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2022年度部門表彰者の声:ベストプレゼンテーション表彰
東京都立大学
木 天斗
この度は日本機械学会2022年度年次大会において発表した「皮膚の近赤外透過光画像を用いた血糖値推定のための基礎研究」に対し、情報・知能・精密機器部門ベストプレゼンテーション表彰をいただき大変光栄に存じます。この場をお借りして、本研究を遂行するにあたり、御指導と御鞭撻を賜りました東京都立大学 角田直人 教授に対して、深く御礼を申し上げます。
本研究は、ヒト皮膚を通過する透過画像を元にした血糖値測定デバイスの開発を目的とした研究です。波長可変レーザ光源からの光を手に直接照射し、手を透過した光を近赤外カメラで撮影することで透過画像を取得します(図1)。ヒト皮膚内の物質の吸収の影響を調査するために、光源の波長にはグルコースの吸収ピーク、タンパク質・脂質の吸収ピーク、水の吸収が大きい波長を用いました。得られた透過画像は、血中グルコースの吸収や散乱などを反映したもので、人ごと・波長ごとに異なる光強度や分布を示しています。皮膚の厚さや皮膚の水分量、皮膚の組織構造などの個人によって異なる特性の較正や、グルコース以外の物質による外乱の除去を目的に、機械学習アルゴリズムの一種である畳み込みニューラルネットワークを用いて、皮膚の透過画像から血糖値予測を試みました。健康な成人男性数人を対象に評価を行ったところ、臨床的応用に十分な精度を達成しました。
来年度からは今の研究分野を離れて社会人になりますが、今回の受賞を励みに精進していく所存です。最後になりますが、日本機械学会情報・知能・精密機器部門のこれから益々のご発展を祈念し、御礼の挨拶とさせていただきます。
図1 実験装置概略図と撮影部位