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2023年度部門表彰者の声:ベストプレゼンテーション表彰
関西大学
小金沢 新治
この度は,IIP部門ベストプレゼンテーション表彰にご選出いただき,感謝申し上げます.
受賞のコメントを執筆するようにとのことですので,この機会に,受賞となった研究を簡単に紹介させていただき、感謝の言葉に代えさせていただきたいと思います.
現在、日本には73万もの橋梁があり,10年後にはその60%以上が老朽化の目安である建築後50年を経過します.一方,保全のための点検は、依然としてスキルを持った作業員による目視や打音検査などによって行われていることが主ですが,作業人員や予算の不足などの理由から、点検・補修に手が廻っていないという実状が報告されています.そこで,我々は,人手をかけずに橋梁の健全度合いを診断するシステムを作りたいと考え,図に示すような超磁歪材料を用いた振動センサを開発しました.このセンサの大きさは直径90mm程度です.このセンサは橋桁と橋脚の間に挟むように設置し、橋桁の変位を受けて発電する仕組みです.超磁歪材料を適用したことにより,固有振動モードを利用しなくても,大きな電圧(電力)を出力することができ,振動センサとして利用していないときには発電機として二次電池を充電することができます.その電力を利用してシステムを稼働し,橋梁の健全度合いを診断し,診断した結果を無線通信で送信します.つまり,電源が不要で,必要な電力をシステム自身で賄える「自立型の橋梁の健全性診断システム」の実現を目指しています.
これまでの研究により,道路橋では1時間に80mJ以上,鉄道橋では8両編成の電車の一回の通過により約100mJの発電量を実地試験により確認しています.これは一日に一回のシステムの稼働には十分な電力ですが,より交通量の少ない地方への展開を考え,さらに発電性能を高めたいと考えています.今回発表した内容は,このセンサをさらに高出力化するための磁気回路設計に関するものです.磁歪材料内部の磁場を均一にするセンサ構造とそのシミュレーション結果を示しました.
今回いただきました賞は,今後の研究の励みとなります.今後も,開発中のシステムを社会実装し,交通インフラの保守・保全に貢献していけるよう努力を続けて参ります.
Fig.1 Self-powered vibration sensor system
Fig.2. Vibration sensor