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講習会報告「医療福祉のニーズと現状そして将来について  〜計測制御技術の視点から〜」

(「医療福祉機器における計測制御研究分科会」運営)
  【主査】 東北大・田中真美  【副主査】 東京大・正宗 賢  【幹事】 前橋工科大・王 鋒

  2006年5月25日,26日の両日,日本機械学会会議室にて「医療福祉のニーズと現状そして将来について 〜計測制御技術の視点から〜」講習会を開催した.本講習会は,「医療福祉機器における計測制御研究分科会」の活動の一環として開催したものであり,医療や福祉の分野におけるニーズやこれらのニーズに対して「計測」「制御」技術で解決を目指す実例について解説しようというのが開催の主旨である.

  第1日はまず最初に,(株)日立メディコ技術研究所 高橋 哲彦 部長(兼)MRIグループ長より,画像診断機器の市場動向と技術動向を俯瞰した後,磁気共鳴イメージングMRIについて,最新の具体例を示しつつ医療画像診断機器のニーズと計測制御技術の関連の解説をいただいた.続いて,東京大学 正宗 賢 助教授より,低侵襲治療において医療ニーズをいち早く捉え,技術シーズの基礎研究から発展してきた研究開発の一例として,オープンMRIを用いた低侵襲手術支援システムの開発事例について紹介いただいた.3番目の講演では,東京工科大学 苗村 潔 助教授から,硬膜外麻酔針の先端形状,切れ味についての医師からの要望,位置決め精度を高めるための研究と,針の設計指針を得るための研究について紹介をいただいた.そして,棚橋よしかつ+泌尿器科 棚橋 善克 院長より,細径超音波内視鏡の開発を例として,医療側のニーズとそれを可能とした工学側のソリューションの概要について解説をいただいた.さらに,首都大学東京 守屋 正 教授より,コイル型ステータを用いた超小型超音波モータの原理,実験的検証結果および医学分野への応用例に関する紹介をいただいた.第1日目最後に,近畿大学 橋新 裕一 助教授より,医用レーザの歴史,現状そして将来に関して解説をいただいた.

  第2日は,最初の講演で広島大学 柴 建次 助教授より,国内外において人工心臓の開発の現状と,完全埋め込み型人工心臓へのエネルギー供給を目的とした経皮エネルギー伝送システム,経皮情報伝送システムの開発について紹介いただいた.続いて,弘前大学 佐川 貢一 助教授より,ヒトの歩行動作と投球時前腕の動作計測を例として,身体装着型の小型3次元計測システムの原理,測定例を紹介していただいた.そして東北大学 永富 良一 教授より,疫学研究や生活習慣病予防などの立場から,健康福祉分野における身体活動量評価の意義,現状とニーズを紹介していただいた.その後,佐賀大学 木口 量夫 教授より,人間動作補助用福祉ロボットの開発について,筋電信号より制御信号の抽出,ロボットのファジィ・ニューロ制御器の構成,パワーアシストロボットの検証実験などに関する解説をいただいた.さらに,前橋工科大学 王 鋒 助教授より,睡眠時無拘束無侵襲呼吸心拍計測用センサの開発について,センサの原理,信号処理などの解説をいただいた.最後に,皮膚性状測定用センサ,前立腺癌・肥大症触診センサ,点字読み取りセンサなどの開発研究を例として,触覚センサの医療福祉機器への応用について,東北大学 田中 真美 助教授より紹介をいただいた.

  以上に述べたように,二日間にわたって医療福祉現場のニーズと工学技術のソリューションについて,幅広く解説紹介をしていただいた.受講者は約20名程度であったが,活発な意見交換・情報交換がなされ,また若い大学院生の参加もあり,この研究分野の将来性が期待できる.

  貴重なご講演をいただきました講師各位,講習会開催にご協力いただきました関係各位に心より感謝いたします.


講演会の様子

Last Modified at 2006/8/31