本会機素潤滑設計部門(以下,本部門)が開催した第7回日韓機素潤滑設計生産国際会議(以下,ICMDT2017)(4月,韓国・済州島),ならびに本会年次大会(9月,埼玉)において,関連するオーガナイズドセッションが設置され,研究発表が行われた.ICMDT2017は本部門と韓国機械学会(KSME)共催の国際会議であり,2年に一度日韓交互の会場で開催されている.またこの会議は,毎年開催されている機素潤滑設計部門講演会も兼ねている.ICMDT2017におけるセッションで機械設計・運動機構に関するものは,Machine Design/Machine ElementsとKinematic Design and Roboticsの2つのセッションであるが,これらのセッションでは34件の講演があった.この講演会ではポスターセッションも同時に開催されたが,関連する研究は約30件ほどであった.またこの講演会では,東京都立産技高専 深谷直樹准教授による「Development of Assistive Technology using Linkage Mechanisms」と題する基調講演[1]があり,ロボットハンドやゲタロボット,歩行アシスト装置等,リンク機構を高度に発展させた事例として紹介された.年次大会におけるセッションでは,受動対偶を介して直列結合される1自由度脚機構ユニットからなるムカデ型多脚ロボットの歩行制御[2],差動ネジ駆動機構の力学的な分類と統合[3],電磁アクチュエータとトグル機構を用いた高速・高分解能直動インチワームメカニズム[4],受動クローラによる階段昇降機構のステップフィールドへの応用[5],力覚提示装置用3-USR形ハイブリッドパラレル機構の設計[6],人体の脚部と腰部の構造を模擬した受動機構による2足歩行[7]など,機械設計に関する10件の報告が行われた.さらに年次大会では広島大学 高木健准教授に「情報処理の機能を持つ機構」と題する基調講演[8]を行っていただいた.この基調講演に関連する先端技術フォーラムでは「ロボット・産業機械における最新の機構設計」というテーマで,各分野の専門家による講演があり,ソフトロボットの設計論[9],メカトロ機器開発の上流設計[10],自動車機器における機構の応用事例[11]等,最新の設計論及び設計事例の紹介がなされた.
次に海外および国内で開催された国際会議の動向をいくつか紹介する.アメリカ機械学会(ASME)の関連では,ASME 2017 International Design Engineering Technical Conferences(IDETC)and Computers and Information in Engineering Conference(CIE)(8月,アメリカ・オハイオ州クリーブランド)が開催された.また,IFToMM(International Federation for the Theory of Machines and Mechanisms)の関連では,2nd International Symposium on the Education in MECHANISM AND MACHINE SCIENCE(ISEMMS2017)(11月,スペイン),International Symposium on Robotics & Mechatronics 2017(ISRM2017)(11月,オーストラリア),第23回シンポジウム(6月,東京),が開催された.2016年度同様,ASMEでは近年Compliant Mechanism(部材の変形を利用した柔なメカニズム)に関する研究が活発である.2017 IDETC/CIEにおける機械設計・運動制御に関連するサブ会議においても,Compliant Mechanismに関するセッションでは1セッションあたり11~12テーマのセッションが2つ設けられ,多くの研究報告がなされており,さらには関連するワークショップも開催されている.
国際会議に関しては,当部門主催の動力・運動伝達系国際会議MPT2017(2017年3月)が京都テルサで開催され,海外13ヶ国・参加者251名と成功裏に終了した.日韓合同の第7回機素潤滑設計生産国際会議(ICMDT2017,2017年4月,済州)が開催された.また,International Design Engineering Technical Conferences and Computers and Information in Engineering Conference(ASME,2017年8月,クリーブランド),The 7th International Conference on Gears(VDI,2017年9月,ミュンヘン)が開催された.
論文発表について,日本機械学会論文集には,トライボロジーに関連して9件の報告があった.そのうち「ショットピーニングを施した軸受鋼の異物混入潤滑下における転がり疲労挙動評価」[2]をはじめとして転がり疲れに関する報告が3件,AE法を併用したDLC膜の繰返し荷重試験を扱った報告[3]など,材料の疲労寿命に関連する論文が4件掲載されていた点が眼を引いた.Mechanical Engineering Journalには,Ni-P合金の摩耗[4]やPEEK材と鋼の間の潤滑特性[5]など,摩耗や摩擦を直接扱った報告が4件あった.Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturingには,高いアスペクト比を有する表面構造により疎水性を示す寿命が伸びるという報告[6]があったが,それを除くと摩擦圧接や工具加工面の摩擦係数低減の効果に関する研究など加工をメインにしている報告などが目につき,トライボロジーが中心となっている報告は少なかった.これらの3誌に共通の特徴として,磁気ディスク,ポンプ,人工関節,ドリル,CVT,歯車など実用的な製品を具体的に取り扱っている報告が多く見られた.
Web of scienceに採録されている2017年の論文で,トライボロジーや摩擦に関する論文を俯瞰すると,テクスチャリング,ナノ材料,イオン液体を扱った論文が多く引用されている傾向があるようである.
Naoki Fukaya(Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology), “Development of Assistive Technology using Linkage Mechanisms”, Proc. of The 7th ICMDT(2017), K-TH-1-2.
Aizoh KUBO, Akio UEDA, GEAR GEOMETRY AS FUNCTION OF PRODUCTION METHOD - PROPOSAL OF INVO-PLANAR BEVEL GEAR FOR GOOD PRODUCTIVITY -, Proc. of The JSME International Conference on Motion and Power Transmissions MPT2017 Kyoto(2017-3).
Ichiro MORIWAKI, Shunsuke HASHIMOTO, Morimasa NAKAMURA, CONTACT-BENDING-FATIGUE(CBF)TESTS ON HIGH STRENGTH STEELS FOR GEARS - EFFECTS OF BENDING STRESS ON PROPAGATION OF CRACKS INITIATED AT PITS DUE TO CONTACT -, Proc. of The JSME International Conference on Motion and Power Transmissions MPT2017 Kyoto(2017-3).
T. Akagaki, Y. kuraoka, F. Takeo, K. Furuya, M. Kawabata, Effects of PEEK's surface roughness on seizure behaviors of PEEK/steel pairs under oil-lubricated sliding contacts, Mechanical Engineering Journal, Vol.4, I No.5(2017), DOI: 10.1299/mej.17-00015.
N. Phan, N. Moronuki, Fabrication of high aspect ratio silicon micro-/nano-pore arrays and surface modification aiming at long lifetime liquid-infused-type self-cleaning function, Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing, Vol.11, No.2(2017), DOI: 10.1299/jamdsm.2017jamdsm0013.