日本エネルギー経済研究所によると,2014年度の一次エネルギー国内供給(消費)は石油換算474百万t(Mtoe)で,前年度比−3.1%は東日本大震災直後の2011年度(−4.5%)以来の大きな落ち込みであった.年度半ば以降の原油価格急落による消費押し上げ寄与があったものの,消費税増税による景気後退,前年度に比べ涼しい夏・暖かい冬,夏・秋の多雨などが影響した.原子力は発電所が年度を通じて稼動せず,1965年度の導入後初めて0となった.これを代替する火力発電では,高コストな石油等火力がいっそう減少,石炭火力も延期していた検査の実施などで震災後の高稼動が一服した一方で,LNG火力での燃料消費が過去最高を更新した.これらにより,石炭の一次消費は124 Mtoe(−1.3%),石油は最終消費での減少をあわせ199 Mtoe(−7.2%)となった.天然ガスは0.4%増加して119 Mtoeと,初めて全体の4分の1を超えた.消費量が減る中で低炭素エネルギーの比率が増したことで,二酸化炭素排出は震災後で初めて減少した(−3.7%).
2015年度も,もたつく景気回復,さらに暖かい冬・涼しい夏などが影響した.2月までの累計で,一次エネルギー消費は前年同期比−2.2%となった.石油,石炭が引き続き減少したほか,震災後に増加を続けてきた天然ガスが−6.5%と大きく落ち込んだ(それでも震災前より1割以上多い).原子力では,川内原子力発電所の2基に続いて営業運転を再開した高浜発電所の2基が,司法判断により運転を停止するという初の事態が発生した.再生可能エネルギーは急速に導入が進んだものの,それがゆえに標準家庭の負担は2016年度には年8 100円まで膨らむ.2015年7月に決定した「長期エネルギー需給見通し」の冒頭には「エネルギー政策の要諦は,安全性を前提とした上で,エネルギーの安定供給を第一とし,経済効率性の向上による低コストでのエネルギー供給を実現し,同時に,環境への適合を図ることにある」と記されている.各種エネルギーをバランスよく活用する現実的な取り組みが求められている.
2015年12月末現在の事業用発電設備は合計24 449万kWで,その内訳は表1に示すように,火力15 368万kW(構成比62.9%),原子力4 205万kW(17.2%),水力4 814万kW(19.7%)などである.2015年中に完成した主な事業用火力発電設備は表2に示すように,2地点となっている.
2015年9月末現在の自家用発電設備は合計6 085万kWで,その内訳は表3に示すように,火力4 945万kW(構成比81.3%),新エネルギー等(風力・太陽光)728万kW(12.0%),水力408万kW(6.7%)などであり,2015年は新エネルギー等の発電設備が増加している.
今後計画されている火力発電設備(2015年度供給計画に挙げられているもの,または2015年末時点で環境アセスメント手続き実施中・実施済のもの)のうち主なものは表4に示すように,38地点,3 803万kWである.そのうち,燃料別出力割合はLNG(Liquefied Natural Gas)・都市ガスが約58%,石炭が約40%,その他が約2%となっている.
事業用発電設備においては長期的な電力の安定供給,エネルギーセキュリティーの確保,地球温暖化防止など環境負荷低減の観点から火力,水力,原子力を中心とした電源のベストミックスが進められてきた.このような中,LNGを燃料とする発電設備ではコンバインドサイクル発電(CC)が,石炭を燃料とする発電設備では超々臨界圧汽力発電(USC)が導入されており,現在,CC,USC,石炭ガス化複合発電(IGCC)の建設が計画されている.
LNGを燃料とする発電設備では,コンバインドサイクル発電においてさらなる高効率化が図られ,1 600℃級ガスタービンによる熱効率約60%(低位発熱量基準)を達成する発電設備が運転を開始した.また,次世代の高効率ガスタービンの実用化を目指し,国家プロジェクトとして1 700℃級ガスタービンの要素技術開発も進められている.
一方,石炭を燃料とする発電設備では,超々臨界圧プラントの蒸気条件を700℃級まで高温化させた先進超々臨界圧プラント(A-USC: Advanced Ultra Super Critical)の実用化要素技術開発が国家プロジェクトとして進められている.また,石炭ガス化複合発電では,海外で運転されている酸素吹き方式よりも送電端効率の良い空気吹き方式の開発が進められており,商用化に至る最終段階である25万kW級プラント(1 700トン/日級)の実証試験が2013年3月に終了,2014年度から商用プラントとして運用を開始し,54万kW級プラントの実証も計画されている.また,酸素吹き方式においても16.6万kW級プラント(1 180トン/日級)の実証試験が計画されている.
国連エネルギー統計2012によると,2012年における世界の火力発電設備容量/発電電力量は,36.9億kW/15.7兆kWhであり,それぞれ2011年比で2.4%/2.1%増加した.
近年,主にアメリカ・ヨーロッパにおいて石炭火力に対する規制が強化されている.
アメリカでは,2015年8月に同国初となる既設火力と新設火力(既設ユニットの改造含む)に対するCO2排出規制が公表された.この規制では,発電部門からのCO2排出量を2030年迄に2005年比で32%削減することを見込んでおり,各州はそれぞれに設定された排出基準を満たすべく削減計画を作成する必要がある.発電事業者の対応として,環境負荷の高い老朽石炭火力の閉鎖が必要であることから,石炭業界や産業界が提訴する等反発している.
ドイツでは,CO2削減策として褐炭火力の閉鎖を促進する環境リザーブ制度が2016年10月から導入される.容量リザーブ枠に移管された発電所は需給逼迫時のみ稼働する予備力とされ,移管から4年後には閉鎖される予定である.イギリスでは,2015年11月,CO2削減を進めるにあたって,CCS設備を伴わない限り石炭火力を2025年迄に全廃する方針が発表された.
中国では,2015年12月に「石炭火力の汚染物質排出量削減と省エネのための設備改造に関するガイドライン」が発表された.この中には石炭火力のNOx・SOx・煤塵の排出基準をガス火力並にすることや発電効率向上が盛り込まれており,石炭火力約7.9億kW(同国石炭火力設備容量の約8割に相当)の環境対策設備追加設置や改造による発電効率向上を2020年迄に完了する必要がある.
わが国の原子力発電は,2015年12月現在,改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を含む沸騰水型軽水炉(BWR)が22基,加圧水型軽水炉(PWR)が21基の計48基が稼動している.また,3基が建設中であり,8基が計画中である.表5に,最近5年間の原子力発電所の基数,合計出力及び年平均の設備利用率の推移を示す.2015年は,九州電力の川内原発1,2号機が営業運転を再開し,平均設備利用率は1.2%となった.他の原子炉の運転再開についても,各電力会社からの申請に基づき,新規制基準に基づく安全性審査が進められている.一方,日本原電,関西電力,中国電力,九州電力の5基の原子炉(BWR:2基,PWR:3基)が廃止された.
高温ガス炉は,(国研)日本原子力研究開発機構(原子力機構)の高温工学試験研究炉(HTTR)の再稼働に向け,新規制基準への適合性確認のための審査が進められている.また,国,大学,原子力メーカー,ユーザー等で構成される高温ガス炉産学官協議会が設立され,高温ガス炉の開発についての検討が開始された.国際熱核融合実験炉(ITER)計画では,日本が担当する機器の調達活動などによりITER建設が進展し,幅広いアプローチ(BA)活動も,原子力機構(現:(国研)量子科学技術研究開発機構)においてJT-60SAの建設が順調に進展するなど着実に進められている.
高速増殖炉については,高速実験炉「常陽」は,損傷した炉心上部機構の交換等の復旧作業が2014年に完了し,2015年6月に燃料交換機能等が全て正常に復帰した.また,2013年12月に施行された新規制基準への着実な対応が進められ2016年度中には新規制基準に適合させた変更申請を行う予定である.原型炉「もんじゅ」(28万kWe)は,施設・設備の維持管理を行うと共に,保守管理上の不備に伴う原子力規制委員会からの保安措置等の命令(2014年5月)に対して原子力機構は2014年12月報告書を提出したが,提出後の保安検査での確認で規制委員会から保安規定違反等の指摘を受けたため,保安措置命令に対するこれまでの対応を抜本的に見直して前回の報告書の改訂版を2016年夏に報告した.一方,2015年11月に原子力規制委員会は文部科学大臣に対してもんじゅ運営組織に関する勧告を行い,文部科学省は2015年12月からもんじゅ在り方検討会を開催して勧告に関する議論,検討を進め,検討会は2016年5月に検討結果の報告を行った.2014年6月には,ナトリウム冷却高速炉としてフランスが開発を進めているASTRIDの設計および関連する研究開発に原子力機構,MHI(三菱重工業),MFBR(三菱FBRシステムズ)の三者が実施機関として参加・協力する取決めが締結され,協力範囲の拡大を行いながら開発協力を進めている.
日本原燃(株)が事業展開を進めている六ヶ所再処理施設では,主工程が完成し,ガラス固化体を製造するガラス溶融炉試験も終了した.また,2014年1月より新規制基準への適合性確認を受けており,竣工に向けた対応を進めている.ウラン濃縮工場では,新型遠心機を導入し,2012年3月に生産運転を開始しており,順次生産能力を拡大していく予定である.MOX燃料工場は,建設工事中である.
原子力機構の東海再処理施設では,プルトニウム溶液と高放射性廃液をより安定な形で貯蔵するため,これらの溶液の固化・安定化にかかる取り組みを進めている.また,高放射性廃液のガラス固化技術の高度化に関する技術開発等を実施している.プルトニウム燃料技術開発施設では,MOX燃料に関する研究開発,核燃料施設の廃止措置やプルトニウム系廃棄物の処理に関する技術開発等を実施している.
世界原子力協会(WNA)の集計によると,世界の原子力発電設備容量は2016年1月1日現在で運転中439基,3億8 254.7万kW,建設中66基,7 033.5万kW,計画中158基,1億7 921.5万kWである.
2015年に世界では新たに10基,949.7万kWが送電開始しており,このうち8基が中国の原子炉であったほか,韓国とロシアで1基ずつとなっている.また,新たに7基,811.2万kWの原子炉が本格着工したが,ここでも6基までが中国のもので,残りはアラブ首長国連邦(UAE)の1基となるなど,前年に引き続いて中国が世界全体の原子力発電開発を牽引する結果となった.中国は運転中原子炉30基の合計出力が2 684.9万kWに拡大し,国別の総設備容量では韓国とロシアを一気に抜いて,米国,フランス,日本に次ぐ世界第4位に浮上した.
中国で送電を開始した原子炉はいずれも第2世代およびその改良型PWRだが,新規着工した6基のうち3基は第3世代の技術特性を有するといわれる「華龍一号」設計の実証プロジェクト.同設計は中国が知的財産を有する輸出用主力設計の1つと位置付けられており,英国やアルゼンチンで将来的に建設する原子炉への採用も概ね決まっている.これは「中国製原子力発電設備の海外進出加速」という同国政府の方針に則したもので,今後,同国が本格的な原子炉輸出国となり,世界の原子力市場で一層躍進していくことが予想されている.
一方,原子力先進国の中ではロシアにおける高速炉開発の動きが顕著であった.2015年12月に送電開始したベロヤルスク4号機は電気出力80万kWの高速炉「BN−800」だが,同じサイトではすでに60万kWの高速炉が3号機として1981年から稼働中.120万kWの5号機の建設も計画されている.また,研究開発段階炉として熱出力15万kWの多目的高速中性子研究炉(MBIR)が2015年9月にディミトロフグラードの国立原子炉科学研究所で正式着工したほか,電気出力10万kWの鉛ビスマス冷却高速実験炉(SVBR-100)の建設も2017年の完成を目標に計画中となっている.
家庭用燃料電池エネファームの2015年度の販売台数は約4万台と前年よりも約2千台増加し,国からの導入支援補助金は固体高分子形が2018年度まで,固体酸化物形が2020年まで支給される計画となった.固体酸化物形は,マイクロガスタービンと組み合わせた加圧ハイブリッド型250 kW級システムが実証運転され,本システムの2017年市場投入に向けた技術開発も進められている.りん酸形,溶融炭酸形もそれぞれ数百kW級,数MW級定置用システムが内外で着実に導入された.燃料電池自動車に関して2015年度販売台数は700台とされており,水素ステーションの2015年度末の設置数は80カ所である.経済産業省を中心に取り纏められた「水素・燃料電池戦略ロードマップ改訂版」では水素ステーションを2025年度までに320カ所整備する計画である.
太陽光発電協会(JPEA)によると,日本における2015年の太陽電池出荷量は12 392 MW(前年比89%)であった.このうち,国内向け出荷量は10 163 MW(前年比82%)と全体の8割強であった.全出荷量は前年と比較してやや低調であったが,対米輸出量の増加が目立ってきている.
種類別としては,シリコン結晶系太陽電池が11 454 MWと出荷量全体の約9割を占め,シリコン単結晶太陽電池は前年比74%と減少したが,シリコン多結晶太陽電池は前年と同等であった.CIS薄膜太陽電池では,研究用太陽電池セルにおいて世界最高の変換効率22.3%を達成した.
用途別では産業・事業用等の非住宅用モジュールが6 187 MWとモジュール国内出荷量の約8割を占めたが,2015年度の太陽光発電による電力の買取価格が10 kW以上においてkWhあたり前年度の32円から27円(税抜)へと引き下げられた影響もあり,前年比87%と減少した.
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課資料「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成26年度)について」[1]によると国内ごみ排出量は4 432万t(前年度4 487万tに対して1.2%減)で,平成12年度をピークに減少傾向にある.直接焼却量は3 347万t(直接焼却率は80.0%)で,平成15年度以降減少傾向である.ごみ焼却施設数は1 162施設で,このうち発電設備を有する施設数は338,全ごみ焼却施設の29.1%を占め,発電能力合計は1 907 MW,平均発電効率は12.84%で,高効率化傾向が続いている.
さらに平成23年7月に施行された「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」により,バイオマス発電の導入が進み,平成27年12月末の時点で制度開始後から新たに認定を受けた設備の導入容量は48万kW(認定時のバイオマス比率を乗じた推計値)となっている[2].
2015年末までに燃料電池自動車(FCV)は約400台が販売され,81箇所の商用水素ステーションの設置が決定した.2020年東京五輪において,政府や東京都は国内再生可能エネルギー電力で水素を製造し,東京に輸送して施設用発電やFCVの燃料とすることにより,水素の可能性を世界に発信する計画を立案中である.経済産業省は,2030年代の発電事業用水素発電の実用化を念頭に,水素の海外調達等の費用の2/3まで補助する制度を創設し,水素発電の実証や安全規制等の整備を開始した.国内再生可能エネルギーに着目した事業が展開している.環境省は洋上風力発電の余剰電力で水素を製造・貯蔵し,燃料電池での発電や燃料電池船の稼動等の実証を開始し,国土交通省は下水汚泥由来のバイオガスから製造した水素を水素ステーションに供給する事業を開始した.ドイツではPower-to-Gasの実証研究が進展しているが,我が国での実現を目指した検討をNEDOが開始した.
世界全体の風力発電の累積導入量はGWEC(Global Wind Energy Council)の統計によると2015年末で4億3 288万kW(2014年末3億6 970万kW)に達した.これは日本国内の原子力・火力を含む発電設備の合計2億9 200万kWよりも多い.2015年の新規導入は6 347(5 172)万kW,年成長率は前年比17(12)%である.2015年に世界の年間電力需要の4%を風力発電が供給した.風力発電は気象条件で出力が変動するが,送電線の広域連系で変動を相殺することで,EUでは年間電力供給の11.4%を担っている.デンマーク,アイルランド,ポルトガル,スペイン,ドイツ,英国の6国では10%以上を供給している[1].
国別では累計・新規共に,1位中国,2位米国,3位ドイツである.特に中国は累計で34%,新規は48%の世界シェアを持つ.但し中国は送電系統の整備が遅れており,未連系で放置されたり,系統理由で停止中の風車が多数あり,発電量では米国が世界1である.環境保護に熱心とは言えない中国と米国が世界1を争い,原子力依存のフランス,島国の英国とアイルランドも,風力発電を大量導入している(表6).風力発電は安価に短期間に大量導入できる「国産エネルギー源」として多くの国々で活用されている.特に欧州ではロシア産天然ガスの輸入に対するリスクヘッジ(エネルギー安全保障)と国内関連産業育成による雇用創出効果が重視されている.最近の新規建設は中南米(ブラジル他)やアフリカが増えてきている.更に欧州を中心に洋上風力開発(商用案件は全て着床式)も進みつつある(図1).
日本の風力発電は2016年3月末時点で,累計で317万kW・2 143台(292万kW・2 031台),2015年の新規で25万kW・118台(21万kW・97台)/年である(図2).残念ながら世界の2%未満に過ぎない.年間電力供給に占める風力発電の比率も0.5%にすぎず,10%以上が並ぶ先進諸国には大きく後れを取っている.2012年7月から固定価格買取制度(FIT: Feed in Tariff,大型風力は22円/kWh)が始まったが,同年10月から1万kW以上の風力発電所には法規に基づく環境アセスメント(手続きに4~5年必要)が適用されたため,FITによる導入促進効果が顕在化するのは2017年以降になる.現在,約900万kW(内,約180万kWが洋上風力)の開発計画が手続中もしくは完了している.洋上風力開発促進に向けた法改正や研究開発が進められている.
風力発電の発電コストは,好条件の立地では既に火力発電並みの経済性を実現している.さらなるコスト低減にむけて,大型化による建設単価低減,ロータ直径拡大(ブレード伸展)とハブ高増大(高高度タワー)による発電能力向上が進んでいる.定格出力は,洋上向けは8 000 kW,陸上向けは5 000 kW級が実用化されている.2014年に新規設置された風車は,平均定格出力は米国1 900 kW・ドイツ3 700 kW,平均ロータ直径は両国共に100 m,平均ハブ高は米国82 m・ドイツ116 mに到達しており,更に拡大しつつある[2, 3](図3,図4,図5).
立地拡大に向けて,陸上では寒冷地(−40℃以下)や高山(標高3 000 m以上)向け特別仕様の普及,洋上風力開発の本格化,空中風車(AWT: Airborne Wind Turbine)の研究,等が進んでいる.特に2015年は洋上風力発電の当たり年で,ドイツを中心に年間で340万kW・約800台の洋上風車(全て着床式)が新たに運転を開始して,累計では1 207万kW・約3 600台となっている.浮体式洋上風力発電も,ノルウェー,ポルトガル,日本(図6)の3国で実証研究が行われており,英国,フランス,米国,ドイツでも実証計画が進みつつある.
2011年の東日本大震災以降,再生可能エネルギー導入拡大が望まれる中,ベース電源として活用可能な地熱発電が大きな注目を集めている.日本政府も2015年6月に2030年度の望ましい電源構成案[1]を決め,安定的な運用が可能な地熱等を積極的に拡大し,ベース電源を確保するとしている.
我が国では,2015年2月にメディポリス指宿発電所(鹿児島県指宿市),さらに2015年6月に菅原バイナリー発電所(大分県九重町)が運転開始され,地熱発電の認可出力合計は約52万kWとなっている[2].
また,過去にNEDOが地熱開発促進調査を実施した山葵沢・秋ノ宮地域(秋田県湯沢市)では,2015年5月に認可出力4.2万kWの地熱発電所の建設工事が開始された.
NEDOでは,2016年度も引き続き,地熱発電の導入拡大を目的として,地熱の技術開発プロジェクト(地熱発電技術研究開発)を遂行しており,①低温域の地熱資源有効活用のための小型バイナリー発電システムの開発,②発電所の環境保全対策等技術開発,③地熱発電の導入拡大に資する革新的技術開発,を主とした技術開発に取り組んでいる[3].
電力系統の安定化のために,周波数調整,電圧調整等を目的とした実証設備の導入が進んでいる.中国電力(株)の西ノ島変電所(隠岐諸島,ナトリウム硫黄電池(4.2 MW-25.2 MWh)とリチウムイオン電池(LIB)(2 MW-0.7 MWh)),北海道電力(株)の南早来変電所(レドックスフロー電池,15 MW-60 MWh)の蓄電池システムは運転を開始した.さらに(一財)新エネルギー導入促進協議会の「大容量蓄電システム需給バランス改善実証事業」で,東北電力(株)は南相馬変電所(リチウムイオン電池,40 MW-40 MWh),九州電力(株)は豊前変電所(豊前発電所構内,ナトリウム硫黄電池,50 MW-300 MWh)に設置を進めた.またNEDO「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」(2011–2015年度)で開発した蓄電技術として,(株)日立製作所らは伊豆大島で鉛蓄電池とリチウムイオンキャパシタのハイブリッド蓄電システム(1.5 MW),(公財)鉄道総合研究所らは山梨県でフライホイール(300 kW-100 kWh),(株)東芝はスペイン・マドリード州でLIB(500 kW-776 kWh)を設置し制御技術を含めた実証試験を実施した.
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