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講習会報告「電子写真技術のシミュレーションに関する講習会」

(「電子写真技術の高度化のためのシミュレーションに関する研究分科会」運営)
  【主査】 早稲田大・川本広行  【幹事】 富士ゼロックス・中山信行

  2005年3月21日,22日の両日,IIP2005開催にあわせて「電子写真技術のシミュレーションに関する講習会」を開催した.本講習会は,「電子写真技術の高度化のためのシミュレーションに関する研究分科会」の活動の一環として開催したものである.カラープリンタに使われている電子写真技術の高性能化,低価格化には目覚しいものがある一方で,その開発は経験と試行錯誤によるところが多く,シミュレーションの活用は必ずしも十分ではない.そこで,開発に携われている技術者を対象に,電子写真固有の問題をシミュレーションによっていかに解決するかを,実用性を重視して分かりやすく解説しようというのが開催の主旨である.

  東京工業大学大岡山キャンパスの情報理工学研究科会議室(図1参照)にて開催し,画像技術関連企業および教育機関などから56名の参加をいただき盛況であった.


会場全景


主査の挨拶

  第1日最初に,主査の川本から,講習の導入として,電子写真技術の概要と,各サブプロセスに共通する物理を伝導現象(電子伝導,イオン伝導,半導体・気体の電気伝導,熱伝導)として捉えた理論の解説を行った.続いて, (株)リコー渡辺氏より,有限差分法を用いた放電場解析による帯電プロセス,さらに潜像形成プロセスに関し,電荷生成と輸送過程のシミュレーションの解説をいただいた.3番目の講演では,電子写真プロセスの主役となる電界の解析に関し,(株)リコー門永氏,キヤノン(株)仲野氏から,有限差分法,有限要素法による解析方法の解説,演習問題,プログラム例,事例の紹介をいただいた.磁界に関しては,リコープリンテイングシステムズ(株)栗林氏より,静磁場に対する支配方程式と,これらの境界要素法による解法の詳細が解説され,現像磁界解析への適用方法,計算例の解説をしていただいた.第1日目最後に,これら電磁界中のトナーなどの粉体挙動に関わるシミュレーションとして,富士ゼロックス(株)中山とキヤノン(株)仲野氏から個別要素法による計算手法と現像・転写プロセスの解析事例を紹介した.

  第2日は,最初の講演で富士ゼロックス(株)伊藤氏より,定着プロセスを想定した伝熱支配方程式,数値解法の解説と,スプレッドシートアプリケーションを利用した簡易なモデルによる解析方法を紹介いただいた.続いて,(株)リコー竹平氏からは,紙送りプロセスのシミュレーションに関して,有限要素法による変位場の解析方法,接触問題の扱い,動的解析方法の解説,ADF,用紙送り出し部,転写部,定着部など各部の用紙搬送解析事例を紹介していただいた.最後に,シミュレーションと不可分の関係にある計測・可視化技術に関して,現像剤の動的挙動計測・可視化技術と現像メカニズムに焦点を置いた解説をキヤノン(株)平林氏からいただいた.

  電子写真プロセスに関わるシミュレーション技術全体を体系的に解説する初めての講習会でもあり,電子写真各サブプロセスの主要な物理とその理論的背景,有限差分法,有限要素法,境界要素法,個別要素法,などの主要な数値解析手法を,網羅的に理解していただけたと考える.簡易な計算手法については,実際の業務で活用していただくことを期待している.

  貴重なご講演をいただきました講師各位,講習会開催にご協力いただきました関係各位に心より感謝いたします.

Last Modified at 2005/8/8