材料力学部門ポリシーステートメント(2023年度~2025年度 活動方針)
第101期部門長 堤一也(三菱重工業株式会社)
1.部門活動概要
本部門の英語表記“Materials and Mechanics Division”が示すように「材料」と「力学」に関する技術を融合させ、機械工学の要の一つである「材料力学」を基盤として活動する。機器や構造物の安全・安心を保証するための健全性評価、および維持管理に関する研究活動や技術開発の母体となり、安全性と信頼性の確保という社会の要請に応えることを目的とする。ナノ・マイクロ材料や極小構造体、極限環境下の構造物、バイオメカニクスなどの分野へも活動領域を拡げ、マルチスケールやマルチフィジクスといった統合的観点からの学問の体系化も推進する。
様々な分野と連携し新分野の開拓および発展に寄与してきたが、2023年度~25年度はより一層強力に部門間交流や世界視点の活動を展開し、社会が直面する喫緊の問題解決に貢献する。重点活動項目は次の4点とする。
- ① 部門間交流:機械工学全般をカバーする本学会の強みを活かした部門シナジー効果の発揮
- ② 産業界との連携:社会ニーズと技術シーズの調和による社会課題の解決
- ③ 国際連携活動:グローバルスタンダードで研究・技術開発を推進する基盤の構築
- ④ 若手技術者・研究者育成と将来戦略:学界・産業界の共通課題である次世代を担う人財の育成
2.重点活動項目の設定とその目標
- (1) 部門間交流
- (2) 産業界への貢献
- (3) 国際連携活動
- (4) 若手技術者・研究者の育成と将来戦略
新しい研究分野の探求や社会課題への有効な打ち手の提案を目標に、部門間連携を加速度的に推進する。講演会と講習会を2本柱として連携の拡大に取り組む。
2023年度、部門講演会(M&M材料力学カンファレンス)を機械材料・材料加工部門とコロケーション開催する。6つの合同セッション、2つの合同フォーラムを計画し次世代の研究・技術開発の契機とする。動力エネルギシステム部門との分野連携企画OSを開催し、学会横断テーマ「機械・インフラの保守・保全」の成果を発展させる。今後は複数の部門と更なる連携OSを目論む。2023年度はM&M若手シンポジウムを計算力学部門と合同開催(分野連携企画)し、若手層の部門間交流を促進する。年次大会を部門横通しの場と捉え、2023年度は8つのセッションを他部門と共同企画する。2024年度以降も部門講演会のコロケーション開催を発展的に継続する。
講習会も部門間連携を進め、受講者メリットを最優先に新企画を検討する。2023年度は部門運営委員から講習会に関するアンケートを取得し、分析結果を踏まえ2024年度以降協同講習会の立ち上げを目指す。本部門が提供すべき要素技術講習は維持しつつ、時代の趨勢に鑑み最新技術をタイムリーに提供する。
部門研究会・分科会、部門講演会および講習会の3点を主要取り組みとする。
学術の深化を目標とする研究会と、産業界との協働による応用展開を志向する分科会を、産学連携のプラットフォームと位置づけた活動を継続する。これまでも時宜を得たテーマ設定を行ってきたが、カーボンニュートラルなどの難題に対応する研究会・分科会の設置を進める。2023年度はhcp金属の機能・特性の発現メカニズムの解明とその向上をねらって、学術面と実用面の両面から研究を行う分科会を立ち上げることを決定している。
対面開催による部門講演会を産学会員が集う貴重な機会と再認識し、学界と産業界との連携を深める場として最大限活用する。研究会・分科会の研究成果を発表するOSを積極的に企画し、産業界からの講演を進める。部門講演会では企業会員が企画・運営するフォーラムを開催し、産業界から設計規格・基準に関する話題提供を行い学界との協業の糸口を探る。
講習会を通して企業技術者の基礎教育に貢献する。好評な「よく分かる」シリーズ講習会を継続し、企業会員を中心に基礎学術の普及に努める。物づくりにおける規格・基準の重要性を踏まえ、発電用設備規格委員会との協業を進める。
国際交流という観点から積極的に国際会議を主催し、部門登録会員と部門の国際的地位向上を目指す取り組みを継続する。具体的には「実験力学の先端技術に関する国際会議(ATEM)」と「アジア太平洋破壊と強度の国際会議(APCFS)」を活動の2本柱とする。
2023年度、“ATEM2023”を国際DIC学会(画像相関法)との合同会議とし福井県で主催する。グローバル視野の獲得に加えて最新の実験技術を横展開する。DIC学会主催の講習会も併催し、基礎編から応用編までの講習を提供する。4年後の次開催に向けて、2024年度、2025年度は実行委員会の設置、開催場所の選考などを進める。
2024年度は“APCFS2024”を主催する。本会議は2年毎に日、韓、中、豪が主催を持ち回り担当し、日本での開催は8年ぶりとなる。学術会議としての成功に加えて、国際会議を主催するマネジメント力の向上にも努める。実行委員会には中堅会員も参画させ企画・準備・運営段階でのノウハウを伝承するとともに、当部門で国際連携活動の推進役となる人財を育成する。部門講演会(M&M材料力学カンファレンス2024)と合同開催とする計画であり、多くの部門登録会員へ国際交流の機会を提供する。
学界・産業界を問わず若手技術者・研究者の育成は極めて重要なテーマであり、若手シンポジウムや部門講演会を育成の機会と捉え活動を推進する。
35歳以下の若手正員のみが講演できる合宿形式の若手シンポジウムをほぼ3年に1度開催してきた。コロナ禍による中断を経て、2023年度に計算力学部門と合同企画として再開する。企業会員も参加し、技術的議論の深化は元より、次世代層の産学間人脈構築を狙う。発表内容は学会英文誌において特集号を組み、論文投稿に至るまで部門の将来を担う人財を戦略的に育成する。
部門講演会では若手研究者を中心としたフォーラムおよび特別企画を設け、若手が企画から発表までを主体的に行う機会を創出する。若手講演者に優秀講演表彰を、学生会員を対象に学会若手優秀講演フェロー賞を授与しモチベーション向上を図る。
文部科学大臣表彰「若手科学者賞」には積極的に応募する。2022年度は本部門推薦者が受賞した。2023年度も応募済みであり次年度以降も継続する。部門ニュースレターは若手読者を強く意識し、学会の魅力・メッセージの発信、若手会員からの寄稿など工夫を凝らし、双方向のコミュニケーションの場となるよう活性化していく。