Home > ニュースレター バックナンバー > IIP部門の「中の人」
IIP部門の「中の人」
氏名:正宗 賢
IIP部門での役割:総務委員会委員長(2021年度)
所属: 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所・教授
出身は工学部精密機械工学。精密機械技術といえば、精密加工技術や時計などを思い起こすかもしれませんが、現在は設計、ロボット、MEMS/NEMS、光計測、医用機器などの要素研究から応用研究まで多岐にわたった技術を扱います。その中で私は、医科大学に籍を置き、知能、情報、精密をフルに活用する医療に資する研究開発を行ってきました。医療は技術の発展と共に進歩しており、特にこの100年の間に、他分野の技術発展と同様に医療も高度化し発展してきています。21世紀はまさに知能・情報が機械に搭載され融合されていくフェーズであり、IIP部門の研究分野はもってこいであります。
医療機器の研究開発の難しさは、その複雑性にあります。たとえ優れた技術があったとしても、それを社会実装するには乗り越えなければならない社会的な壁がいくつも存在します。例えば研究倫理、薬機承認をうけるための様々な規制やガイドライン、品質保証といったものから、保険償還、ビジネスモデルなど、ステークホルダーを一通り俯瞰しながら研究開発を進めることが最近では特に求められています。アカデミアに属する研究者がそこまで考える必要性があるかと言えば、研究段階では無いとも言えますが、研究成果を社会に還元する必要性は今後益々出てくるものと思います。企業の研究者も昨今は社会実装の点を考慮する必要性があるのかと思います。
特に医療機器開発の場合、最終的に研究開発の目的は治療すること、人の生命・生活の質の向上をはかることです。一方、手段としての工学・技術は一通りではありません。上述した制約を勘案した最適手法を持ち寄ることが求められます。その点が常に悩みの種でありますが、逆に新規性に満ちあふれる魅力的な分野でもあり、同様の悩みを抱えている研究者は是非IIPにご参画いただきたいと思います。横繋がりが広いので、新たな発見や気づき、交流があるかもしれません。
最後に学生さんに対するメッセージです。どの研究分野も同じですが、研究の先にどのような世界が望めるのか?と問いながら研究を進めることはとても大事なことです。現在の研究をより一層深めつつ、学会等で得られた新しい考え方や知見を積極的に取り込み、皆さん自身の研究分野の“再定義”をすることで、新たな展開が得られることと思います。ぜひ皆さんは次の部門・分野を開拓していくような研究を邁進していただければと願っています。