社団法人日本機械学会

技術者と資格について

技術士や振動の状態監視診断技術者のカテゴリーⅣの資格は、実際の仕事で必要だったからでしょうか。

 【山口】  私の場合は必要というよりは、自分のために取得しました。やはり自分自身の技術を深めたいということですね。資格を取るために勉強しますので、それでさらに向上できるだろうということで資格を取得しました。  技術士を取ると、勉強をしていかなければいけないという義務と、「技術士」という品格を落としてはいけないというのがあります。自分のアウトプットに対してものすごく責任が大きくなって、よく考えるようになりました。だから、そういう意味でもよかったのかなと思います。

 技術士の取得についてなのですが、技術士試験は2段階になっていますよね。1次試験は機械の幅広い分野の知識が必要です。それを会社に入って30代、40代、50代になってもう一回勉強しようと思っても難しいですね。私は大学院の入試が終わった直後に1次試験を受けました。自分の腕試しというつもりで受けたのですけれども、マークシート型式で結構楽しく受けられました。これを多分40代になってやると苦痛以外の何者でもなくなるので、技術士になろうがなるまいが、やはり若いうちに1次試験は受けておいた方がいいですね。
 
 それともう一つは機械の状態監視診断技術者、これは端的に言うと機械の異常を、どうやって検知して直していくかというようなことだと思います。例えば、振動ですと、検知するためにこんなものをはかりなさい、センサーはこういうものがありますよ、周波数分析というのはこういうふうに、FFTというのはこういうメカニズムで、こうやると間違うよとか、そういう話や、回転体と静止体が接触するとこんな振動が出るよ、というような大学では教えてくれない内容です。トレーニングが1週間ぐらいあって、その後、試験を受けるようなシステムです。ですから特に設備診断とか振動、特に回転体の振動を目指される方にはものすごくいい勉強になります。
 
 ちなみにこの機械の状態監視診断技術者の「カテゴリーⅣ」は振動の診断に関する広い知識を必要としますので、そのまま技術士につながります。これに加えて、技術士はレポートをきっちり書くことが重要で、その点を強化して、頭が温かいうちに振動制御で技術士を取得いたしました。また、技術士取得には機械学会誌がとても役に立ちましたね。技術士取得には広い知識が要求されますので、1年間分機械学会誌をしっかり読みました。1年間、いろいろな機械工学の分野でどんな問題がクローズアップされているのかを知ることができ、とくに8月号の年鑑は1年間機械系分野でどういうアクティビティがあったかがまとめられていますので、それがとても役に立ちました。

機械の状態監視診断技術は世界的に通用する資格なのですか。

【山口】  そうですね。ISOに基づいて世界で行われています。相互認証というのがありまして、機械学会と、例えばアメリカで初めにこの資格を始めたVibration Instituteというところがあるのですが、そういうところとは相互に認証して、同じカテゴリーは同じ資格として国のパートナーをだんだん広げていっています。
 また、資格が必要とされる仕事があります。その1つが原子力関係で電気技術指針ですね。その中で回転機械の振動診断技術の技術者の力量要件というのがあり、計測する人はカテゴリーⅠ以上もしくは機械保全技能士の2級以上、その評価をする人はカテゴリーⅡ以上もしくは技能士の1級以上というふうなことが明記されています、最近ですが。そういうところはこの資格がないとできません。



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