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2023年度部門表彰者の声:ベストプレゼンテーション表彰
株式会社東芝
碓井 隆
この度は,IIP2023において発表しました「構造物モニタリングのための超低消費電力アコースティック・エミッション振幅頻度分布センサー」に対し,情報・知能・精密機器部門ベストプレゼンテーション表彰を頂きありがとうございます。本発表が,聴衆が理解しやすくかつ聴衆へのアピールが特に顕著に認められた,との評価を頂けたことを大変うれしく思います。
本発表の内容は,非破壊検査技術の一つであるアコースティック・エミッション(AE)法に基づく構造物のモニタリングを,超低消費電力で実現する新しいセンサーエッジデバイスを提案するものです(図1)。これまでのAEシステムではカバーできない超低消費電力化と長距離無線伝送機能を,独自のアナログ−デジタル協調信号処理技術によって実現しました。試作機を用いた検証の結果,ランダムに発生させた疑似AE信号を検出し,材料の健全性指標となるAE振幅規模別頻度分布を無線送信することが可能であることを実証しました。また実測した消費電流に基づくシミュレーションでは,1日あたり20万ヒットのAE発生数を仮定した場合に,200 μA以下の平均消費電流で動作可能であることを示しました。AEセンサーは高い周波数帯域と微小信号を扱うシステムが要求されることから,これまで消費電力の観点でIoTセンサーとしての活用が限定的でした。本センサーによって、一次電池を用いた長期動作が可能になり,低照度環境下の太陽光パネルや振動発電等のエナジーハーベスティングデバイスによる動作も可能になってくると考えられます。このような手軽な後付けセンサーで健全性に関わるデータを長期間蓄積できるようになれば,そのデータベースはインフラ・非破壊検査業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)においても重要な役割を担うことになると考えています。引き続き本技術の社会実装へ向けて鋭意努力してまいります。
最後に日本機械学会 情報・知能・精密機器部門の益々のご発展を祈念し,御礼の挨拶とさせていただきます。
図 1 AE振幅頻度分布センサーを用いた計測システムの概念図