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2022年度部門表彰者の声:ベストプレゼンテーション表彰
株式会社東芝
宮ア 史登
この度は、2022年3月に開催された情報・知能・精密機器部門講演会にて発表いたしました「仮想回転制御を用いた角度直接検出型MEMSジャイロセンサ(RIG)の開発および地球自転検出の実証」に対し、ベストプレゼンテーション表彰を賜り誠にありがとうございます。
今回受賞対象となりました研究は、角度の直接検出が可能なMEMSジャイロセンサ(Rate Integrating Gyroscope:RIG)に関して、高精度化・小型化を実現したものとなります(図1)。
MEMSジャイロセンサは、過去30年で飛躍的に進歩してきた分野であり、現在はスマートフォンから産業ロボットに至る幅広い分野に適用されています。これらは一般に、回転時に生じるコリオリ力を角速度としてとらえています。
一方近年、MEMSセンサ素子の構造対称性を飛躍的に高め、フーコーの振り子のように励振させることで、角度の直接検出を可能とするMEMSジャイロセンサの研究開発が国内外で盛んに進められています。このセンサは、従来のMEMSジャイロセンサと比べて高度な制御技術(素子対称性を高めるための電気的補正制御、振り子の振動制御)を必要とするため、高価なFPGA等での動作が必要とされる中で、本研究では、マイクロコントローラによる安価で小型なモジュール化に成功しました。
また本センサは、素子非対称性が残存することで、超低角速度領域での測定不可領域が生じることが課題でありましたが、常時一定回転を印加する仮想回転制御技術を用いることでその課題を回避し、低速から高速まで幅広い角速度領域での検出を可能としています。それらの結果、本センサの安定性(Bias Instability)は0.1deg/hと、産業機器用途に適用可能な精度を実証しました。その適用例として、本研究では角度情報として地球の自転検出を実施し、検出軸方位と自転速度の依存性から、方位角の検出精度について検証を行いました。
本受賞を励みにして、世界に役立つ研究開発に向け、より一層努力を重ねてゆくと共に、最後にこの場をお借りして、共に研究を邁進してきた共同研究者の皆様、また受賞にあたりご支援を頂きました関係者の皆様に深く御礼申し上げます。
図1 角度直接検出型MEMSジャイロセンサ(RIG)モジュール