▲石綿 良三
(神奈川工科大学
システムデザイン工学科)
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1. はじめに
「流れと遊ぶアイデアコンテスト」の第6回大会が8月21日に開催された.神奈川工科大学と機械学会(流体工学部門および関東支部)の共催で行われており,青少年が流れに接し,自らのアイデアからモノづくりを体験する機会としている.勝敗よりも流体に親しみ,楽しんでもらおうと考えている.今回は,ウインドカー片道走行部門(まわりを吹く風のエネルギーで風上に走る模型自動車),同往復部門,ドルフィンジャンプ(水の浮力で高飛び)の3種目で延べ73グループの参加があった.失敗作もたくさんあったが,楽しい一日となった.
2. ウインドカー片道走行部門
高さ800mm,幅790mmのダクト内に約3m/sの風を吹かせ,この風のエネルギーで3m先の風上にあるゴールを目指すものである.ジュニアの部に21グループ,大学の部に19グループが参加した.合計40台のうち,完走できたものは18台であった.ユニークなアイデアにチャレンジするほど失敗する可能性は高くなるが,失敗を恐れず挑戦することも大切である.
ジュニアの部のアイデア大賞は山梨県立韮崎工業高校の竹道誠君であった.プロペラの回転をクランク機構を使って往復運動に変え,これによってギアの歯を一方向に押して回転させていくというものであった.
大学の部のアイデア大賞は電気通信大学の小宮山努君と五月女直紀君(写真1)であった.直径約500mm,幅約700mmの円筒状をしており,中心部にクロスフロータイプの羽根車があり,本体をごろごろ回転させて進むものであった.製作に3ヶ月を要したという,まさしく大作であった.
大学の部のベストタイム賞は信州大学の辻井隆也君であった.軽くて,製作費が安いというのがセールスポイントとのことである.信州大学繊維学部からは学内コンテストの上位3名が本コンテストに参加している.さすがに学内大会の上位者であり,6.4s
(ちなみに大会記録は4.3s)という好成績を修めた.
3. ウインドカー往復走行部門
ウインドカーを前半は風上に,後半は風下に走らせるのが往復走行部門である.ジュニアの部に6グループ,大学の部に8グループが参加した.
ジュニアの部のアイデア大賞は茨城県立水城高校の秋山裕孝君であった.2段のプロペラで推進し,復路では後部の帆を開いて帰ってくるとのねらいだった.
大学の部は完走して戻ってくるものが少なく,残念ながらアイデア大賞の該当者はなかった.大学の部のベストタイム賞は,金沢工業高専の中川淳靖君であった.タッチパネルに衝突するとボディ全体が後方に倒れ,布製の床面が帆として機能して戻ってきた(タイム10.5s).
4. ドルフィンジャンプ
ドルフィンジャンプは,水深300mmの水槽に作品を沈め,手を離し,水の浮力で高飛びをさせるものである(写真2).発泡スチロールを流線形に切り出したものが主流となっている.小学生から大学生,一般の方まで19名の参加があった.
小学生の部の優勝は松之木さゆみさん(5年)で84cmという立派な記録であった.優勝は山田英幸君(神奈川工大)で,94cm
をクリアーして大会記録(88cm)を更新した.来年度は,ぜひ 100cmを越える挑戦者が出てほしい.
5. ウインドシップへの挑戦者を待つ
ウインドシップは可能かという問題がある.つまり,ウインドカーを船に変えたものである.ヨットが風上に対して斜め前方に進むことはよく知られているが,風のエネルギーだけでまっすぐ風上に進むことは可能であろうか.
答えは「可能」である.一つの方法は,プロペラの回転を伝達し,スクリューを回転させる方法である.この場合,スクリューを駆動する動力は当然プロペラで得られる動力よりも小さくなる.しかし,スクリューによって水に与える運動量変化を空気抵抗および水の抵抗より大きくすればよい(水を高速に加速する).このようにすれば抵抗よりも推進力の方が大きくなり,前進することができる.はじめて聞くと本当かと疑うかもしれないが,コンテストの当日,競技の合間にウインドシップのデモンストレーションを行った.
来年度には競技に取り入れたいと考えている.ウインドカーよりも技術的に難しく,前進すれば入賞は確実(?)と思われる.全国からの挑戦を待っている.
6. おわりに
昨年度より地方からの参加者のために,交通費半額補助制度を始めた.次回は平成13年8月を予定しており,多くの参加を期待している.最後に,後援,協賛いただいた関係各団体に御礼を申し上げます.http://www.isw.sd.kanagawa-it.ac.jp/contest/
▲写真1 電気通信大学の作品
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▲写真2 ドルフィンジャンプ
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