◇ 2010年度部門賞・一般表彰 ◇

 部門賞「功績賞」「社会業績賞」および部門一般表彰「貢献表彰」は部門員からの推薦に基づき、優秀講演表彰及びフェロー賞は昨年9 月より本年8 月までに開催された当部門に関係する講演会の座長、聴講者による評価結果に基づき、部門賞委員会にて慎重に審議を重ね、運営委員会での議を経て、今般下記の諸氏に贈賞の運びとなりました。ここにご報告申し上げます。

【部門賞(功績賞)】

■秦野 正司((株)ジェイペック 代表取締役社長)
  秦野氏は、国内外における多数の発電所の計画、建設、運営に携わり、近年では、火力建設部門の幹部として熱効率改善の決め手である超々臨界圧(USC)発電プラントの建設計画を推進した。また電源開発株式会社副社長として原子力発電所のウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の利用推進、新耐震指針対応等の安全対策に尽力するなど、火力・原子力発電による電力安定供給、火力発電の熱効率向上に多大なる貢献をした。

■浜松 照秀((財)電力中央研究所 名誉特別顧問)
  浜松氏は、発電所冷却水対策、蓄熱(蒸気貯蔵)発電、21世紀火力新技術開発戦略の策定(エネ庁および電力)、石炭および重質油ガス化発電(IGCC)、フロン・超臨界圧CO2給湯ヒートポンプ、エネルギーチェーンなどのエネルギー技術・問題に関する研究・開発に従事した。特に、空気吹き石炭ガス化炉基本技術の開発、IGCC パイロット機・実証機の支援研究による貢献、給湯用ヒートポンプの研究・開発について主導的な役割を果たすとともに、ガスタービン高温部品保守技術研究や発電・エネルギーシステム汎用解析技術開発の立上げと推進において多大な貢献を行った。

■大地 昭生(東北大学大学院 教授)
  大地氏は蒸気タービンを中心とした火力発電プラント機器のエンジニアリング・開発・設計に永年携り, わが国の火力プラントの高温高圧化, 大容量化技術を牽引し, 蒸気タービン技術の発展に大いに貢献をした。1989 年に運転開始した中部電力(株)川越火力700MW はわが国初の超々臨界圧火力プラントで, 蒸気圧力30MPa, 蒸気温度566℃の2 段再熱サイクルを採用し, 従来の超臨界圧プラントに比べ相対値で5% の効率向上を達成しているが, この中で, 材料開発, システム開発を中心的に牽引し, その功績により1991 年, 第37 回大河内記念賞を受賞している。

【部門賞(社会業績賞)】

■水町 渉((独)日本原子力安全基盤機構)
  水町氏は改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の世界初号機のプラント設計、単純化BWR の国際プロジェクトでの国際的な活躍により、国際原子力機関(IAEA)とOECD/NEA を共同事務局とする国際職業被曝情報システム(ISOE)の投票により日本人初の議長に就任した。氏は北米ISOE 委員会から 2008 Nuclear Professional of the Yearを、JSME標準・規格センターからは本年3 月に標準事業表彰(国際功績賞)を受賞し、国内外で高く評価されている。

【部門一般表彰】

○貢献表彰(敬称略)

■「動力・エネルギーの理解を深める親子見学会の立上げと継続実施」、受賞者(代表): 小澤 守(関西大学)、大島 宏之(JAEA)、伊藤 俊之(電気系統利用協議会)、茶木 雅夫(日立GE ニュークリア・エナジー)、梅沢 修一(東京電力)、浅野 等(神戸大学)、渡邉 勝信(東芝)
  子供達の理工系離れ・学力低下による技術立国日本の将来を危うくする現状や、理解不足によるエネルギー・環境問題の深刻化する中で、表彰グループは、地道な歩みではあるが動力エネルギーシステム部門の社会貢献の一環として親子見学会の企画を2004 年に立ち上げ、機械の日のイベントとして定着させる基盤を築いた。ここでは通常の工学施設見学に留まらず、機器操作や実験・工作、研究員によるディスカッション等、能動的な体感・体験をふんだんに取り入れ、科学技術, 動力・エネルギーへの理解を深めてもらうために様々な工夫がなされた。

■「空気吹き石炭ガス化複合発電(IGCC)の基盤技術の開発と長期連続運転による技術実証」、受賞者(代表): 高畠 英章(CCP 研究所)、角田 哲郎(石炭ガス化複合発電技術研究組合)、犬丸 淳(電力中央研究所)、品田 治(三菱重工)
  受賞グループは、世界初かつ純国産技術である空気吹き IGCC の基盤技術を確立し、2008 年度に250MW 級実証機の長時間連続運転を成功に導いた。特に、IGC 組合が空気吹き噴流床式石炭ガス化複合発電パイロットプラントにおいて基盤技術を確立したこと、ならびに実証機において長時間連続運転を目指し、プラント現地での試行錯誤の積み重ねによる実証技術の開発など、ユーザとメーカが一体となった技術開発を進め、本技術を日本が海外に売り込める世界トップ水準の技術として確立させた。

■「日本初の商用プルサーマル発電への貢献と実施」、受賞者: 工藤 和彦(九州大学 高等教育開発推進センター 特任教授)、九州電力株式会社 玄海原子力発電所
  九州電力玄海原子力発電所3 号機で、2009 年12 月2 日に国内初のプルサーマル商用発電が開始された。工藤和彦氏は、唐津市や玄海町において開催されたプルサーマル公開討論会のパネリストや、玄海町原子力対策特別委員会での講師等を通し、当初は極めて困難な状況の中住民の理解促進に努め、プルサーマル導入に大きく貢献した。住民の理解が進む中、玄海原子力発電所では燃料輸送、点検装荷、発電開始まで、様々な技術的課題を総力あげ克服し安全を確認し、国内初のプルサーマル商用発電にこぎ着けた。資源小国日本にとって、国が進めるエネルギー政策の重要な柱であるプルサーマル商用発電の大きな先駆的足跡である。

■「中越沖地震の影響評価調査研究と地震対策及び再起動に向けた提言と先駆的役割」、受賞者: 中越沖地震の柏崎刈羽原子力発電所への影響研究分科会、代表者 岡本 孝司(東京大学)
  上記分科会は新潟県中越沖地震による柏崎・刈羽原子力発電所の被害とプラントの状況について、いち早く現地調査を行い、重要度分類、余裕の考え方、技術課題と研究・開発ロードマップ、グッドプラクティス、及び広報と報道のあり方について調査検討し、柏崎・刈羽原子力発電所の各プラントが、「止める」、「冷やす」、「閉じこめる」機能を達成し、安全であるかどうかを調査検討した。その結果に基づきとりまとめた中越沖地震の影響評価と地震対応及び再起動に向けた提言は、その後の地震対策及び再起動への大きな先駆的貢献となった。

○優秀講演表彰(敬称略)

<ICOPE-2009>
  山田 敏彦(IHI), "Study Results of Oxy-fuel Combustion on Callide Oxy-fuel Project (Activity     toward the commercialization of oxy-fuel combustion system) "

< 第15回動力・エネルギー技術シンポジウム>
  大岩 徳雄(中部電力)
     「, バイオマス利用スターリングエンジン発電システムの実証研究」
  田中正暁(原子力機構)
     「, T 字合流部における渦構造と温度変動に関する数値解析」

<ICONE-18>
  森 真子(日立GE ニュークリア・エナジー),
     "Improvement of Flange Tightening Method for Small Bore Low Rating Bolted Flanges"
  南 則敏(関西電力),
    " Study on Countercurrent Flow in a PWR Hot Leg under Reflux Cooling"
  岩田 圭弘(原子力機構),
    "Improvement of the RIMS Detection Sensitivity for Application to Failed
     Fuel Detection and Location System of the Fast Reactor"

【フェロー賞】

  中塚 記章(大阪大),
    "Removal of Tar in Producer Gas by Clarifying the Combustion Mechanism
     of the Inverse Diffusion Flame(" ICOPE-2009)
  松元 佑樹(筑波大),
    "Transition of CO2 Hydrate Film Thickness with Time Progress"( ICOPE-2009)