあるものの,先行きの景気拡大期待は根強いため,維持・更新,省力化・合理化を中心に,堅調な設備投資が続くと考えられる.
2016年度の物流システム機器の総売上金額は,2015年度の4 212億円から9.8%増の4 626億円となった.一方,売上件数も2015年度の123千件から137千件へと増加した(前年度比10.6%増).
機種別に見ると,自動倉庫が997億(前年度比4.2%減),コンベヤが1 167億(前年度比13.7%増),台車関連が899億(前年度比16.9%増),棚が303億(前年度比7.1%増)となっている.
景気回復の進展により,一部の企業業績が好転することで設備投資への意欲が増大するなか,2015年度の増加基調が継続した結果,2016年度も売上高が増加したものと推察される.
売上金額を領域別に見ると,海外向けは2.6%増加し,クリーンルーム向けも0.3%の増加となった.業種別に見ると「電機・精密機器」に対する売上の比率が依然として高水準となっている.
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