部門概要
「スポーツ工学・ヒューマンダイナミクス部門」部門長あいさつ
2024年度【第102期】部門長
瀬尾 和哉
2024年度【第102期】のスポーツ工学・ヒューマンダイナミクス(以下,SHD)部門長を拝命いたしました,瀬尾和哉です.今年度より2年間の任期を務めさせていただきます.これまでと変わらぬ,ご支援,ご指導方,どうぞよろしくお願い申し上げます.
2024年度になると,新型コロナワクチンが有料になるそうです(2024年3月末までは,無料で接種可能だそうです.).私事ですが,コロナ禍の2022年3月に引っ越しをしたため,黙っていると新型コロナワクチンの接種券が届きません.昨夜(2024年2月末),すべりこみで,接種券の発行申請を行ったところです. ワクチン接種者が減ると,再び,流行する恐れがあります.ミミズだって,オケラだって,ウィルスだって,生き残るために進化を続けています.山形大理学部時代の同僚の生物学者から聞いた話を思い出します.「感染者は少なければ少ない方が良い.いつ突然変異が起こり,ウィルスが強毒化するかわからない.」,スポーツスキルや用具を最適化する際に,進化的アルゴリズムを使用する筆者にとっては,とても納得のいく,大学入学共通テスト予備監督者控室での無駄話の一コマでした.
コロナ禍における本部門の講演会:SHDシンポジウムは,完全オンライン形式の2年間を経て,SHD2022@北翔大から現地開催形式に戻ってきました.ただし,オンライン発表も一部残しています.これも進化だと思っています.オンラインを一部残している理由は,2つあります.1つは現地参加が難しい参加者への配慮,もう一つは会場代を抑えるためです.会場代を抑えるために,最近のSHDシンポジウムの会場は大学の教室を借用して開催しています.大規模大学を除いて,大学の教室を借用するためには,授業の無い日,つまり週末開催になります.ただし,会期は3日間あるため,金曜日をオンライン開催にしています.開催方法は,SHDシンポジウム実行委員が決定するのですが,一部オンラインを含む現地開催がコロナ後のスタンダードになっています.勿論,参加者を増やすことを意図しての開催方式ですが,一方で,週末開催は企業研究者の方が参加し難くなっているかもしれません.全方位に対して,うまくいく方法はありません.ジレンマです.
コロナ禍前の数年間,SHDシンポジウムの参加者数は200名を超えていました.過去最高の参加者数は,SHD2018@京都で,300人弱でした.しかし,コロナ禍後のSHDシンポジウムでは,参加者数は200人に届いていません.オリンピック・パラリンピックのリオデジャネイロ大会や東京大会で追い風に乗っていたSHDの勢いがコロナ禍でそがれた,と言えるかもしれませんし,或いは,コロナ禍から抜けつつある,現在が元々のSHDの実力であるのかもしれません.
2015年4月,SHDは,日本機械学会の22番目の部門として設立されました.そもそもスポーツ工学が日本機械学会の部門として認められるとは,30年前には想像できないことでした.ミウラ折りで有名な元宇宙科学研究所の三浦公亮先生(2023年度SHD部門功労賞)によると,スポーツ(遊びのニュアンス)を工学分野の学会の守備範囲とすることには冷淡な反応だった(三浦 公亮,宇治橋 貞幸,スポーツ工学事始め, 日本機械学会誌 95 (888), 967-970, 1992),とのことでした.筆者も同様の空気を感じてきました.筆者の世代では,元々,他分野の研究をしていたが,対象をスポーツに変更した研究者が多いと思います. 一方,体育分野の研究者もまた変遷し,スポーツ工学分野に到達してきた,と思っています.例えば,元々,運動生理の研究者がものづくり研究や研究手法を工学分野のそれに変更したパターンです.そのような同好の士の集う場がSHDシンポジウムです.
現在,SHD部門は,体力をつける段階だと思っています.ゲームを楽しむためには,それに耐えうるフィットネスが必要です.フィットネストレーニングはきつい作業ですが,少しずつでも体力をつけていく必要があります.
SHDの体力とは,SHDシンポジウムへの参加者数,その多様性,継続的な講習会の開催,予算収支(JSMEの基準:共通経費以上の黒字),国際学協会との連携等を思い浮かべます.これらの指標をどのような手段で改善していくのか,皆様のお知恵をお貸しください.
2000年代前半(スポーツ工学の黎明期?)には,SHDの参加者数/発表者数が約2である,と聞いていました.学術分野によるとは思いますが,2という数値は,大きいです.発表者が講演会に参加するのは,当然です.一方,発表者しない参加者数が多いことは素晴らしい,と考えます.何か楽しそうだ,或いは,自分を活かすことのできる課題があるのではないか,と興味を持ってSHDに参加した,と考えるからです.筆者のSHD初参加(多分,SHD1998)は,単なる聴衆として参加しました.その後,濃密に携わることになり,この文章を書いています.個々の事情で濃淡はあると思います.まずはSHDシンポジウムをのぞいてみてください,楽しみにしております.どうぞよろしくお願いします.