2015年のパソコン(PC)総出荷台数は約2億6 666台と対2014年比9%減と,Windows XPリプレース需要の反動とタブレット機やスマートフォンを選択する消費者の増加にともない,大幅なマイナス成長となった.
2015年の磁気ディスク装置(HDD)の生産台数は対2014年比17.5%減の約4億7 027万台であった.これはアプリケーション別で見るとエンタープライズ市場がほぼフラットであり,パソコン市場向けが大きく低下,そして外付け市場およびCE市場向けも低下しており,パソコン市場の低迷とSSDの浸食が主な理由として挙げられる.ニアラインと呼ばれるデータセンター向け大容量高信頼性HDDについては,7 200 rpm中心であるが低消費電力対応などから5 400 rpmの需要がおよそ25%前後を占めており,この割合は最近では上昇傾向にある.また,HDD内にヘリウムを封止したドライブでも低消費電力がメリットの一つとなっており,“コールドストレージ”や“アイスストレージ”の記録保存媒体としての需要は増加傾向である.
2015年のSSD(Solid State Drive)市場は2014年比で約12.1%増の7 993万台と堅実に増大している.SSDのコストパフォーマンス向上と認知度が進んだことからエンタープライズ向け需要は大幅な増加,PCOEM向けはPC生産が減少したこともあり,SSD搭載モデルのラインナップは増加しているものの市場を押し上げるには至っていない.2016年のSSD市場は約18.3%増の約9 460万台が見込まれている.
2015年の光ディスク装置(ODD)の生産台数は約1億6 407万台で対2014年比24.3%の減少であった(統計はテクノ・システム・リサーチ社による).
2015年の事務機械総出荷見込みは,1兆9 483億円(対前年比103.5%)であり,昨年に引き続いて増加となった.国内外別では,国内が3 666億円(同95.0%),海外が1兆5 817億円(同105.7%)であった.事務機械の7割近くを占める複写機・複合機とページプリンタの総出荷額は,それぞれ1兆41億円(105.0%)と2 842億円(94.9%)であり,これらの次に出荷額の大きいデータプロジェクターの総出荷額は3 589億円(同107.8%)であった.円安の影響もあり,海外市場向けの増加が大きかった.しかし,2016年度の総出荷額は,いずれの品目も微減して1兆8 993億円と予測されている.(以上(社)ビジネス機械・情報システム産業協会資料)
技術的には,電子写真やインクジェットを中核とするデジタル画像形成技術はほぼ成熟しているが,近年これらを3Dプリンタへ応用する研究開発が盛んになっている.Society for Imaging Science and Technology主催,日本画像学会共催で30年にわたって開催され,電子写真やインクジェットの研究開発を主導してきたInternational Conference on Digital Printing Technologiesが2016年からPrinting for Fabricationに衣替えされることが象徴的である.なお,この分野の研究開発は主としてヨーロッパが主導しているが,我が国の画像技術に関する圧倒的な技術力を生かした取り組みが強化されることが望まれる.
経済産業省の生産動態統計によると,2015年の冷蔵庫・洗濯機やエアコンなどの白物家電の国内出荷額は,2014年まで10年継続していた増加傾向が止まり,約2.2兆円と前年比93.0%と大きく減少した.その背景としては,2014年4月の消費税アップに伴う駆け込み需要の反動が一つの要因であり,冷蔵庫が約82%,洗濯機が約72%と大きく出荷額が落ち込むとともに,台数ベースよりも金額ベースが2%程度ダウンしたことが大きい.一方,エアコンは出荷ベース95.1%に対し金額ベース100.6%と,省エネ・快適性・空気清浄機能に優れたモデルの比率があがった.
また,省エネ家電の導入が進んでいるものの,家庭でのエネルギー使用量は増加(約15%:1990年比)していることを背景に,太陽光発電や燃料電池の創エネ機器,蓄電池・電気自動車などの創エネ機器,これらを制御するHEMSの普及が期待されている.電力自由化の流れの中で,スマートメーターの導入が始まったことが,一つのトピックとしてあげられる.
超高齢化社会の中で,より健康で過ごすために,病気の早期発見・治療・回復の実現が求められる.そのためには,診断や治療技術においては,簡便性,低侵襲性・低刺激の実現が必要である.簡便性は,医師の負担の軽減のために機器の自律度(Degree of Autonomy, DoA)が高いことや機器により状態の予測が可能であること,医師や患者のためには処置の短時間化や,医療が高機能病院から日常・在宅・ウェアラブル化のようにロケーションフリーとすることであり,低侵襲性は手術での切開量や時間・センサなどの使用時間や頻度などを小さくすることである.また,診断技術においては精度や信頼性の向上と,ウェアラブル化のような高モビリティが求められ,モバイルヘルスケアの実現が求められる.特に精度や信頼性の向上では,センサ感度の向上や,取得情報の増大化・多様化,また熟練医師の経験の代替えとなるものが求められる.
以上の観点から平成27年度の研究を見ると,内視鏡下の手術用鉗子へセンサを装着し,力情報から腫瘍の位置を高精度に把握することや粘弾性などの特性も測れる取り組みがあり,精度や信頼性の向上が進められている.また手術ロボットにおいても位置決めメカニズム付きの外科ロボットや手術ナビゲーションシステムの開発も行われており,DoAの向上が進められている.また,多様な情報の取得に関連しては,触覚に関連する基礎研究,呈示,感度のコントロールなどに関連する研究なども行われている.ヘルスケアとしては,慣性センサによる歩行や膝関節回転中心などの測定などが行われており,ビッグデータも関連する転倒経験判別のための大規模実験なども行われている.また,転倒防止アシストロボットや白杖による路面の滑りやすさ推定などの研究発表も行われ,予測とも関連している.転倒は寝たきり等につながる危険要因であり,このような病気予防の観点は今後の医療の発展に重要な要素であると考える.
知能化機器は,産業生産力の向上や豊かな社会への貢献が期待される分野である.近年,IoTや人工知能が注目され,既存の機械の付加価値として期待されている.一般に,IoT(Internet of Things)「モノのインターネット」とは,インターネットに接続されたセンサ群の総称であり,マイクロコンピュータの小型化・低価格化に伴い,幅広い分野への応用が行われはじめている.この背景として,インターネット回線の高速化に加え,クラウド環境の充実によって扱えるデータ量が飛躍的に拡大したことがあげられる.すなわち,抽出した大規模データを蓄積し解析できる基盤が確立し,多種多様なデータ計測の有用性が高められたといえる.
ここで,センサデバイスにより安価に取得したデータをどのように解析し,活用するかが鍵となる.これまでにもデータマイングなど,統計学を駆使したデータ解析手法が数多く研究されてきた.今後は,深層学習(Deep learning)など機械学習のアプローチがこの情報処理分野を牽引すると期待されている.これまでの深層学習の主なターゲットは,画像処理や音声処理などであった.一方,機器の知能化に対しては,センサにより獲得した時系列情報についても取り扱う必要がある.例えば,ユーザの行動パターンや思考,機器の使用環境など,総合的な事象に対する機械学習の研究が求められる.
これらは非常にチャレンジングな研究領域である一方,幅広い応用に対するブレークスルーとなる可能性を秘めている.このような膨大かつ冗長なデータを扱う上で,これまでのオフライン学習から逐次修正を行うオンライン学習へのパラダイムシフトが不可欠であると考える.このように,既存の機器の付加価値を高める知能化機器は,機械工学のみでなく,人工知能分野を軸とした新しいアプローチが求められている.
カット媒体を取り扱う技術は複写機やプリンタ,ATMといった省力化機器のコア技術として発展してきたが,媒体レス化に伴い,従来機器の更なる処理の高速化に加え,媒体レス化へ対応できる新たな機器の開発が必要となっている.一方,長尺の連続媒体を取り扱うウェブハンドリング技術は印刷技術を用いて電気回路やセンサなどを製造するプリンティッドエレクトロニクス(PE)への適用が期待され,より薄いフィルム紙を高信頼に搬送して巻き取る技術の開発が必要となっている.[1, 2]
これらの実情を反映して,学会発表もカット媒体に関する講演の件数は減り,ウェブハンドリングに関する発表が大きな割合を占めつつある.さらに海外における講演会では,ウェブの「搬送」や「巻き取り」といった技術だけでなく,「フラッター」,「スリッティング」,「ラミネート」などの発表件数の割合も増加しつつある.2016年3月に開催された情報・知能・精密機器部門講演会における柔軟媒体ハンドリングのセッションでは,全発表件数8件の内,カット媒体に関する講演が2件,ウェブハンドリングに関する講演は6件であり,カット媒体に関しては,プリンタの高信頼化と冊子の捲り技術の講演,ウェブハンドリングに関しては,巻き取り技術に関する講演が4件,搬送と新たな印刷に関する講演が各々1件ずつであった.
今後の柔軟媒体ハンドリング技術は,従来技術の高信頼化に加え,PEへのカット媒体ハンドリングの適用が必要でもありカット媒体,ウェブのいずれの分野においても,さらに薄く,長く,広いフィルムや,電気回路やセンサなどが印刷されたフィルムを高信頼に取り扱うハンドリング技術の研究が進むであろう.(図1)
国内IT市場の中で,ネットワークセキュリティ市場の2014年度実績は3 951億円で,2020年まで平均4.8%で成長すると見込まれている[1].成長要因のひとつはIoT(Internet of Things)の登場である.IoTは電力・ガスなどの社会インフラ,工場などの製造設備,ヘルスケア,ホームネット,車載分野などで広く活用が見込まれており,従来別々だった情報系と制御系のシステムをつなぐため,サイバーアタックの懸念を払拭する必要がある.
社会インフラ分野で,つながることにより発生したサイバーアタック事例として,2015年12月にウクライナで起きた大規模停電が挙げられる[2].この原因は,電力供給会社の情報系システムで使用されていたPCが,標的型攻撃を受けてマルウェアに感染し,そのマルウェアが制御系システムを攻撃して,制御機器のシステムファイルを削除したためと見られている.また研究発表ではあるが,車載分野でも2015年8月に自動車のハッキング手法も報告されている.この報告では,携帯電話網に接続されたカーナビをハックし,車載システムが提供する機能を遠隔から操作する映像が公開された[3].これにより米国の自動車会社は140万台のリコール(回収・無償修理)を行うことになった.
このような背景の下に国内では,2015年11月に戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の新課題として「重要インフラ等におけるサイバーセキュリティの確保」が取り上げられた[4].同プログラムは,電力,鉄道,ガスなどの社会インフラを対象とし,セキュリティ設計とインシデント対応の両面からサイバー攻撃側の技術・手段の進化に対抗する取り組みを行う.本プログラムの推進により国産のセキュリティ技術の強化が期待される.
Brain Computer Interface(BCI)にかかわる現実的なシステムが散見される.例えば,運動をイメージすると脳機能の局在性により脳内運動野内の特定部位が活性化する.この活性状態をNIRS(Near-InfraRed Spectroscopy)でリアルタイムに計測し,その活性度を視覚的情報としてイメージしている本人に提示することにより,視覚的なバイオフィードバックが構成される.これにより,本来,実際的な運動を伴わないので,運動の学習が難しいと考えられる運動のイメージに対しても良好に学習できるシステム[1]が提案されている.動作意思から直接的に義手などを動かすシステムや運動イメージと実際の動作を結び付けるトレーニング手法として期待される.また,自動車の乗り心地など客観的計測値のみのモデル化では十分に予測できない官能評価領域のモデル化も物理的な乗り心地と人間が感じる脳賦活の状態をNIRSで観測し,その関係を対応付けることにより人間が感じる快・不快に関するモデル化手法の一つが示された[2].
人間の動作をパワーアシストする装置などで,装着者が危険な行為に及んだ場合などに強制的に危険を回避されるために運動錯覚を応用した認知アシストシステム[3]が提案されている.皮膚上から関節周辺の拮抗筋の腱に振動刺激を与えると関節角度・運動の感覚に変化が生じる錯覚に着目し,積極的にこの錯覚を用いて機械から人間への情報提示を行う.また,人間の速度変化知覚における視覚と触覚の影響についての研究[4]では,一般的には速度変化の弁別は視覚による感度が高いが,運動の速度によっては触覚による知覚が効果的であることが見いだされた.こうした検討により,今後,パワーアシストなどの人間と機械を結び付ける触覚を考慮したインタフェースの研究・開発が加速していくものと考えられる.
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