◇ 93期(平成27年度)部門賞及び部門一般表彰◇

 部門賞「功績賞」「社会業績賞」および部門一般表彰「貢献表彰」は部門員からの推薦に基づき、優秀講演表彰及びフェロー賞は昨年9月より本年8月までに開催された講演会の座長、聴講者による評価結果に基づき、部門賞委員会にて慎重に審議を重ね、運営委員会での議を経て、今般下記の諸氏に贈賞の運びとなりました。ここにご報告申し上げます。なお、ご所属・役職は2015年3月時点のものとなります。

【部門賞(功績賞)】(敬称略)

■堀 祐一(北陸電力株式会社 代表取締役副社長)
堀祐一氏は1976年北陸電力株式会社に入社以来、多数の火力発電所の計画・建設・運営に携わり、火力発電所の安定・安全運転に尽力された。七尾大田火力発電所2号機の建設工事においては、70万kW機では初となるタービン入口温度593℃の高中圧一体型3車室タービンを世界に先駆けて採用するとともに、40インチチタン翼や新型高性能翼などのタービン最新技術を導入し、熱効率向上を図った。さらに、敦賀火力発電所2号機および七尾大田火力発電所2号機で石炭の一部を木質バイオマスに代替し混焼するよう設備改造を図り、同社火力発電所としては初となる木質バイオマス混焼発電を開始した。近年では、富山新港火力発電所石炭1号機(25万kW)のリプレース計画として、LNGコンバインドサイクル発電技術により熱効率を向上させたプラントの建設計画(LNG1号機:42.47万kW、発電端熱効率 約59%LHV、2018年度運転開始予定)を主導し、エネルギーセキュリティー向上や二酸化炭素排出削減を達成されている。火力原子力発電技術協会 中部支部常任評議員や本部理事も務められ、長年にわたり電力安定供給と火力発電所高効率化の取り組みにおいて、当分野の発展に多大な貢献を果たされた。

■佐藤 幹夫(電力中央研究所 名誉研究アドバイザー)
佐藤幹夫氏は、1975年に電力中央研究所に入所後、発電用ボイラやガスタービン燃焼器等を対象とした低NOx燃焼技術の開発に従事されている。超重質油、石炭液化燃料など石油代替液体燃料のボイラ燃焼技術の開発、各種海外炭の微粉炭焚きボイラへの適用性評価技術の開発に尽力された。1987年より、石炭ガス化複合発電(IGCC)用ガスタービン燃焼器技術に関する研究に取り組み、15万kW級ガスタービン多缶型燃焼器の実サイズ1缶分常圧燃焼試験と、同2分の1サイズ実圧(最大1.5MPa)燃焼試験が可能な世界で唯一の設備を1987年に電力中央研究所に設置した。石炭ガス化燃料用ガスタービンの安定燃焼技術、低NOx燃焼技術の開発を進め、従来70%であった燃料中アンモニアからNOxへの転換率を約40%にまで低減することに成功し、空気吹きIGCCの実用化に大きく貢献された。また、日本機械学会「石炭利用発電の高効率化技術に関する調査研究分科会」(2001-2003年度)、同「700℃級超々臨界圧(A-USC)発電技術に関する調査研究分科会」(2005〜2006年度)の主査を務められ、46〜48%の高効率プラントの実現を目指す国プロの立ち上げに大きく貢献された。さらに、燃焼工学の専門家として国等委員会活動、学協会活動等に従事され、当部門の運営においても、部門長やICOPEの実行委員長を歴任するなど多大な貢献を果たされた。

■伊佐 均(株式会社日立製作所 技監)
伊佐均氏は(株)日立製作所入社後、蒸気・ガスタービン、火力プラント、ボイラの開発・設計に長期にわたり携わり、その技術を世界最先端の技術に発展させた。蒸気・ガスタービンの分野では、(1)低振動型蒸気タービンの開発、(2)日本初のコンバインドプラント日本国有鉄道/川崎火力発電所1号機の開発、(3)超々臨界圧(USC)蒸気タービンロータの開発、(4)ムーンライト計画高効率ガスタービンの開発等、蒸気・ガスタービンの国産新技術開発に従事された。また、火力プラント、ボイラの分野では、(1)国内外の火力建設プロジェクト開発(十数プロジェクト)、(2)新電力向け火力プロジェクト開発、(3)CCS(二酸化炭素回収・貯蔵技術)の開発、(4)酸素吹きIGCCの開発、等の新規プロジェクト開発及び新技術開発に従事された。これらの活動により、長年にわたり我が国の火力・原子力技術開発に大きな貢献を果たされた。

【部門賞(社会業績賞)】(敬称略)

■工藤 和彦(九州大学 名誉教授)
工藤和彦氏は、大学において、長年原子炉物理学、原子炉工学、原子力安全工学などの教育と研究を通して、我が国における原子力技術者養成に取り組んでこられた。また、技術士の原子力・放射線部門導入を中心となって進め、動力・原子力分野の人材育成事業に多大なる貢献を為されてきた。更には、我が国における初めてのプルサーマル導入に関し指導的役割を果たし、実施へ向けて尽力された。福島東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故に関しては、事故・原子炉状況の把握とその情報の社会への発信に大きく貢献され、当該分野の技術者研究者の説明責任をなす役割を担ってきた。また、その後の、原子力規制改革、原子力発電所の再稼働へ向けての原子力事業のPA活動を積極的に行ってきている。以上の活動により、わが国の動力エネルギー技術と文化の進歩・発展に大きく貢献された。

【部門一般表彰】

○貢献表彰(敬称略)

■「横浜スマートシティに関する先駆的取り組み」、受賞者:信時 正人(横浜市 温暖化対策統括本部 理事)
信時正人氏は、低炭素・省エネルギー、超高齢化対応、地域活性化を重要課題としている横浜市において、環境未来都市推進のための主要プロジェクトとして、時代の変化に対応した「みなとみらい21地区」のリノベーションを目指す「みなとみらい2050プロジェクト」や、「持続可能な住宅地モデルプロジェクト」「スマートな住まい・住まい方プロジェクト」などを推進されている。さらに、民間企業等と連携して、低炭素型都市構造への転換を目指す各種のプロジェクトにも力を入れており、日本型スマートグリッドの構築を目指した「横浜スマートシティプロジェクト」、エコ運転やEVの普及を図る「ヨコハマ モビリティ プロジェクト ゼロ」、環境・エネルギーの産業創生を目指す「横浜グリーンバレー構想」に取り組まれている。以上のように、わが国の動力エネルギー技術、特に需要側技術の進歩・発展に大きく貢献された。

■「核燃料サイクル施設遠隔保守技術開発における長年にわたる貢献」、受賞者:Claudia Reich(独ヴェリッシュミラー・エンジニアリング社 社長)
ドイツのWälischmiller Engineering会社(旧社名:Hans Wälischmiller Markdorf(HWM)社、)は、1970年代後半よりJAEA東海の高レベル放射性物質研究施設(CPF)やプルトニウム燃料センター向けにマスタースレーブ式や新開発のトルクチューブ型サーボ式(TELBOT)などの各種マニプレータを納入し技術開発に貢献された。1990年代になってからは、JNFL六ヶ所の再処理工場や返還廃棄物貯蔵施設向けにパワーマニプレータシステムを納入し安定操業に寄与するとともに、高レベル廃液ガラス固化施設においては、モックアップ試験用・予備品を含め優れた操作性・耐久性・信頼性を有するTELBOTシステムを納入し、溶融炉の操炉上問題となった各種のトラブル対応・復旧に大きく貢献した。2013年5月の六ヶ所ガラス固化施設におけるアクティブ試験完遂は、長年の同社による貢献が大きい。今後、福島第一のデブリ回収等高度な遠隔技術が必要とされる分野においても同社の貢献が期待される。

■「コンバインドサイクルにおける吸気散水の冷却性能向上による増出力の達成と電力供給への貢献」、
受賞者:波多野学(東京電力株式会社火力部)、杉浦幸人(同社川崎火力発電所)、森田昌夫(同社富津火力発電所)、大田原佑樹(同社品川火力発電所)、白鳥正昭(同社千葉火力発電所)、村瀬幸司(同社横浜火力発電所)、梅沢修一(同社技術統括部技術開発センター)

上記7氏は、コンバインド火力のさらなる増出力を目指して、水噴霧による吸気冷却方式の改良・最適化を図るため、ラボ試験を実施し、ノズルの向きを従来の風下方向から風上方向にすることによって冷却性能が向上することを初めて解明した。その成果を実機のコンバインド火力(350MW出力)に適用し、実機での大規模計測に取り組み、従来手法と比較して冷却効率が向上し、1.4MW/台の増出力を確認した。この手法はコンバインド火力合計27ユニットに水平展開され、増出力約40MWを達成している。これらの活動は、震災後の需給切迫時においてコンバインド火力の増出力に寄与し、我が国の電力安定供給の一翼を担ったものである。

【優秀講演表彰】(敬称略)

<2014年度年次大会>

中島 雄太(熊本大)、「細胞-細胞界面あるいは細胞-基質界面の接着が細胞分化に与える影響の実験的評価」
米本 幸弘(熊本大)、「固体面上液滴の濡れ性に関する解析的研究」
瀬戸口 雄介(東大)、「ナセル搭載型LiDARを用いた風車入力風予測」
<第20回動力・エネルギー技術シンポジウム>
渡辺 瞬(電中研)、「旋回流を伴う流動場が流れ加速型腐食起因の減肉事象に与える影響」
一条 憲明(IHI)、「高レベル廃液固化ガラス溶融炉における電気抵抗トモグラフィの適用」
岸本 将史(京大)、「含浸法により作製したNi-GDC電極の3次元構造解析とモデリング」
<第23回原子力工学国際会議(ICONE23)>
三輪 修一郎(北大)、「Prediction of Two-phase Flow Induced Vibration using Artificial Void Signal」
佐藤 博之(JAEA)、「HTTR Demonstration Program for Nuclear Cogeneration of Hydrogen and Electricity」
伊藤 啓(JAEA)、「Physics-basis Simulation of Bubble Pinch-off」
椎原 尚輝(防衛大)、「Quantitative Measurement of Heat Transfer Fluctuation in a Pipe Flow Having an Orifice Plate Using High-Speed Infrared Thermography」
海保 和宏(電通大)、「Visualization of Bubble Nucleation Process during Water Subcooled Flow Boiling using a Transparent Heated Surface」

【フェロー賞】(敬称略)

<2014年度年次大会>
篠 直希(慶大)、「蛍光粒子を利用したガス流二次元温度・速度同時測定法の開発」

<第20回動力・エネルギー技術シンポジウム>
丸岡 成(横国大)、「ハニカム多孔体装着時の沸騰限界熱流束向上に寄与する液体供給メカニズムに関する検討」

<第23回原子力工学国際会議(ICONE23)>

齋藤 慎平(筑波大)、「Experimental Study on Jet Instability and Breakup Behavior in Liquid-Liquid System」