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創刊号に寄せて〜ある町工場

山形大学工学部機械工学科3年
         小野 宏明

 大学に入学して以来、文章を書くというのは実験のレポートくらいのものだったので、原稿を依頼されたときは大変困りましたが、ある機械科の学生を紹介します。
 彼は現在米沢市に住んでいる機械工学科の3年生で、講義が週12時限とその他に実験と製図があるそうですが、とても難解な設計製図には苦労しているそうです。(担当の先生いわく、「一日24時間のうち7時間は製図ができる」そうです。)そんな彼ですが、その忙しい製図の合い間をぬって近くの自動車部品工場で、社会勉強のために?アルバイトをしています。そのアルバイトは、切削油で手が汚れるし、切粉が目に入ったりしてあまり割に合わないと始めは言っていましたが、日がたつにつれ、そこの従業員に感心するようになったそうです。彼は定年退職間近の老人と共に仕事をしていたそうですが、その老人は自信と誇りを持って仕事に励み、残業を苦にせず、少しでも不良品を出さないように努力していたそうです。そしてその老人は彼に、ノギスの使い方から図面の寸法の見方、不良品の判別の仕方までこと細かに教えたそうです。彼は大きな企業の工場見学に行っだこともありますが、日本の工業を支えているものは、そのような企業ではなく、全国に何万とある小さな町工場で夜中まで働いている人達であるとつくずく思ったと言っていました。


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