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研究室紹介(東工大・機械運動システム研究室【山浦研究室】)
我々の研究室では機械の高速化・高精度化のために,運動する機械・機構・要素の新現象の解明および新原理・新解析法の提案を目的として,運動する機械におけるダイナミクス,コントロール,トライボロジに関する研究を行っています.
メンバー
今年3月小野京右名誉教授(現日立製作所)が退職されたため,山浦弘助教授,黄慶久助手を指導教員とし, 博士課程学生1名,修士課程学生10名,学部学生3名の総勢16名の新しい体制で様々な研究テーマに臨んでいます.
研究内容
@ 情報機器に関する研究(5名)
・ ヘッド位置決め機構の制振設計
・ コンタクトスライダの動特性解析
・ 紙送り機構の研究
A 人間・多リンクロボットの最適運動や制御(9名)
・ 鉄棒運動ロボットの最適運動の解析と制御
・ 2足歩行機構・6足歩行機構の研究
・ ラート体操機構の研究
我々の研究室で進めている研究内容は,上記のように主に2つに分けられます.機械の運動解析や制御方法について強い興味を持ち,情報機器だけでなく,2足歩行ロボットや鉄棒ロボットなどの研究も行っています.以下に情報機器分野について,現在進めている研究を紹介します.
<ヘッド位置決め機構の制振設計に関する研究>
ハードディスク装置(HDD)の高密度化のためには,記録を読み書きする部品であるヘッドをnmオーダで位置決めする必要があります.このためには,位置決め精度を低下させる外乱要素を取り除く必要があります.この研究では,外乱要素の低減方法について研究しています.特に外乱の中でも近年問題となっている,ディスクの回転から生じる風外乱により,ヘッドの位置決め機構が振動してしまい,位置決め制度を著しく低下させる現象について研究を進めています.
現在我々は,位置決め機構の一部品であるヘッドサスペンションの振動を低減させる研究を行っており,振動を低減させるための構造として,動吸振器を取り付けたヘッドサスペンション(DAS) を考案しました.DASの一例を図1に示しています.我々は,このDASについて有限要素法を使うことで設計と制振効果の検証を繰り返し行うと共に,よい解析結果が得られたヘッドサスペンションの設計については,実際に製作し動吸振器の有無による振動特性を実験的に比較検討しています.この研究結果から,DASの制振性能の有効性を明らかにしました.
図1 DAS設計案の一例
<コンタクトスライダの動特性解析に関する研究>
HDDでは,回転するディスク上をヘッドが浮上走行することで情報の読み書きを行っていますが,近年の高密度化に伴い浮上隙間が小さくなり浮上状態を維持することが困難になってきています.このため近い将来、ヘッドとディスクが常に接触しているような方式(コンタクトスライダ方式)へ移行していくことが予想できます.よってスライダとディスクが接触する時に作用する力を実験的に測定するなどして,コンタクトスライダ方式の実現のための研究をしています.
<紙送り機構に関する研究>
紙送り機構は,製紙機や印刷機などに広く用いられている機構です.しかしながら実際の製品においては,設計パラメータを試行錯誤的に組み合わせ高精度に紙送りを実現しており,解析的に紙送りの挙動を予測する手法は明らかになっておりません.このため,解析による挙動予測が求められています.我々は,紙の挙動を理論解析により求める手法を考え出し,解析手法の有効性を図2で示す実験装置を用いて実証しています.
図2 紙送り機構実験装置