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両下肢障害者用スキーの開発にあたって

秋田大学工学資源学部
機械工学科4年 夏井 直樹

 私は、平成9年4月に秋田高専から秋田大学へ編入してきました。初めの一年間(大学3年の間)は高専時代と同じ内容の講義が多く、また講義数もそれほど多くないため、私の大学生活はさほど充実していませんでした。そのせいといっては言い過ぎですが、私はアルバイトと遊びに明け暮れる毎日を送っていました。
 平成10年4月、私は無事大学4年生となり、希望していた土岐研究室にも入ることができました。さすがに大学4年生ともなると就職活動や卒業研究(もちろんアルバイトや遊びも)などで、昨年とは違う忙しい日々を送っています。
 さて私がなぜ土岐研を選んだかというと、卒業研究のテーマに「両下肢障害者用スキーの開発」というものがあったからです。私は趣味でスキーとスノーボードをやっています。ですからこのテーマを見つけたときは、自分で作った両下肢障害者用スキーが滑走しているのを想像し、「これしかない!」と思い決めました。
 両下肢障害者用スキーと聞いて、皆さんは普通パラリンピックで見た様なスキーを想像すると思います。この両下肢障害者用スキーは、チェアスキーとも呼ばれており、非常に滑走性能が高いため競技大会で使用されていますが、かなりハイレベルな技術を必要とするため、これからスキーを初める障害者がレジャースポーツとして気軽に楽しむのはやや困難です。そこで私たちは、両下肢に障害を持つ人々が、スキー経験がなくても安全で手軽に楽しめる両下肢障害者用スキーを、設計開発することを目標として研究しています。従来のチェアスキーと大きく異なる特徴としては、スキー板を2本用いて安定性を向上させることと、パラレルターンやプルーク姿勢による制動を、レバー操作などにより簡単に行えるようにすることがあげられます。これらを実現するために、私は、今まで自分の感覚で当たり前のように行ってきたスキーターンを、初めて科学的な視点から見てその基本原理を学びました。率直な感想としては、「スキーターンの原理は以外と単純なんだな。」と思い甘く見ていました。しかし、この原理を応用して両下肢障害者用スキーのモデルを製作していくうちに、様々な問題が発生し、改めてもの作りの難しさを実感しました。まあでも、問題を一つ一つ解決していくことによって得られる達成感や充実感がたまらないんですけど。
 現在、様々なスポーツにおいて、その動作解析と機械による復元が試みられています。人間の動作、例えばただの歩行動作であっても、それと同様の動きを機械によって再現するのは非常に難しく、まだまだ未解決の問題がたくさんあります。私は、そこにこれらの研究のおもしろさがあると思います。皆さんもこのような研究をしてみては?
 最後に、私は今、自分たちが作り上げた両下肢障害者用スキーを滑らせる日が来るのを、とても楽しみにしています。早く雪が降らないかな。(完成まではまだまだ遠いけど…。)


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