第88期部門長挨拶
2010年度の情報・知能・精密機器部門長を仰せつかりました福澤健二と申します.当部門の設立は1991年で,機械学会の中では比較的若い部門ではありますが,会員みなさまのたゆまぬ努力により着実に発展してまいりました.今後も若さを強みとして部門活動のさらなる発展に努めてまいりたいと存じますので,よろしくお願い申し上げます.
さて,みなさまご存じのように,19世紀の軍人で科学者であったカルノーは,当時の先端機械というべき蒸気機関について,その効率に限界はあるのか,効率を最大にするにはどうしたらよいかという産業上の欲求から,有名なカルノーサイクルに至ったそうです.そして,この成果は熱機関の発展,さらに熱力学の確立に大きく寄与しました.翻って,情報・知能・精密機器部門のホームページ上のポリシーステートメントを見ますと,「本部門は,高度情報化社会の基盤となる各種情報・知能・精密機器を対象として,そのテクノロジーの学問的基盤を確立するとともに,それらの創造と発展に寄与することを目的として設立された」とあります.まさに,当部門はカルノーと同様の志を持って,先端機械の学理を確立し産業の革新を図っている部門であります.実際,これまでにもカルノーの成果を思い起こさせるような数々の研究成果が生まれております.そして,この志の実現には,これまで取り組んできた分野の着実な発展と新たな分野への展開が重要です.具体的には以下のように考えております.
分科会:「柔軟媒体ハンドリング技術及び応用プロセスに関する調査研究分科会」が新設され,新たな柱を構築するべく活発な活動が始まっております.また,既設の「知的システムに関する調査研究分科会」に加えて「機械の知能化に関する学際領域研究分科会」も新設され,当部門の重要領域である知能機械の分野がより活性化されることが期待されます.分科会活動は学会活動の原点と言われますから,よりいっそうの充実を図っていく必要があります.
部門講演会:部門の学術活動の中心である部門講演会については,分野の広がりと講演件数の増加が着実に達成されてきました.今後も会員にとってさらに魅力的な講演会とする企画を検討したいと思います.
サマースクール:2007年度から始められましたサマースクールも4年目を迎え定着してまいりました.学生に対して,講演会などでは得られない密な交流の場を与えるというユニークな企画であり,今後も継続的な発展を図ります.
講習会:講習会の企画には,会員のニーズを的確に把握することが求められます.そのため講習会のテーマ選定は容易でありません.タイムリーな話題を扱ったものに加えて,継続的に会員のニーズに応え定番企画となるような講習会についても模索していきたいと思います.
広報:今年度から,インフォメーションメールを部門から会員に直接発信できることになりました.従来の本部からの発信に比べ,タイムリーに発信できますので,よりきめ細かくかつ効率的な情報提供を行います.部門のホームページ「http://www.jsme.or.jp/iip/index.html」 もリニューアルを進めておりますので,ぜひご覧下さい.
当部門との関わりが深いマイクロ・ナノ工学専門会議について,次年度以降体制が発展的に変化する可能性がありますが,協力的な連携を維持していきたいと思います.加えて,国際化への対応,競争激化による企業の学会離れなど,部門として直面する課題は枚挙にいとまがありません.歴代部門長をはじめ会員みなさまにより,解決の種がまかれてまいりました.その中には芽が出たもの,順調に育ち実を結んだものもございます.これらを育て部門活動の活性化に微力ながら尽力する所存でございますので,会員みなさまのご協力をよろしくお願い申し上げます.