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IIP部門の「中の人」
氏名:谷 弘詞
IIP部門内での役割:部門長 (2021年度)
所属:関西大学システム理工学部機械工学科 教授
「猫と摩擦発電」
修士修了後,就職して日立製作所小田原工場ヘッド・ディスク設計部(当時)に配属されたのは35年前でした.そこではハードディスクドライブ(HDD)に組込まれる磁気ディスクの設計・開発に携わりました.2年目に出した特許が磁気ヘッドとディスクの間にバイアス電圧を印加して浮上量を制御しようというものでしたが,その当時は未請求でそのままボツでした.現在では,ヘッドとディスク間にバイアス電圧を印加してヘッド浮上量を調整する技術が実際に適用されているそうです.そのころから,日々の業務は行いつつも自分の興味でいろいろな実験を行い,学会活動にも目を向けるようになりました.そこで出会ったのがIIP部門でしたが,実際に機械学会に入会して正式にIIP部門に参加したのは,21年務めた会社を退職し,関西大学へ移ってからでした.そのころにはHDDに関係する研究も少し下火になる雰囲気がありましたが,大学では引き続きヘッドディスクインターフェース(HDI)のトライボロジーの研究を行っています.しかし,HDI領域の研究が年々減っていく中で,これではまずいということで,新たな研究テーマも同時並行で進める必要が出てきました.
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ちょうど6-7年前になると思います.ラーメン屋でラーメンを食べた帰りに公園を通りかかると捨てられた子猫が3匹いて,その傍でおばあさんが「台風が来てるから,このままこの子猫を放置したらきっと死んでしまう,拾ってやって」と私に言うのです.どちらかというと犬より猫派の私はその気になって3匹の内1匹を自宅に連れて帰りました.実際に飼ってみると,これが可愛くて,子供よりかわいく思えます.(今では2匹増えて3匹の猫がいる家になってしまいました.)さて,この猫が新たな研究テーマのヒントをくれました.猫を抱っこして撫でていると夏の湿度が高い時期は気になりませんが,冬の湿度の低い時はビリッと静電気を感じます.この静電気こそ手と猫の毛の摩擦によって発生する摩擦帯電によるものです.ちょうど振動発電が注目されており摩擦発電もありだなと考え,早速google検索をかけると米国のジョージア工科大で精力的な摩擦発電が研究されていたものの,日本ではまだほとんど行われていませんでした.また,摩擦発電と言いながら,2面間の接触状態や摩耗についての研究もされておらず,実用化にはまだ遠い印象を受けたのでした.そこで,摩擦発電をトライボロジーの観点から取り組もうということで始めました.現在はタイヤの中に発電機を組込み,タイヤの圧力モニタリングシステムの電源として実用化を目指しています.猫はかわいいだけでなく,アイデア創出にも役立ちますね(笑) (おわり)