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第86期部門長挨拶


第86期部門長
高橋 宏

 日本機械学会 情報・知能・精密機器部門第86期(2008年度)部門長を拝命いたしました高橋と申します.どうか,よろしくお願いいたします.

 自動車の知能化に関する研究に従事しております.現在大学教員ですが,2006年度まで私企業の研究所に勤務しておりました.その時も,客員教授として大学と会社の二足のわらじを履いており,学生にとっての学会活動や企業内のエンジニアにとっての学会の役割などについていろいろ考えさせられました.講演会などで自分の発表だけしてすぐ帰ってしまう学生や日々の業務に追われ分科会開催の見学会などに出席することすら躊躇する企業内研究者などいろいろな問題に接してきました.「こうした問題の一端は,魅力ある学会活動が十分できていないことによるものではないか?」という自問自答が私の今期行動指針の原点になっております.

 学会における部門活動の目的は,当該関連分野に興味のある方々すべてに研究・議論の場を提供し,個々の興味が部門活動を通して,Synergeticに広がり,深まっていくことと認識しております.こうした部門活動の意義を再確認しながら,改めて私は,誰もが,「参加したくなる部門活動」の企画・定着を目指してゆきたいと考えております.

  私事で恐縮ですが,私が新入社員だった20年ほど前,学会の研究会や分科会(見学会)などに参加し,いろいろな先生方やライバル会社のエンジニアと意見交換をし,議論しながら自分の考えを見直す素晴らしい機会を得た経験があります.学会への参加は,視野を広げ,人的なネットワーク構築を図る絶好の機会であると信じています.

  学会内での専門分野が細分化され,また,学際的な研究分野の拡大によって,一つの学会,一つの部門の持つ役割が大きく変わってきていることも確かです.それだけに,20年前のように同じ問題意識をもった人たちが同じ課題を解決するために意見を戦わすという場面が起こりにくいことはあるかもしれません.しかし,技術者,学究者として本質を突きとめようとする情熱,好奇心,興味という本質的な部分は変わっていないはずです.ならば,今の学会は,こうした技術者の本質を満足する活動を十分にやっているのかという視点に立って見直す時期のような気がします.「知りたい」「議論したい」という根源的な欲求をかなえる学会でなければいけないと考えています.

 微力ではありますが,歴代部門長や本部門で活躍いただく諸先輩方のご意見,お力をお借りしながら,こうした理念に基づいた部門イベントを仕掛けてゆく所存です.具体的には,昨年度,佐藤前部門長が始められましたサマースクール(他大学の学生が集まり,技術について語り合う1泊の合宿)を部門行事として定着することに努力し,また,新しい学会会員の活性化方策として,学生を対象に「会社起業に関する講演会」,地域の産業とかかわりを持ちながら具体的に事例を紹介する「産学連携講演会」などを企画準備中です.

 情報・知能.精密機器部門は歴史的に企業と大学のつながりが深く,ある意味,大学で発明した技術を具体的な製品として世の中に出してゆく成功体験を持った先生方がたくさんいらっしゃいます.その意味で,ものつくりを具現化するノウハウが集まった部門であるといえます.このノウハウを部門の柱の一つとして活用していくべきであります.

 大学の先生にとって議論を深める場として,学生にとって工学とは何かを他流試合を通して体現する場所として,そして,企業内エンジニアにとって先進技術をモノづくりに具現化する知恵を得る場として,少なからず本部門が機会を提供できればと願っております.

関係各位の今までのご尽力に深く感謝するとともに今後ともお力をお貸し願いたいと切望する次第です.

Last Modified at 2008/6/11