◇ 91期(平成25年度)部門賞及び部門一般表賞 ◇
部門賞「功績賞」「社会業績賞」および部門一般表彰「貢献表彰」は部門員からの推薦に基づき、優秀講演表彰及びフェロー賞は2012年9月より2013年8月までに開催された講演会の座長、聴講者による評価結果に基づき、部門賞委員会にて慎重に審議を重ね、運営委員会での議を経て、今般下記の諸氏に贈賞の運びとなりました。ここにご報告申し上げます。
【部門賞(功績賞)】
■片山 修造 氏(九電産業株式会社 取締役社長)
1967年九州電力(株)に入社以来、2009年取締役副社長・火力発電本部長を退任するまで、石炭火力発電所、LNGコンバインドサイクル発電所の計画・建設・運営に携わり、火力発電所による電力安定供給、設備更新工事、既設火力発電所の安全・安定運転に尽力し、火力発電所の熱効率向上に多大なる貢献をした。とくに、火力発電所燃料多様化に対応すべく、苓北石炭火力発電所の建設工事の完遂、地球環境問題に貢献するべく地元間伐材バイオマスを石炭と混焼(混焼率1%)する計画(2010年に実証試験が開始された)を策定した。また、新大分3-1号系列では1998年当時最新鋭の1300℃級コンバインドサイクルを採用するなど二酸化炭素排出7%削減の計画を推進し、熱効率向上(発電端49%HHV)に貢献した。さらに、九州の特性を活かした、八丁原地熱発電所において、国内初のバイナリー発電設備(2000kW)の建設ならびに運用開始、メガソーラ大牟田発電所(3000kW)の導入計画を主導するとともに、離島におけるマイクログリッドの実証試験も推進した。また、火力原子力発電技術協会・九州支部長、同調査研究事業委員会委員長なども務めた。これら長年の電力安定供給と火力発電所等地球環境対策への取組みなど、当分野の発展に寄与した功績は極めて大きい。
■小泉 安郎 氏(信州大学 教授)
小泉氏は動力エネルギーに関連する熱流体研究を中心に、基礎から応用にわたるまで、熱力学、伝熱工学、熱流体工学の発展に尽力し、多くの貢献をなした。同人が特に精力を傾注し、優れた実績を残したのは、ポストドライアウト領域における熱伝達に関連する一連の実験的・理論的研究である。伝熱管のドライアウト点下流における液滴、過熱蒸気および高温伝熱面の相互関係にいち早く着目し、熱伝達を予測するための精緻なモデルを、膨大な実験データを用いて構築した。このモデルは、国際的に高い評価を得て、原子炉の事故時予測計算コード等の基礎となっている。また、プール沸騰熱伝達に関する研究を実施し、MEMS技術により製作した表面を用いて沸騰現象の基礎を明らかにした。本部門に関しては、原子力工学国際会議(ICONE)の立ち上げを行うとともに、以後22年間にわたり中心的な役割を担ってきた。2011年には、ICONE学生プログラム継続実施により部門貢献表彰を受賞されている。また、毎年行われるようになった動力エネルギー技術シンポジウムを企画立案する等、部門の活動に指導的な役割を果たしてきた。以上のように、わが国の動力エネルギー技術の進歩・発展および本部門活動に大きく貢献された。
■矢内 銀次郎 氏(富士電機株式会社 元顧問)
矢内氏は1968年富士電機製造(株)に入社後、主に可変速電動機分野における設計・開発業務に従事するとともに、ドイツからの技術導入、企業や学会などの活動を通じて、動力技術及び省エネ技術の向上等に尽力し、国内技術レベルの向上に大きく貢献してきた。
主な成果として、直流機の分野では (1)日本初となる界磁反転方式可逆双駆動ミルモータの開発(2250kW,1970年) (2)前南極観測船しらせの推進用電動機の開発(1980年)による駆動特性の向上等があげられる。また、サイリスタモータの系列開発(1974年)等により交流可変速分野の礎を築くとともに、(3)製作当時 世界最大トルクのサイクロコンバータ駆動永久磁石電動機の開発(800kW,37.4rpm,1994年) (4)電気推進用大容量インバータ駆動永久磁石電動機の開発(5900kW,190rpm,2008年)等による省エネの実現と、その発展に大きく貢献した。さらに、(5)世界最大級の最大450MVA、22kVクラスのタービン発電機まで適用可能な全含浸絶縁設備の完成(1993年)等を通じ、回転機の絶縁技術分野の発展による信頼性向上にも貢献した。
【部門賞(社会業績賞)】
■David Miller 氏(University of Illinois 教授)
Miller教授は、アメリカでも珍しい原子力工学科教授と共にCook原子力発電所の放射線管理部長を併任しており、世界の原子力発電所の安全性向上と被曝低減に貢献している。日本機械学会の動力・エネルギーシステム部門内の原子力安全規制の最適化研究会で行われた3回のアメリカ調査団の調査に同行し、アメリカ原子力規制委員会(USNRC)本部、支部をはじめBrowns Ferry、Susquehanna、South Texas、Hatch、Diablo Canyon原子力発電所の訪問と徹底的な技術的な討議を企画され、効率的な調査を支援されている。この調査により、日本の原子力発電所の検査が、全て一律の検査から、PI(Performance Indicator)を導入し、運転実績により検査を変える大きな改革が可能となった。また日本の原子力発電所では行われていなかった状態監視保全の導入など様々な改善に貢献している。福島事故後も、日本機械学会のシンポジウムに参加され、TMI事故で行われた溶融燃料の搬出作業をはじめ、今後福島で行われる作業やロボットの紹介など、福島の復興に貢献されている。
【部門一般表彰】
○貢献表彰(敬称略)
■「東日本大震災後のガスインフラ早期復旧における都市ガス事業者の活動」、受賞者:一般社団法人日本ガス協会
全国209ガス事業者で構成される一般社団法人日本ガス協会は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災において、直ちに災害対策本部を設置し、情報収集、先遣隊の派遣を行い、速やかに被災事業者の復旧応援を実施した。供給停止があった事業者は8県の16事業者に及び、約46万戸の供給停止が発生した。復旧作業の応援要請があった事業者は8事業者(約42万戸)であり、これらの事業者に全国59事業者から復旧応援を行い、延べ10万人・日、ピーク時には1日4100名の体制で応援を実施した。仙台には震災翌日に先遣隊を派遣して復旧活動をスタートさせ、仙台市ガス局の約36万戸を4月16日に復旧完了とすることができた。仙台市ガス局以外の7事業者においても並行して復旧応援を行い、5月17日の石巻ガス復旧を以って応援対象とする全地域の復旧を完了した。今回の震災におけるガスインフラ復旧は、ガス業界として常日頃から二次災害防止に向けた緊急供給停止ルールの深化を図りつつ、過去の地震時復旧の知見を共有化し、それらを訓練等で見直し、定着を図ってきた成果の表れでもある。また、ガス事業者が着実に耐震化に努めたことで被害が軽減されたことも早期復旧に資した。これらは、様々な指針・手引きなどを日本ガス協会が定め展開してきたものであり、特に復旧応援については、昭和43年に同協会が「地震・洪水等非常事態における救援措置要綱」を定め、多くの地震、水害などで応援を行い、実績を上げている。今回の大震災において、短期間でガスインフラの復旧を実現できたことは、日本ガス協会を中心として都市ガス業界が一致団結して取り組んだ成果であり、ガスエネルギーシステムの信頼性についての社会的評価を高めることに貢献したと考えられる。
■「東日本大震災による壊滅的被災からの原町火力発電所の早期復旧と被災地貢献」、受賞者:樋口 康二郎(東北電力株式会社 原町火力発電所長)、宮崎 潔(三菱重工業株式会社 エンジニアリング本部)、上楽 知義(株式会社東芝電力システム社火力・水力事業部)、青木 薫(株式会社日立製作所 電力システム社 日立事業所 タービン製造部)、水野 和義(バブコック日立株式会社 呉事業所 建設部)、鈴木 安信(東北発電工業株式会社 理事原町支社長)
2011年(平成23年)3月11日14時46分、牡鹿半島の東南東三陸沖約130km付近、深さ約24kmを震源として発生したマグニチュード9.0の大地震は、東北地方太平洋湾岸を襲う大津波を伴い、各地に大きな被害をもたらした。東北電力褐エ町火力発電所も例外ではなく、震災発生時に高さ18mの大津波が襲来し押し寄せ引き、建屋は貫かれ設備はなぎ倒され、ほとんどの機器は浸水した。あまりにも深い爪痕のため被災後に示された発電再開目標は2013年夏前、被災から2年以上先であったが、原子力再稼働が見通せない中で経済性の高い同火力への戦列復帰への期待は大きく、また被災地南相馬地方の早期再稼働への期待も大きかった。現場では早期復旧に向けて努力が積み重ねられ発電再開目標を大幅に前倒し、ついに昨年11月に2号機が試運転入り、発電再開を果たし、同1号機も今年1月に後に続いた。現場の様々な工夫や努力、そしてメーカーや工事会社を含む働く人々の一体感と高いモチベーションが驚異的ともいえる発電再開前倒しを実現したものであり、被災地地元の期待に応えた復興に向けての貢献も極めて大きい。
■「地域エネルギーシステムSMARTに関する先駆的取り組み」、受賞者:毛利 邦彦(eL・パワー株式会社 専務取締役)
毛利氏は,分散電源を統合しITによるエネルギーの双方向性を狙った地域エネルギーシステムSMART(SMall Advanced Regional-energy Technology)を, 20年以上前の電源開発在職中から提唱し,自然エネルギーと分散電源システムに関する啓蒙および普及に尽力してきた.2005年には文科省コーディネーターとして,八戸市東部にある下水処理場,小中学校,八戸市役所に太陽光発電,風力発電設備等の分散電源を設置して,電力を自営線にて供給する通称「マイクログリッドシステム」の実証試験に携わった.また,東京海洋大学客員教授として,越中島キャンパスをモデルに大学におけるエネルギー費の低減,機器の運用管理(保守技術の習得),および防災と復災を含めた地域エネルギー供給を視野に入れた研究を進めた.これらの研究成果は,現在普及しつつある地域スマートメーターや緊急時船舶電源の活用につながるとともに,2010年から経産省の支援を受けて始まった横浜でのスマートシティプロジェクトにも活かされている.横浜プロジェクトは,(1)エネルギー(2)建物(3)運輸・交通の3分野を対象として,低炭素関連技術を活用した社会システムの構築を図るものである.さらに3.11の震災後は,被災した東北地域に再生可能エネルギーを上手に使うスマートビレッジを作るためにも尽力をし,野田村にスマート委員会を設置するとともに,洋野町の民有林に出力1500キロワットのメガソーラーを設置している.
○優秀講演表彰(敬称略、順不同)
<2012年次大会>
伊藤 章(デンソー),「BEMSエネルギー管理手法の開発」
品川俊太(東京大),「SOFC燃料極内におけるNiとYSZの配列制御」
佐藤一永(東北大院),「固体型電池の信頼性向上のための情報処理技術の活用」
<第18回動力・エネルギー技術シンポジウム>
ライン ザーザー(千葉大),「還流冷却装置を用いた高密度ポリエチレン(HDPE)の熱分解油化;生成油中のワックスの除去の検討」
内堀 昭寛(JAEA),「高速炉蒸気発生器の伝熱管破損時事象に対する解析評価手法の開発」
<ICONE-21>
Zhou Zhao(神戸大),「Transient Heat Transfer for Helium Gas Flowing over a Horizontal Flat-Plate with Different Widths」
Takuya Fukumoto(東工大),「A Study of Phased Array Ultrasonic Velocity Profile Monitor for Flow Rate Measurement」
Hiroshi Abe(東北大),「High Temperature Steam Oxidation Kinetics and Mechanism of SCWR Fuel Cladding Candidate Materials」
【フェロー賞】(敬称略、順不同)
小林 真人(筑波大),「回転円盤間狭隘領域における流動特性」(2012年度年次大会)
山田 創平(早稲田大),「垂直円管内上昇流の沸騰遷移と伝熱面温度の予測に関する研究」(第18回動エネシンポ)
Keisuke Asari(東大),「Fundamental Study to Evaluate Mechanical Property Change Associated to Dislocation Behavior in Irradiated Austenitic Stainless」(ICONE-21)
|