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2023年度部門表彰者の声:功績賞

株式会社東芝
冨澤 泰

 この度は日本機械学会情報・知能・精密機器(IIP)部門功績賞を頂くこととなり、大変光栄に存じます。IIP部門とは、学生の頃にMIPE’97に参加して以来、2009年からは部門主査として運営に携わるなど非常に関係が深く、2022年度には節目となる第100期の部門長を拝命致しました。今回の受賞に際しては、こうしたこれまでの取り組みをご評価頂けたことを大変嬉しく感じております。

 思い返しますと、MIPE’97に参加した際、ハードディスク等の情報機器からメカトロニクス、マイクロナノデバイスに至るまで、極めて多様な製品分野・学術分野のいずれも最先端を扱っているIIP部門の懐の広さと深さに感銘を受けたものです。その後、時代の流れの中で多くの工業製品が世代交代を迎えましたが、それに合わせてIIP部門もIoTやAIといった新たな技術分野をフレキシブルに取り込んで行きました。そして、20余年を経て先月開催された2024年度IIP部門講演会では、コロケーション開催のパートナーである生産システム部門を始め、マイクロ・ナノ工学部門、機械力学・計測制御部門、日本非破壊検査協会、日本画像学会といった多くの部門・学協会との連携セッションが開催され、その技術的多様性は全く色褪せておりません。私はIIP部門がポリシーステートメントにおいて、機械工学の4力学を「縦糸」に譬えた上で自部門を「横糸」と位置付けていることを大変気に入っているのですが、先に述べたような動きはまさに「横糸」の面目躍如といったところではないかと思います。

 ただ、日本機械学会内でも他部門や他学協会との連携が盛んに推奨されている中、「縦糸」が以前ほど明確に「縦糸」に留まり続けることはなくなり、「横糸」との違いは徐々に曖昧になってきていると感じます。「シンギュラリティ」という言葉が語られるようになって久しいですが、近年の生成AIの急激な進歩を目にすると、いずれAIの前に全ての学術分野が意味を失うといった極端な悲観論に対しても現実味を感じずにはいられません。そうした世相の中で、もつれ始めた「縦糸」と「横糸」をどのように解きほぐし、再定義していくかは、日本機械学会のみならず全学協会共通の課題であると言えるかもしれません。このような議論において、元祖「横糸」として多くの技術の栄枯盛衰の中を生き抜いてきたIIP部門が果たせる役割は、決して小さくないだろうと考えています。私もこれまでIIP部門とともに研究生活を送ってきた手前、今後のこのような大きな流れの議論の中で、僅かにでもお役に立つことができれば幸いです。

 最後になりますが、今回の受賞はひとえに、これまでの部門の活動を支えて下さった多くの委員や会員、職員の皆様のご支援があってのことと存じます。この場をお借りしまして、改めて篤くお礼申し上げます。今後もIIP部門と日本機械学会の発展のため、皆様のお力添えの程をどうぞ宜しくお願い致します。

Last Modified at 2024/4/22