05年度部門表彰者の声

 部門功績賞 三枝省三氏 (広島大)

部門功績賞を受賞して

  この度は、栄誉ある部門功績賞を頂き、喜びを隠し切れません。過去、本功績賞はIIP部門に多大な功績を残した諸先輩の方々に送られてきたもので、私もその仲間入りをさせて頂けること、誠に感謝申し上げます。

  私のIIP部門との関わりは、1983年CDプレーヤ開発の最初の立ち上げに携わったことから発しています。1980年代半ば、まだ当部門が委員会と呼ばれていたころの講演会に、光ヘッドに関連した発表を何度かしております。さらに光ディスク装置や磁気ディスク装置の開発を担当して、多いに関係が深くなりました。1993年からは、表彰委員会、事業委員会、学術委員会、運営委員などを担当し、その間2回の国際会議運営を経験しました。これに刺激され、2004年度の部門長時代には、国際化を推進しようと「情報機器に関する国際シンポジューム」を企画、また足元固めを目的に5つの研究会を作り上げました。最近はASME/ISPS部門と共催の国際会議(MIPE06)をサンタクララにて開催したばかりで、そのときはワシントン大学のShen教授と共同議長を仰せつかり、成功裏に終えることが出来ました。これらの活動を関係の皆様と共に推進できたことが、また皆様の多大な協力と叱咤激励を頂いたことが、今回の受賞につながったものと思って感謝しております。

  世界情勢と経済環境の大きく変化する中で、機械学会IIP部門もまた大きな曲がり角に来ており、そのあるべき姿を見直す時期であるという認識は今も変わっておりません。先日の国際会議の実行委員会反省会においても、ISPS側の新議長とその認識を深めてきたところです。当IIP部門が日本の技術の発展に寄与すると同時に、世界に情報発信するグループとして、一層の活躍を祈願いたします。私も大学へ転身したことも含め、これを機に新たな気持ちで部門に貢献し、新たなと課題へ挑戦したいと思っています。

  簡単ですが、受賞の言葉に代えさせて頂きたいと存じます。
  ありがとうございました。

 



  部門優秀講演論文賞 尾山敬一氏 (元・東京電機大)

講演論文賞を受賞して

  この度、部門優秀講演論文賞を頂き、大変光栄に思っております。このようなすばらしい賞をいただけたのも、関係者各位のご支援・ご協力があってのこととあらためて深く感謝する次第です。

  本論文は、東京電機大学理工学部佐藤太一教授の元で行った研究を講演論文にまとめたものです。研究は、擬態語が人の感覚・感性と密接に関係していることに着目して,擬態語の工学的な利用を試みようというものです。そこで、人に擬態語の発声音を聴かせ,人の動作を制御できるか否かについて基礎的な実験を行いました。その結果、人の声に含まれる感情と、人がその声を聞いて行う動作の間に密接な関係があることがわかりました。     「擬態語が人の動作に与える影響」ということで、始めた研究でしたが、なかなか結果が出ず、四苦八苦しておりました。しかし、無事学会で発表を行えるまでにまとめることができました。ひとえに、佐藤太一教授のご指導のお陰です。また、研究に際し、協力していただいた方々にも、感謝しております。

  また、学会において、発表後の質疑応答は大変参考になりました。発表に至るまでの議論や、多くの人からのアドバイスで色々と気づかされたことがありました。

  現在は就職し、研究とは直接関係の無い業務についておりますが、働いていく上での基礎的な姿勢や、考え方などは、研究活動を通して培われてきたものと考えております。

  最後に、本論文をまとめるにあたりご指導を頂きました佐藤太一教授、本論文に関わった方々、そして本論文を推薦して頂いた皆様方に改めて、御礼申し上げます。この賞に負けないよう、精進していきたいと思います。今後とも、よろしくお願いします。



  優秀講演奨励賞 白松利也氏 (日立グローバルストレージテクノロジーズ)

講演奨励賞を受賞して

  2005年9月に発表いたしました「マイクロ熱アクチュエータを搭載した浮上量調整スライダの開発(第2報)」に対し、この度2005年度の優秀講演奨励賞をいただくことができました。他に多くの優れた発表があった中で賞をいただけたことを大変うれしく、光栄に思っております。

  本論文の内容を簡単に紹介させて頂きます。磁気ヘッドスライダの浮上量の個別ばらつきおよび使用条件による変動を補償して一定かつ最低限の浮上量を保つため、報告者らは、磁気ヘッドの製作工程で微小熱アクチュエータを埋め込み、それを用いて浮上量をその場調整する技術を開発しています。本論文では前試作の残課題である低消費電力化及び応答性の向上を果たし、記録素子/再生素子/アクチュエータの合計6端子を実装して装置レベルの評価を行いました。その結果、前試作を超えるアクチュエータ性能を実現し、装置レベルでの記録再生能力の向上を確認しました。

  最後に,研究内容を発表する機会を頂いた日本機械学会情報・知能・精密機器部門の方々および学会関係者各位,これまで御指導頂いた方々にこの場を借りて深く感謝申し上げます。これからも、この受賞を励みと致しまして、今後いっそう研究活動に精進して参りたいと存じております。



  ベストプレゼンテーション賞 徐佑昔氏 (東工大)

ベストプレゼンテーション賞を受賞して 【ECFを応用した高発熱電子チップのための強制液冷システム】

  <研究概要>
  近年,電子実装技術の著しい発展にともない,代表的な電子チップの一つであるコンピュータのCPUの高集積化および高性能化が急速に進展しているが,その際,CPUの熱設計電力が100Wに達するなど,CPUの排熱は重要な問題点として浮上してきている.とくに,ノート型PCのように制限された実装空間をもつシステムにおいては,CPUの性能の限界はその冷却システムの能力によって決定されるため,次世代ノート型PCのためには新冷却システムの開発が不可欠である.強制液冷方式は,既存の空冷式およびヒートパイプ式より高い排熱能力が期待されるため,薄いノート型PCに実装可能な強制液冷システムの開発の必要性が高まっている.

  一方,電界共役流体(Electro-Conjugate Fluid,以下ECFと呼ぶ)は,特有の物性をもつ誘電性の液体であり,液中に挿入された電極に直流高電圧を印加すると電極間に活発な流動が生じる機能性流体である.このECFの流動現象をポンプに応用することにより,可動部がないシンプルで薄い平面構造をもち,スイッチング回路が不要な直流電圧で駆動できるポンプの実現が期待できる.

  本研究では,制限された実装空間をもつ次世代ノート型PCのCPUを含む高発熱電子チップの強制液冷システムの実現を目的として,線状電極で直流高電圧を印加すると電極間に活発な流動が生じるECFを作動流体とした可動部がない単純な構造をもつA4サイズの平面形ECFポンプを試作し,その平面形ECFポンプを流体パワー源とした強制液冷システムを構築している.さらに,試作した平面形ECFポンプおよび強制液冷システムにおいて,ポンプの出力特性および液冷特性の実験的検討を通じてその有効性を明らかにしている.

  <喜びの声>
  このたびは,栄えあるベストプレゼンテーション賞をいただき,誠にありがとうございます. このような栄えある賞がいただけましたのは,関係された多くの先生方のご指導,ご助言によるところが大きいことは言うまでもありません.

  受賞した研究は,工学および工業的な応用に関心が高まっている機能性流体の一つである電界共役流体(ECF)を応用した平面形ポンプの開発とそのポンプを高発熱電子チップのための強制液冷システムに応用し,その有効性を確認したものです.今後も,この受賞を励みといたしまして,よりいっそう研究活動を進めてまいりたいと存じております.どうもありがとうございました.



  ベストプレゼンテーション賞 中村滋男氏 ((株)日立製作所)

ベストプレゼンテーション賞を受賞して

  この度は,IIP部門のベストプレゼンテーション賞を賜りまして,大変光栄の至りです.

  受賞の対象となりましたのは,2005年3月のIIP2005部門講演会で発表しました「回転円板と静止壁の間におかれたHGAの流体起因振動」です.この発表は,(株)日立グローバルストレージテクノロジーズ在籍時に,当時の同僚や日立グループの関連部署と協力して行った研究成果をまとめて発表させていただいたものです.

  磁気ディスク装置の記録密度の増加に伴い,記録・再生ヘッドの円板半径方向の位置決め精度を向上させる必要があります.ヘッドの位置決め精度を向上させるためには,他にも多くの努力を必要としますが,HAG(Head Gimbal Assembly,ヘッド支持機構)の流体起因振動,すなわち,円板の回転に伴い発生する流体力を加振源とするHGAの振動を小さくすることも必須であります.「風乱」「HGAフラッタ」”Windage”などとも呼ばれているHGAの流体起因振動を低減する目的で,多くの研究がなされていますが,その多くはHGAの構造に関するものでした.私達は,HGAの流体起因振動の低減には,その特質を良く把握する必要があると考え,様々な条件下で測定したHGAの流体起因振動を整理し,また,HGA周囲の流速も測定しました.その結果,HGAの流体起因振動の振幅は,HGA周囲の流体の平均流速に大きく依存することを示すことができました.このことは,磁気ディスク装置内の流路を設計する際,HGAに当る風の平均流速を小さくすれば良いことを意味し,磁気ディスク装置機構系の設計におけるひとつのメトリックを提示できたものと自負しています.

  「どうやったらHGAの流体起因振動を小さくできるか」ということが次なる課題となりますが,それにつきましては,2005年9月の年次大会で議論させていただきました.ご興味のある方は,講演論文をご参照いただけますと幸いに存じます.

  なお,発表タイトルにあります「回転円板と静止壁の間」というのは,磁気ディスク装置におけるベースと最下円板の間,または,トップカバーと最上円板の間を意味しており,本発表における,代表的な測定条件を示したものです.

  最後に,共同発表者をはじめとする本発表に関係してくださった皆様,そして本発表を推薦して頂いた皆様に,この場をお借りして,御礼申し上げます.



  日本機械学会フェロー賞 根反祥史氏 (東北大)

学会フェロー賞を受賞して

  この度05年度日本機械学会IIP部門フェロー賞を受賞することとなり、身に余る光栄です。受賞知らせを受けたときには大変驚きました。現在は受賞の喜びとお世話になりました方々への感謝の気持ちでいっぱいです。

  今回受賞の対象となったのは「前立腺癌・肥大症判別用指装着型能動センサの開発」という題目の研究です。近年、男性高齢者に、前立腺癌および肥大症の発症が多く見られます。それらの病状の診断は、主に医師が自らの指を患者の肛門より挿入し患部を直接触り、前立腺の硬さや形状の判別することで行います。しかし、これでは評価結果は医師の主観や経験に大きく左右されるということが挙げられます。そこで本研究で開発した指装着型センサは、診断を行う医師の指に装着することで、これまでと同様の感覚で診断を行いながらも、客観的な評価結果を得られることを目的としたものです。センサはPVDFフィルムという圧電材料を用いた小型のものです。さらに、センサ本体とは別に、センサを装着した指の付け根部分に小型モータを巻きつけます。センサを使用する際には、指に装着したセンサを診断対象の患部へ押し当て、小型モータにより一定周波数の振動を指全体に加えることで、PVDFフィルムによる正弦波の出力波形を得ます。この波形の振幅は患部の状態によって異なるので、センサを用いた前立腺の症状判別が可能となります。

  センサの作製はやってみないと分からないことが多く試行錯誤の連続でした。このセンサシステムの案は研究に協力していただいた医師との相談を経て生れたものです。患者に対して安全、かつ現場で医師が使用しやすいセンサを目指すという考えから生れたものです。

  今年度から私はこの研究を離れ、直接的な関係はないのですが、新たにHDDの研究開発の業務に取り組んでおります。本研究を通して学んだ物事への取り組み方、アプローチの方法などを今後に生かし、是非一線で活躍できるよう精進したいと存じます。

  最後になりましたが、本研究をまとめるにあたりお世話になりました先生方に厚くお礼を申し上げたいと思います。また、研究に惜しみない協力をいただいた先輩方、関係者の皆さまに深い感謝の意を示したいと思います。誠にありがとうございました。



  日本機械学会フェロー賞 冨松将氏 ((株)本田技研)

学会フェロー賞を受賞して

  この度,IIP2005情報・知能・精密機器部門講演会で講演致しました「長軸ゴムローラ・鋼ローラによる紙搬送特性解析の高精度化」に対して日本機械学会フェロー賞を頂くことができ,大変光栄に思っております.

  受賞した研究は私が大学院修士時代に取り組んだもので,プリンタなどに用いられている長軸ゴムローラ・鋼ローラからなる紙搬送機構を研究対象とし,2ローラ間の接触荷重の大小で変化する紙の搬送速度や,左右押付け力の偏りによって生じる紙のスキュー(傾き)角度を高精度に予測できる解析的手法の開発を目的としたものです.

  本研究で収めた成果の中で,最も意義深いと自分の中で捉えているのは,ゴムローラ,紙,鋼ローラの間の接触領域における紙の表面ひずみ特性を解明したことです.この紙の表面ひずみ特性は始めから問題視していた課題ではなく,ゴムローラ,鋼ローラの回転速度と紙の搬送速度を測定する実験で,ある興味深い現象に気付いたことをきっかけとして自分で新たに課題として設定したものです.これを解明するために様々な仮説を立て,あらゆる実験を行い,その結果ある一定の解を導き出すことができました. 自ら課題を発見し,試行錯誤しながらそれを解決するという一連の過程で私は研究の面白さというものを肌で感じることができたと思います.

  修士2年間の研究活動を通じて,私は既存の結果を鵜呑みにせず自分の頭でしっかり考え主体的に研究を進めることができたと自負しています.今回の受賞はその姿勢が評価された結果であると受け止めています.現在私は就職し,本研究とは全く関わりのない業務に携わっておりますが,学生時代に培ったこの研究姿勢を発揮して現職場でも早く活躍できるよう努めて参りたいと思います.

  最後になりましたが,本研究を進めるにあたりご指導頂きました東京工業大学山浦弘助教授,小野京右名誉教授,その他関係者の皆様に深く感謝いたします.



  日本機械学会フェロー賞 鳥飼建宏氏 (早稲田大(現・キヤノン))

学会フェロー賞を受賞して
  この度は,2005年3月にIIP部門において発表させていただいた「コロナ放電場を利用したマイクロ送風機構」に対し,日本機械学会フェロー賞という私には過分な賞をいただき大変驚いております.関係者の方々に深くお礼申し上げます.

  本研究の概要を紹介させていただきます.将来の電子チップはより小型で高機能になるにともなって,より高いパワー密度になることが予想され,その冷却装置もより小型かつ高機能であることが必要とされていますが、その中で,近年イオン風を利用した放電送風機構が広く研究されています.この放電送風機構は構造が非常に単純であり,可動部を有さずに空気流を発生させることができるため,振動がない,騒音が小さい,小型化が容易などの利点があります.本研究では,従来の方式とは異なる針対平板電極系放電場を利用した放電送風機構を提案いたしました.また,放電に伴いオゾンが発生することから,局所オゾン送風機構としての応用も期待されます.

  現在,私は大学時代にMEMS等の精密工学の分野に大変興味を持ったため,精密機器メーカーに就職いたしました.未だ研修中の身ですが,今後取り組む研究においてどのような困難にぶつかっても,今回の受賞を糧とし,研究者として精進していきたいと思います.

  最後になりましたが,本研究をまとめるにあたり,終始懇切丁寧にご指導していただいた早稲田大学川本広行教授,助手の梅津信二郎氏,そして共に研究してきた研究室の仲間に心より感謝とお礼を申し上げます.



  日本機械学会フェロー賞 周逸如氏 (名古屋大)

学会フェロー賞を受賞して

  この度,「分布圧覚と滑り覚の合成によるエッジ線呈示」について,2005年度日本機械学会IIP部門フェロー賞を受賞することになり,大変有難う御座います.今回の受賞は,指導教員である大岡昌博助教授の熱心な指導と研究室の皆さんの協力のお陰であり,とても感謝しています.この場をお借りしてお礼を申し上げます.

  受賞した研究は私が修士時代に取り込んだもので,ヒトの指先の触覚を研究対象とし,電磁リニアモータによるすべり力とPZTバイモルフアクチェータアレイによる分布圧力の組み合わせを分析し,触覚呈示のリアリティを向上することを目的としたものです.

  本研究では,従来のものより高品位な現実感を呈示できるダイナミック型触覚ディスプレイを開発し,さらに,滑り覚の有効性を明らかにするため,標準エッジと比較エッジを被験者に呈示して両者のエッジ方向が一致するように被験者に比較エッジの方向を調整させる実験手法を新しく考案しました.正三角形,正方形,円形のバーチャル・オブジェクトのエッジ・トレース実験を行い,その結果,圧覚と滑り覚同時呈示の方がエッジの追跡精度が最大61%向上しました.

  現在,私は博士後期に進学し,触覚のバーチャル・リアリティにおいて演出効果を高めること目的として,ヒトの触覚を調べています.微小テクスチャを獲得する仕組みや,せん断力を獲得する仕組みなどを明らかにするための実験を進め,これまでに色々な新事実を明かにしました.今回の受賞は,私にとって大きな自信となり,受賞の名に恥じないよう今後も精一杯で努力していきたいと思います.

  最後になりましたが,株式会社富士ゼロックス殿より本装置の主要部品である触覚マウス(本研究では滑り覚呈示装置と呼んでいる)を借用したことを付記し謝意を表します.また,本研究を行うに当たり,終始ご指導を賜りました冒頭の大岡先生はもとより,名古屋大学教授三矢保永先生,名古屋大学助教授福沢健二先生にも深く感謝いたします.

Last Modified at 2006/8/31