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2010年度「IIP部門学生サマースクール」報告
東洋大学
松元明弘
IIP部門では,第4回めとなる学生サマースクールを2010年8月31日(火)〜9月1日(水)に開催しました.これまでの開催地は,埼玉県秩父市,長野県諏訪市,埼玉県熊谷市であり,今年は山梨県笛吹市の石和温泉郷にある石和びゅーほてるにて開催しました.参加したのは東京,埼玉,神奈川の4大学5研究室から学生教員を含め78名で,非常に盛大でした.
学生サマースクールは, IIP部門で活躍している研究室の学生を対象とした企画です.通常の学会講演会では十分な討論の時間が取れないなど,技術的な「学生の交流の輪」が十分形成されていないのが現状です.本企画は,学生中心の発表・討論の時間を十分とることによって,学生の主体的交流形成を促そうというものです.さらに,IIP部門に関連する技術動向の講義,プレゼンテーション技術の実践,大学で得た知識を企業でどのように活用していくかといった講話を通して,実践的な知識の獲得をしてもらいたいという考えから企画を行っています.今年の内容は以下の通りでした.
【8月31日(1日め)】 (9:20 新宿駅西口または川越駅西口集合,バスで石和温泉に移動) | |
13:30 − 15:30 | オリエンテーション(スポーツ交流) 山梨県青少年センターにて実施, その後ホテルに移動 |
16:00 − 18:00 | IIP関連技術に関する講演2件 |
19:00 − 21:00 | IIP関連技術の指定テーマ(当日発表)に対するグループ討議 |
【 9月 1日(2日め)】 | |
9:00 − 12:00 | 前日指定したテーマに対するグループ別発表会 |
12:30 現地出発,15:15頃新宿駅西口または川越駅西口に到着,解散 |
さて,学生サマースクールは前述のとおり4回めのため,スケジュールはほぼ例年通りです.まずはスポーツで交流をしてある程度打ち解けてからグループ討議に進みます.所属大学が分散するように作成したグループ分けに沿ってチームを構成し,ソフトバレーで交流を行いました.ソフトバレーはスポーツの得意な人とそうでない人の差が出にくいためそれぞれが楽しむことができ,また勝負をつけることでチーム内の結束力が高まりました.
場所をホテルに移してから夕食までの間に,学生向けの講演会を行いました.基本的には,学術的な話題と共に産業界からの話題という,異なる視点からの話題を提供するというのがこのサマースクールの特徴です.まずは五十嵐洋先生(東京電機大学)には,「協調する知能機械」というタイトルで,先生の御研究である機械・ロボットの知能化についてお話いただきました.研究事例として五十嵐研究室で行っている「ロボットとロボットの協調」,「ロボットと環境の協調」,「人間と人間の協調」,「人間とロボットの協 調」について紹介していただきました.また高橋宏先生(湘南工科大学)には23年間日産自動車に勤務されたという立場から「今から準備してほしい新入社員の心構え〜企業で必要とされる人材になるために〜」というタイトルで,ご自身の失敗談を含む経験談,常に自分の結果に満足せず更なる視野を広げる努力を絶え間なく行うことの必要性,自分の活動を客観的に見直すことの重要性などを話していただきました.学生たちが講演後にたくさんの質問を寄せたことから関心の高さがわかりました.共に,学生のみならず教員にとっても有益な講演だったと思います.
その後,幹事からグループ討議のテーマとして,「情報端末機器の未来」が公表されました.学生たちはこのテーマに関して夕食後の時間帯を利用してグループ討議し,翌日のプレゼン大会に備えます.プレゼンでは,アイデアを検討し,いくつか浮かんだアイデアに関して実現可能性について議論します.プレゼンでは主張を通すための論理をうまく展開する必要がありますし,パワーポイントによる発表技術も要求されます.グループメンバー間の役割分担も決定しなければなりません.グループメンバーは午後の時間帯にスポーツを同じグループで行ってある程度打ち解けているとは言え,普段別々の研究室で活動している学生ですので最初はなかなか議論がまとまりません.そういった状況でもプレゼン資料としてまとめていく必要があります.そのため各部屋では最後は真剣な意見交換がなされていました.短い時間の中でこういったプロセスを経験していきます.ここがこのサマースクールにおける狙いの一つであり,最も大事な部分です.一方で,せっかくの機会ですので,他大学の学生との親睦も忘れていませんでした.学生たちは一応のまとめの後,他の部屋や教員の部屋を訪れ親睦を図っていました.ただその間も,さりげなく他の部屋の情報収集を行い,プレゼン内容の微修正をしていたグループもあるようです.
日付が変わって2日目の午前.夜遅くまでの討論や交流のおかげで眠そうにしている学生もいましたが,部屋ごとのグループのプレゼンの後には厳しい質問や指摘がされるので,自分たちの番が回ってくるまでには緊張の時間を過ごしていました.普段の研究室内での討論とはまた違った緊張感を味わうことはよい経験になります.最後には5研究室の教員からの総評があり,厳しい意見・励ましの意見などいろいろな有益なコメントをもらうこともできましたので,学生たちには大きな収穫となったことでしょう.
最後になりましたが,講師をしていただいた五十嵐先生と高橋先生には厚く御礼申し上げます.興味深い話題を提供していただいてサマースクールとして価値あるものにしていただきました.さらに,無償の講演でしたので会の運営責任者としては財政上からもありがたく思います.また,幹事を担当した東洋大学の染谷君・張君・西原君は,前年の幹事団からのアドバイスをもらいながらなんとかうまく運営をしてくれました.当初の参加予定者が直前で予定変更になる中での部屋割り・グループ分け,人数が多いので飲み物や菓子類の手配も大変です.その努力には頭が下がります.また他の学生たちも,幹事の3人をよくサポートしてくれました.多くの人々の協力によって,今年のサマースクールも成功裡に終了することができました.来年以降もこういう地道な活動を継続していきたいと思います.
なお,この活動は今年4月に開催された日本機械学会総会にて「教育賞」を受賞しました.その詳細は別記事にて報告しますが,草の根的な地道な活動が日本機械学会の部門レベルでなく学会全体で認められたことは大変光栄なことです.また企画運営している側にはとても励みになりました.教育に関する活動は継続が必要だからずっと続けなさいという意図なのでしょう.ここに記して感謝します.
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