日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第40号
たま電気自動車(E4S-47 Ⅰ)
ガソリンの供給が制限され非常に不安定であった第二次世界大戦直後、自動車会社への転換を模索していた立川飛行機が、供給に余力のあった電力に着眼し開発に着手、1947(昭和22)年に完成した乗用車タイプの電気自動車である。会社所在地の名前を取って「たま」号と命名された。木骨鉄板張りの構造で、電動機は36ボルト120アンペア、蓄電池は40ボルト162アンペアのものを二分割して車体下部に搭載し、最高速度35km/h、1充電での走行距離65kmであった。この後順次改良型が開発され、東京ではタクシーとして利用された実績も有する。そして1949(昭和24)年に発売された「たまセニア」号では、1充電200kmの走行が可能になった。これは現代の電気自動車と同等以上の航続性能であったが、ガソリンの供給状況の好転と蓄電池材料の価格高騰により、一連の開発が中止された。
この自動車は過去に一度放棄された技術も再び必要になることもあること、社会的な受容態勢がなければ一時のブームに終わることを示す重要な実物教材である。
現状は一部電気配線が更新されているものの基本構造は当時のままである。設計資料も多くのものが現存しており、わが国の自動車開発史を語る上でも貴重な遺産である。
《写真提供:日産自動車株式会社》
公 開
日産 グローバル本社ギャラリー
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