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2023年度部門表彰者の声:優秀講演奨励賞

名古屋大学
野末 拓海

 この度は,日本機械学会IIP2023 情報・知能・精密機器部門(IIP部門)講演会において発表致しました「環境温度変化による位置変動を抑制したナノレオロジー計測用温度制御ステージの開発」に対し,IIP部門優秀講演奨励賞を頂き大変光栄に存じます.本研究を進めるにあたり,日頃よりご指導・ご鞭撻を頂いた伊藤伸太郎先生、福澤健二先生、東直輝先生、張賀東先生に厚く御礼申し上げます.

 受賞致しました本研究は,独自のずり粘弾性計測法であるファイバーウォブリング法(FWM)を用いて,ナノすき間でせん断される高分子添加潤滑油のずり粘弾性の温度依存性を定量化したものになります.温度依存性を計測する上で,FWM用加熱ヒーターや固定治具の熱膨張,環境温度変化の影響により加熱中にしゅう動すき間(ステージ面の位置)が数十nm程度変動し,ナノすき間を精確に設定した計測が困難でした.そこで,熱伝導物質として熱伝導率が高くかつ柔軟に変形する液体金属(ガリウム)を介在させ,ヒーターの熱膨張の影響を低減する加熱ステージ構造を提案しました.また,試料基板を保持する固定治具には有限要素法を用いた熱伝導解析による材料の最適化を行い,熱伝導率および熱膨張率が低いスーパーインバー鋼を採用しました.その結果,開発した温度制御ステージでは,加熱時におけるステージ面位置の変動を通常の実験室環境下において±1nm以下の精度で一定に保持することに成功し,ナノすき間を精確に設定した温度依存性計測を可能としました.

 来年度から現在の研究分野に関連した企業で社会人として働くことになるので,今回の受賞を励みに精進していく所存です.最後になりますが,日本機械学会情報・知能・精密機器部門(IIP部門)の益々の発展を祈願し,受賞のあいさつとさせて頂きます.


Fig.1 Schematic of FWM setup. (a) Newly developed heating stage and (b) comparison of time displacement of gap variation.

Last Modified at 2024/4/22