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【研究室紹介】関西大・谷研究室
関西大学システム理工学部
機械工学科
谷 弘詞
研究室の概要
我々の関西大学機械設計研究室では、「ナノトライボロジー」と「ナノメカトロニクス」をコアの研究領域とした活動を行っています。特にハードディスク装置のナノトライボロジー、カーボンナノチューブに代表されるナノカーボン膜のトライボロジー、マイクロ・ナノアクチュエータのMEMSに関する研究などを中心に、社会に役立つ研究によるブレークスルー技術の創製に取り組んでいます.
主な研究テーマ
(1)ヘッド・ディスク・インタフェースにおけるナノトライボロジーに関する研究
ハードディスク装置におけるヘッド・ディスク・インタフェース(HDI)では、数nm隙間での空気膜流体潤滑、分子薄膜潤滑膜、極薄膜カーボン保護膜などナノメータスケールのトライボロジー現象が多く存在します.従って、分子薄膜潤滑膜の挙動やHDIにおける接触現象などに着目して、その現象解明を行っています.具体的には各種潤滑剤のナノ流動特性、磁気ヘッドへの潤滑剤のピックアップ現象、次世代熱アシスト記録方式における革新的HDIなどの研究に取り組んでいます.具体例を一つ示します.
【潤滑膜の拡散挙動と分子動力力学計算からのアプローチ】
磁気ディスク上に塗布されている潤滑剤は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)と呼ばれるフッ化炭素系の液体潤滑剤です.このPFPE潤滑剤は、分子末端に水酸基(OH)や環状トリフォスファゼンの官能基を持ち、 その官能基で磁気ディスクのカーボン保護膜との吸着性をコントロールします.近年、磁気ヘッドの浮上量がDynamic Flying Height (DFH) コントロール技術を用いて、数nm以下の高さに制御されているため、 潤滑膜の厚さ(もっとも一般的な潤滑剤FomblinZ-tetraol2000sの場合で、1.5-1.7nm程度)と同程度となり、 場合によっては磁気ヘッドが磁気ディスク上の潤滑剤をピックアップします.そのようなピックアップを避けるためには、潤滑膜の厚みを出来る限り薄く均一であることが好ましく、より薄く均一に磁気ディスク上に存在可能な潤滑剤の分子設計を行い、潤滑剤を開発する必要があります.そこで、 潤滑剤の拡散挙動やAFMを用いた潤滑膜の直接観察により、 潤滑膜の単分子膜厚計測と分子動力学(MD)計算による単分子膜厚の推定を行い、 分子構造と単分子膜厚との関係をもとに潤滑剤分子設計の指針を得ることを目標に研究を進めています.
Fig.1には、潤滑剤を磁気ディスクにハーフディップし、無潤滑面と潤滑面の境界部での潤滑剤の拡散挙動を測定した結果を示します.潤滑剤が拡散すると、単分子膜厚に等しい膜厚でテラス構造が観察されます.このテラスの高さ、つまり単分子膜厚は潤滑剤の構造や磁気ディスクとの吸着性によって異なります.Fig.2にはMD計算によって潤滑剤分子が保護膜上にどういう形態で吸着するかを推定した結果を示します. Z-tetraol2000sの場合には潤滑剤分子はランダムコイル状に丸まっていますが、TA-30の場合には、 主鎖が剛直なため丸まらずに保護膜に伸びた形で存在します.このように、いろいろな潤滑剤の分子構造と単分子膜厚との関係を調べることで、 分子構造をどう設計すれば、より薄く被覆率の良い潤滑膜を形成することができるかを研究しています.
(1)Fomblin Z-tetraol | (2)AGC TA-30 |
Fig. 1 Monolayer thickness evaluation by spreading profiles on magnetic disks. | |
(1) Fomblin Z-tetraol | (2) AGC TA-30 |
Fig.2 Conformation of lubricant molecules estimated by MD simulation. |
(2) ナノカーボン保護膜のトライボロジー特性に関する研究
カーボンナノチューブにPFPE潤滑剤を塗布した境界潤滑特性、フェムト秒レーザで形成した周期構造上のDLC保護膜のトライボロジー特性など、基礎的研究にも取り組んでいます.
(3)MEMS/NEMSアクチュエータの研究
PZT素子駆動による多層光ディスク用のマイクロミラーアクチュエータ機構の研究など、MEMS/NEMSアクチュエータの開発を行っています.
社会貢献
日常の研究活動を通じて、社会に出て日本の技術を支えうる幅広い知識と責任感を持つ有為な人材の育成を目指しています.また、関係企業やコンソーシアムとの産学連携共同研究や学会活動を通じて、研究成果を産業界へ還元するとともに、社会へ多大な貢献をすべく、日々活動しています.
その他、詳細は研究紹介HP http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~hrstani/index.htmをご覧ください.