株式会社IHI
カーボンソリューション
SBU 技術顧問
氣駕 尚志

  このたび、第 100 期浅野部門長(神戸大学)の後任として、第 101 期動力エネルギーシステム部門の部門長を務めさせていただきます、IHIの氣駕です。ご承知の通り、2019年末から急激に拡大した新型コロナウイルス感染症に対して、2021年にグラスゴーで開催されたCOP26に向け、コロナ後のグリーンな成長について活発な議論がなされました。ところがその翌年(昨年)2月にロシアがウクライナに侵攻し、各国のエネルギー政策における安全保障が再評価され一層強調されてきています。このような中、各国の足並みはなかなかそろわず、4月16日のG7「気候・エネルギー・環境大臣会合」の共同声明では明言は避け各国に配慮したものになっています。このようにエネルギー・環境問題が世界のビッグトピックとなっている中で大役を仰せつかり、身の引き締まる思いです。幸いコロナ禍はようやくおさまりつつあり、学会本来のありさまである対面での交流もできるようになってきました。世の中のこの流れを背に受けつつ、大川副部門長(電気通信大学)、井上部門幹事(IHI)、歌野原総務委員会幹事(公立小松大学)をはじめとした運営委員、各委員会メンバー各位、そして日本機械学会森本様(5月下旬まで)、伊澤様の協力によって動力エネルギーシステム部門が一層発展していくように尽力する所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、私が子供のころは、海は広くて大きく、地球はもっと大きく、宇宙は果てしない存在でした。ところがこの2月の日本経済新聞<注1>に、ちょうど新型コロナウイルスに立ち向かっていた2020年ごろ、人類が生産した人工物の総量が生物量を上回ったようだとの記事がありました。それだけでなく、2040年までには生物量の3倍に達する見込みということ。この例だけでなく、地球を温暖化させ、新型コロナウイルス感染症が一地域に留まらずにパンデミックとなっていくのは、人類にとって地球が小さなものになってきてしまってきているのでしょう。一方でこれだけ地球温暖化が理解され我々がいく末を案じるのも、地球が小さくなってきているからでしょう。これに対処するため、カーボンニュートラルやカーボンリサイクルなどの新たな概念への挑戦が始まっていますが、この源流にあるのが科学技術です。そして、動力エネルギーシステム部門に所属される皆様が最も近い位置におられ、皆様の様々な活動が、先導的な役割を果たすに違いありません。  

 とはいえ、それらが単独の独りよがりな活動であっては実を結びません。動力エネルギーシステム部門は、大学、企業、研究機関等がほどよく融合しており、分け隔てない議論やプラットフォーム形成の場として機能することが期待されます。このような活動により、部門の皆様、所属団体、部門、学会が一層活性化し、明るくよりよい社会が発展的に継続するものと信じます。そのためにも是非ともこのような場に若い方々をお誘いいただき<注2>、幅広い層の方々の発想が盛り込んでいくことが重要です。部門の皆様のお力添えを得ながら、微力ながら努力していく所存であります。

 最後に、動力エネルギーシステム部門では、この5月21〜26日に、ICONE 30(原子力の国際会議)と、ICOPE-2023(火力、蓄電・蓄熱、再エネ、水素などの国際会議)を初めて同時開催します。脱炭素、エネルギー安定供給、経済性が叫ばれる中、各技術の協調が必須で、活発な交流を期待します。皆様のご理解、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

<注1>「地球史に人類の爪痕」日本経済新聞朝刊(2023年2月19日)26面
<注2>若手会員のための資格継続キャンペーン
https://www.jsme.or.jp/member/member-service/wakatecp2023/