◇ 2011年度部門賞・一般表彰 ◇

 部門賞「功績賞」「社会業績賞」および部門一般表彰「貢献表彰」は部門員からの推薦に基づき、優秀講演表彰及びフェロー賞は昨年9月より本年8月までに開催された講演会の座長、聴講者による評価結果に基づき、部門賞委員会にて慎重に審議を重ね、運営委員会での議を経て、今般下記の諸氏に贈賞の運びとなりました。ここにご報告申し上げます。

【部門賞(功績賞)】

■藤井 眞澄(関電プラント株式会社 取締役社長)
 藤井氏は、1969 年関西電力株式会社入社以来、多数の火力発電所の計画・建設・運営に携わり、1998 年からは火力建設部長、火力事業本部長として舞鶴発電所建設工事や堺港発電所設備更新工事の推進、既設火力発電所の安全・安定運転に尽力するなど火力発電による電力安定供給、火力発電所の熱効率向上に多大なる貢献をした。また、ICOPE09 の副組織委員長や火力原子力発電技術協会会長も務めた。これら長年の電力安定供給と火力発電所高効率化の取り組みや国際会議運営など、当分野の発展に寄与した功績は極めて大きく功績賞に値する。

■久野勝邦(元株式会社日立製作所代表執行役執行役副社長)
 久野氏は、(株)日立製作所入社後、蒸気タ-ビン、ガスタービンの開発・設計に長期にわたり携わり、その技術を世界最先端の技術へと発展させた。蒸気タービンの分野では、(1)566℃用高温ロータ材の安定製造技術(2) 低圧ロータ用大径軸受の安定設計技術(3) 翼列周辺の三次元流路解析手法を飛躍的に向上発展させた。ガスタービン分野では、(1)60Hz用大型コンバイドサイクル発電所の建設・実用化(2) 同発電所用ガスタービンに採用した世界初の乾式低NOx 燃焼器の開発(3) 高性能中容量ガスタービンの開発・実用化が挙げられる。

■村木 茂(東京ガス株式会社 代表取締役兼副社長執行役員)
 村木氏は、東京ガス株式会社にて家庭用燃料電池等の高効率なガス機器の開発・普及に尽力されるとともに、過熱防止センサーを搭載した家庭用コンロの業界標準化等を通じて、都市ガス利用の高度化および安全高度化に多大な貢献を果たしてきた。学術面においては、東京大学大学院工学系研究科に「ホロニック・エネルギーシステム学寄附講座」、東京工業大学先進エネルギー国際研究センターに「スマートエネルギーネットワーク研究部門」を開設する一方、社内ではスマートエネルギーネットワーク実証研究を開始し、これらの研究成果を地域実証に繋げるなど、次世代エネルギー・社会システム研究に大きく貢献している。

【部門賞(社会業績賞)】

■藤井 照重(神戸大学・名誉教授)
 藤井氏は,動力発生プラントを対象とした気液二相流の流動特性に関する研究,発電システムやコジェネレーションシステムの熱力学的研究,宇宙太陽光発電システムや宇宙ステーションなど宇宙構造物の排熱システムに関する研究を行ってきた.その成果を学術論文(約265 編),著書「気液二相流の動的配管計画」,「コージェネレーションの基礎と応用」等にまとめた.本学会では,動力エネルギー部門の部門長を務めると共に,動力エネルギー国際会議(ICOPE)の企画・運営に尽力した.1995 年に発生した阪神淡路大震災においては,ボイラ被害調査委員会(日本ボイラ協会)副委員長,機械設備の被害調査分科会(本学会)委員として熱機器の被害状況の実態調査に尽力した.

【部門一般表彰】

○貢献表彰( 敬称略)

■「高温出力・産業用排熱利用ヒートポンプの開発」、表彰者:上田憲治、福島亮(三菱重工)、梅沢修一(東京電力)
 産業分野における省エネルギーとCO2排出削減を目指し、 130℃出力が可能な高温ヒートポンプを開発した。本ヒートポンプは、先端技術による高性能ターボ式圧縮機を備え、蒸気1t/h相当の大容量出力が可能なもので、世界初となる汎用製品技術である。工場排熱等の未利用エネルギーを回収することにより、定格COP3を達成する。本ヒートポンプは効率的に乾燥用熱風を生成することができることから、省エネ・環境負荷低減が期待でき、今回実工場の乾燥工程へ初導入された。この後、産業分野における高温の熱需要への幅広い適用が期待される。

■「モンゴル国の火力発電所運転効率化と環境改善への技術的貢献」、表彰者:安元昭寛(( 元)JICA・シニア海外ボランテイア)
 安元氏は70 歳になったとき,「これまでに培った電力技術を海外で役立てたい」と,国際協力事業団(JICA)のシニア海外ボランテイアとして,モンゴル国ウランバートルに赴き,第4火力発電所の技術・経営をサポートする業務についた.日本からの技術援助によりボイラの補機と計測・制御システム等が更新され,運転状態は極めて改善され,地元の人々から停電がなくなり大変感謝されている.

■「動力工学分野人材育成への貢献:ICONEにおける学生プログラムの継続実施」、表彰者:小泉安郎(信州大),樋口雅久(ITER),岡本孝司(東大),木倉宏成(東工大),大川富雄(電通大)
 エネルギー供給の柱を担ってきた原子力は1990 年代に入り若年者の関心が薄れていく傾向があった。そこで、今後の原子力発電所の安定運転・保守、あるいは将来のエネルギー問題への対応へ向けて、当分野の人材育成・技術継続が不可欠と考え、原子力工学国際会議(International Conference on Nuclear Engineering, ICONE)学生プログラムを立上げ、継続的に実施を行った。学生に原子力分野へ興味を向けさせるため、最先端の研究、技術に触れさせ、学会参加者と接触、討論の場を設け、将来進む分野選択に当たって原子力工学分野へ誘う努力・工夫を行ってきた。その結果として、ICONE 学生プログラム参加者の中から、日本では原子力分野に進んでいる者が多く出ている。

○優秀講演表彰( 敬称略)

<2010 年次大会>
堀部直人(京都大)、「燃料組成ならびに噴射条件が燃料噴霧の着火に及ぼす影響」
岸本将史(京都大)、「SOFCのアノード微構造定量化と電極性能」
上澤伸一郎(筑波大)、「定電流法による分散気泡流のボイド率計測」

<ICEM2010>
小林一三(鹿島建設), "Design Options for HLW Repository Operation Technology, (IV) Shotclay Technique for Seamless Construction of EBS"
三枝博光(日本原子力研究開発機構), "Technical know-how for modeling of geological environment (1) Overview and groundwater flow modeling"
石森健一郎(日本原子力研究開発機構), "Preparation of Reference Materials on Radiochemical Analysis for Low-Level Radioactive Waste Generated from Japan Atomic Energy Agency"
Rizwan Ahmed, (Kyung Hee University), "Characterization of Radioactive Waste from Side Structural Components of a CANDU Reactor for Decommissioning Applications in Korea"

<第16回動力・エネルギー技術シンポジウム>
森田良(電中研), 「高速湿り蒸気流中における液滴径の計測と評価式の提案」

<ICOPE-2011>
堀司(大阪大),"Enthalpy and Exergy Analysis of Domestic Desiccant Air Conditioner with Cooling Dehumidification and Heating Humidification Using Process Simulator"
中尾吉伸(電中研),"Development of Plant Performance Analysis System for Geothermal Power Plant"
頼泰弘(京都大),"Experimental Study on a Compact Methanol-Fueled Reformer with Heat Regeneration using Ceramic Honeycomb (2nd Report: Reaction Region Detection by a Positive Ion Current Probe)"
橋本迪矩(神戸大),"Three-Dimensional Visualization of Water Behavior in Polymer Electrolyte Fuel Cell by using Neutron Radiography"

【フェロー賞】
ア田容平(大阪大),「高温場におけるアルゴン希釈がフラーレン・PAHの燃焼生成に及ぼす影響」(動エネシンポ)
井原智則(東工大),「溶融ガラスの超音波特性と流速計測に関する基礎研究」(動エネシンポ)