◇ 95期(平成29年度)部門賞及び部門一般表彰◇

 部門賞「功績賞」「社会業績賞」および部門一般表彰「貢献表彰」は部門員からの推薦に基づき、優秀講演表彰及び日本機械学会若手優秀講演フェロー賞は昨年9月より本年8月までに開催された講演会の座長、聴講者による評価結果に基づき、部門賞委員会にて慎重に審議を重ね、運営委員会での議を経て、今般下記の諸氏に贈賞の運びとなりました。ここにご報告申し上げます。なお、ご所属・役職は2017年3月時点のものとなります。

【部門賞(功績賞)】(敬称略)

■米山 直人(富士電機株式会社 特別顧問)
米山直人氏は富士電機製造(株)に入社以来、主に水力発電設備の開発計画、エンジニアリング業務に携わられ、水力発電プラントの技術部門の責任者として数々の発電設備を完成させてこられた。さらに、ドイツからの技術導入のほか企業や学会などの活動を通じて国内の技術レベルの向上並びに水力発電分野の発展に多大に貢献されてきた。主な成果としては、新エネルギー財団及び農業土木機械化協会の委員在任中の中小水力機器の標準化推進による中小水力の未開発地点の開発の促進、国内標準の指針・標準仕様制定に尽力されることによる水力開発の促進、技術リーダーとしてバルブ水車・発電機の大容量化を進められ第二新郷発電所や第二山郷発電所等の大型機を完成し低落差地点の水力開発に先鞭を付けられたことなどが挙げられる。また、世界初の立軸大容量バルブ水車・発電機である豊実発電所の製作に於いてはCFD解析技術を適用することで高効率な水車性能を達成、FEM剛性解析や通風解析などの最新の技術を駆使して高性能な発電機を完成させられており、我が国の水力発電分野に大きく貢献されてきた。

■溝渕 俊寛(四国電力株式会社 常務取締役)
溝渕俊寛氏は四国電力(株)に入社以来、多数の火力発電所の計画・建設・運営に携わり、火力発電所の安定・安全運転に尽力され、熱効率向上など発電技術の向上に多大なる貢献をしてこられた。特に、橘湾発電所については、同社初の変圧貫流ボイラーを採用した大容量高効率石炭火力の仕様の決定に計画の初期段階から携わられた。また、同社火力では約20年ぶりとなる建設工事を機械課長として指揮し無事完遂された。近年では、坂出発電所の高効率LNGコンバインドサイクル発電設備へのリプレースや高経年化の進む西条1号の石炭超々臨界圧機へのリプレースを主導されている。また、2012年7月より一般社団法人火力原子力発電技術協会 四国支部長も務められている。このように電力安定供給・高効率化・環境負荷低減に長年に亘り貢献されてきた。

■岡崎 健(東京工業大学 特命教授)
岡崎健氏は、高効率かつクリーンな石炭利用技術、温暖化防止に関するCO2回収隔離技術(CCS)、水素エネルギーシステムと燃料電池、バイオマスのガス化など、エネルギー・環境問題に関わる基礎研究と各種プロジェクトに従事するとともに、石炭、CO2、水素にかかわる多数の公的機関や組織の委員長として指導的な役割を果たしてこられた。豊橋技術科学大学在任中には、新鋭石炭火力の発展期に対応して、石炭火力の高効率・クリーン化に貢献する研究を行い、日本機械学会奨励賞と論文賞を受賞されている。その後東京工業大学に移られてからは、CO2削減に関する研究に重点を移され、CO2回収型石炭火力(oxy-fuel combustion)、CO2海洋隔離と環境影響に関する研究をリードされるとともに、クリーンな二次エネルギーである水素エネルギーの高度利用技術や燃料電池のミクロ現象解明などで大きな成果を挙げられ、日本伝熱学会学術賞、日本機械学会論文賞、日本エネルギー学会論文賞、日本燃焼学会論文賞などを受賞されている。また、化石燃料、水素、CCSのシステム統合に関する活動に対し、日本エネルギー学会賞(学術部門)を受賞され、その発展が、海外の石炭(褐炭)を起源とするCO2フリー水素サプライチェーンプロジェクトにつながり、東京工業大学に産学官連携のコンソーシアムを立ち上げて活発な活動を展開されている。

■森 治嗣(北海道大学 特任教授)
森治嗣氏は、石川島播磨重工業(株)(現(株)IHI)ならびに米国MITで高温ガス炉の安全解析、ブレイトンサイクルGT発電システム、中間/再生熱交換器の研究開発に従事され、MITから帰国後は東京電力(株)原子力開発研究所にて軽水炉の熱流動、過渡/安全解析、及び計測機器研究開発にも従事され、中性子揺らぎを利用したBWR炉心流量計測法で日本原子力学会賞、蒸気インジェクタの開発で日本機械学会賞/日本原子力学会賞(技術)をそれぞれ受賞されている。また産学連携(スイスPSI、北海道大学)においては、超音波流速分布計測流量計の開発を主導し富士電機からの製品化に尽力された。国際的にも米国MIT/Purdue大と次世代炉、沸騰二相流の共同研究を実施し、多くの成果をあげてこられ、第11回日本原子力学会熱流動部会業績賞(原子炉安全性・信頼性向上に関する日米共同研究推進による革新的技術開発)、日本機械学会熱工学部門2011年度功績賞(技術功績賞)を受賞されている。学会活動に於いては、動力エネルギーシステム部門長を始め日本機械学会、日本原子力学会、日本伝熱学会、日本混相流学会、可視化情報学会で理事/会長/副会長を歴任されるとともに、日本原子力学会北海道支部長、日本機械学会北海道副支部長など地方学会の運営・発展にも尽力されてきた。国際会議ではICONE及びNURETHなどの運営にも尽力され、動力エネルギー技術の進歩・発展および本部門活動に多大な貢献をされてきた。
(註:お名前の「嗣」は、正しくは偏の部分の「口」の上に「一」が付きます)

【部門賞(社会業績賞)】

該当なし

【部門一般表彰】

○貢献表彰(敬称略)

■「原子力教育における長年にわたる貢献」、受賞者:京都大学原子炉実験所(代表:川端 祐司)
京都大学原子炉実験所は研究炉(KUR)、臨界集合体実験装置(KUCA)を用い長年に亘り原子力に関する教育に多大な貢献をされてきた。KUCAは日本の大学が有する国内唯一の臨界集合体装置であり原子力を専攻している学部生・大学院生の原子力基礎教育の場を提供、近年では、韓国、スウェーデンからの学生も受け入れるなど国際的なものとなっている。KURでは、各種放射線を用いた研究の場を原子力だけではなく多岐にわたる分野に提供されてきた。また、施設の公開など、一般に対する活動も非常に熱心に取り組まれている。京都大学原子炉実験所が開所以来半世紀の長きにわたって果たされてきたこれらの活動は、日本の動力エネルギー技術の中でも重要な原子力基礎教育に不可欠なものである。

■「日本でのコージェネレーション普及促進活動における長年にわたる貢献」、受賞者:一般財団法人コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(代表:柏木 孝夫)
一般財団法人コージェネレーション・エネルギー高度利用センターは、1985年に設立された日本コージェネレーション研究会を前身とし、現在では電力・ガスなどのエネルギー事業者、関連メーカー、建設、エンジニアリング会社など140社以上が会員になっている。この間、関係省庁や地方自治体への政策提言、シンポジウムの開催、施設見学会、市場実績調査・情報発信、コージェネ大賞の制定などコージェネ普及に向けた多彩な活動を展開してこられた。また、財団を母体に産官学一体で「アドバンスト・コージェネレーション研究会」を立ち上げ、2030年におけるコージェネ目標を提言、さらに小型コージェネに関する技術やマーケティング等をテーマとした国際会議「MicrogenIV」の事務局を務めることで国内外の交流や情報収集・発信に努めてこられるなどコージェネレーション普及促進において不可欠な貢献をされてきた。

■「微粉炭火力への酸素燃焼技術適用によるCO2の回収および地下圧入一貫実証国際共同事業の完遂」、受賞者:カライド酸素燃焼プロジェクトチーム(代表:山田 敏彦、合計25名)、氣駕 尚志、山田 敏彦、後藤 隆弘、小牧 晃洋、内藤 俊之(株式会社IHI)、三澤 信博、M野 匡史、伊藤 正紀、戸高 法文、阿島 秀司(電源開発株式会社)、本田 毅、石井 英一、郷右近 治、菊池 龍次郎、水越 泰平(三井物産株式会社)、橋本 敬一郎、中村 貴司((一財)石炭エネルギーセンター)、Jim Craigen、Burt Beasley(ACALET)、Chris Spero、Franco Montagner(CS Energy Ltd)、Mick Buffier、Barry Isherwood(Glencore PLC)、Aspi Wadia、 Sandeep Sharma(Schlumberger PLC)
石炭火力をゼロエミッション電力源とするために、CCS(CO2回収・貯留)技術の開発が活発に進められているが、このような中、石炭産業の継続的発展を願う豪州から、日本が開発を進めていた酸素燃焼技術による石炭火力からのCO2回収を豪州国内で実証すべく働き掛けがあり、豪州クイーンズランド州の商用石炭火力(Callide A発電所4号機、出力30MWe)に酸素燃焼を適用する世界初のプロジェクトが日豪官民共同で実施された。本プロジェクトではCO2回収から地下圧入までの一貫実証を日豪合同で達成し多くの成果をあげられた。

○優秀講演表彰(敬称略)

<2016年度年次大会>
境田 悟志(北大)、「樹脂構造体と3次元LBMを用いたPEFCガス拡散層内の液水輸送解析」
中嶋 智司(東大)、「LiDARによる山岳地形における風速鉛直プロファイル分析」
泰中 一樹(電中研)、「微粉炭燃焼場における2次元温度分布の時系列可視化計測」
<第22回動力・エネルギー技術シンポジウム>
金井 大造(電中研)、「フィルタベント総合解析ツールの開発」
梅野 遼平(滋賀県立大)、「メタセシス反応を用いたバイオディーゼル燃料の低分子化処理における触媒消費量の低減」
矢吹 龍磨(筑波大)、「原子力発電所におけるケーブル火災のFDS解析」
山縣 貴幸(新潟大)、「気液環状二相流における液膜流動特性と物質移動に関する研究」

<2016年放射性物質の輸送容器と輸送に関する国際シンポジウム(PATRAM2016)>
前口 貴治(三菱重工業(株))、「Properties of Aluminum Alloys for Transportable Storage Cask Basket after Long Term Storage」
原木 之英(原燃輸送)、「Implementation of Emergency Response Training and Skills Improvement for Emergency」
近内 亜紀子(海技研)、「Impact of “Transport Security Threshold” on the Practical Transport Operation」

<2017年度動力エネルギー国際会議(ICOPE-17)>
藤井 祥万(早大)、「Effect of Multi Injection Process on Zeolite Boiler in Thermochemical Energy Storage and Transport System of Unused Heat from Bagasee Boiler」
宮崎 猛(神戸大)、「TWO-PHASE FLOW BEHAVIOR AND HEAT TRANSFER CHARACTERISTICS IN KETTLE REBOILER」

<第25回原子力工学国際会議(ICONE25)>
Martin Negyesi(JAEA)、「High Temperature Oxidation of Zry-4 in Oxygen-Nitrogen Atmospheres」
近藤 雅裕(東大)、「Melting Simulation using a Particle Method with Angular Momentum Conservation」
内藤 樹(日立GE)、「Development of Instrumentation and Control Systems for UK ABWR」
藤原 広太(筑波大)、「The Behavior of Aerosol Particle inside a Rising Bubble during Pool Scrubbing」

【日本機械学会若手優秀講演フェロー賞】(敬称略)

<2016年度年次大会>
竹田 敬士郎(九大院)、「感圧塗料を用いたターボ機械内部流れ場における圧力分布計測手法の構築」
古谷 和真(早大院)、「製糖工場内未利用熱の蓄熱輸送システムにおけるゼオラトボイラの基礎検討」

<第22回動力・エネルギー技術シンポジウム>
善当 哲也(北大)、「レドックスフロー電池における流れ・厚み方向の電流密度分布を考慮した性能評価モデル」
佐野 広季(岡山理科大)、「多量の含油排水からの油分回収およびBDF製造 〜ラーメン残渣汁の場合」