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2021年度部門表彰者の声:優秀講演論文賞
神奈川工科大学
大瀧 保明
このたびは2021年度 日本機械学会 情報・知能・精密機器部門 部門賞 優秀講演論文賞の栄誉に賜り、幸甚に存じます。研究の途上にある発表内容に対し、このように高いご評価をいただき恐縮しております。授与の主旨には、研究が与えうる社会的インパクトのご指摘がありました。このことは研究の背景や目的が、技術の適用先である「臨床」をよく知る先生方に下支えされていたためにほかなりません。常々有益な助言をいただきました臨床工学技士の先生方、同僚の先生方に深く感謝申し上げます。当研究は元々学生の着想によるものでもあり、年々の卒業研究での学生諸氏の取り組みも思い起こされるところです。
本件は「透析用穿刺針に搭載する慣性センサによる穿刺手技の計測」と題して日本機械学会IIP2021講演会にて発表しました。透析治療に不可欠な穿刺の技能の評価、特徴化に焦点をあて、穿刺角度の3次元計測のために、実際の穿刺針にそのまま搭載可能な小型慣性センサによる方法を提案するものでした。基礎的な研究段階として穿刺熟練者と未習熟者の比較から、事前の触診や臨床的叡智に基づく行動意図の結果としての刺入角度やタイミングの差異を示し、技能を評価するうえでの有用性を検討しました。慣性センサは重力成分を含む加速度情報や地磁気の取得による姿勢計算に利用しましたが、両手指を駆使して狭い領域で短時間に達成される穿刺手技の計測に利点のある方法でした。昨今、センサの電源や通信周辺の回路を含めて小型のセンサモジュールとして入手できるようになったことも、アプリケーションの構想を後押しするものであると思います。目下、計測技術としておざなりになっていた幾つかを精査し、信頼性を高めるべく研究を継続しております。求められる場との関係性を大切に、技術を適応させる取り組みのなかで、新たな発想や知見を追及してまいります。引き続き、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
写真:センサを取り付けた透析用穿刺針(発表時の資料より)