日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第119号

旧和中散本舗の人車製薬機

 滋賀県栗東市の旧東海道沿いにある、重要文化財の「大角家住宅」は、江戸時代には「和中散本舗」と称し、生薬の和中散(胃腸薬)の他、五冷散、神教丸、天真膏、万金丹などを製造、販売していた。その生薬の製造に使われたのが、“人車製薬機”である。この人車製薬機は、1831(天保2)年に設置されたもので、直径1丈4尺1寸(4280mm)の人車(木製大輪)の中に2人の人間が入って歩くと、人間の体重により回転力が生じ、その動力を4枚の木製歯車で伝え増速して、乾燥して細かく刻んだ薬草などを粉砕する石臼を回転させる仕組みである。人車と石臼の速度比は3:10で、人車が3回転すると石臼は10回転する。
 人間を動力源とした“人車”は、大陸から伝来した機構と考えられ、機械技術の発達の歴史を語る貴重な資料である.旧和中散本舗の人車製薬機は、他の現存する足踏み力を動力とする機械や道具の中でも、歴史的にも古く、当時は店先で加工の様子を見せる広告媒体としての役割も持っていた。この人車製薬機は機械と人間社会のつながりの一端を示している。

《写真提供:栗東市教育委員会》

公開(事前予約制)

旧和中散本舗

開館時間:
10:00~16:00位まで
利用料:
大人500円 小人(小・中学生)200円
利用できない日:
お盆・年末・年始 他
住所:
〒520-3017 滋賀県栗東市六地蔵402
電話番号(公開施設):
077-552-0971
交通機関:
JR手原駅から徒歩30分

« 第118号 前に戻る 第120号 »